男の人は好きでもない女を心配しない
昨夜寝る前にふと鏡で自分の顔を見たら、
初めて頬がこけてきた気がした。
太ったほうがいいのかもしれないけれど、
わたしは体重が増えると、
お腹や腕や背中に肉がつく気がするので、
あまり増やしたくない。
年末年始に好きな人の工場で9連勤してる間に、
わたしの体重は46キロ台に落ち、
そのうち戻るだろうと思っていたけれど、
まだ46キロ台をキープしている。
昨夜だってとても気分が悪くて早く寝たいので、
粉末のスープだけ飲んでさっさと寝てしまった。
やっと寝れても、
今日も運送会社に昨日のキチガイが来る夢を見てしまった。
わたしは夢の中でもキャンセルしようかずっと悩んでいたし、
朝起きた瞬間からもう気分が悪い。
今日もセントジョーンズワートのお茶を飲もう。
わたしの恐怖はわたしにしか処理できない。
昨日の朝はよく喋っていたわたしが、
家に帰ってからずっと黙っていても、
母親は何も言わない。
わたしが震えながら話したところで、
「もうそんなとこ行かなくていいでしょ」
の一言で終わるだろう。
わたしがリピーターがほぼいないあの運送会社に、
気づけばもう10ヶ月も通っていて、
仕事も人の名前も覚えて楽しく働いていたことは、
簡単に無かったことになる。
だからわたしも何も言わない。
そして昨日わたしが新たに学んだことは、
こういうときに男の人は助けてくれないということだ。
男の人には男の人の怖さがわからない。
男の人に自分の身体を触られたり、
ぴったりと後をつけられたりする恐怖はわからない。
34年近く生きてきたけれど、
昨日わたしがどんなに恐怖を訴えても、
何もしてくれないどころか、
平然と笑っている男性達を見て、
わたしは初めてそれを理解した。
下手に騒げばわたしのほうが印象が悪くなりそうだ。
わたしは若くもなければ美人でもないのだから、
過度に騒ぐとかえってマイナスになるかもしれない。
だからわたしも平然としていなければいけない。
どんなに怖くても。
好きな人の工場でも、
わたしは恐怖のハイタッチ男が怖くてたまらない。
どうしてああいう気持ち悪い男に限って、
無駄に背が高かったりだらしなく太っていたりして大柄なんだろう。
(偏見)
普通の女性は自分より大きい男性が好きなのだろうけど、
わたしが過去に嫌だった男性達は大柄な人が多くて、
そのせいなのかわたしは大柄な男性に見下されるのがあまり得意じゃない。
わたしの好きな人はわたしよりも背が低いけれど、
初めて彼と話したとき、
目線が同じだからか妙に安心する感覚があった。
目線の高さが同じ男性を初めて見たような気がした。
自分よりも背が低くて手も小さくて声が高い男の人が好きなのは、
わたしは基本的に男性が苦手だからだと思っている。
もしあの工場で普通に好きな人と話せたら、
わたしは恐怖のハイタッチ男の話を好きな人にしたと思う。
あわよくば好きな人が行き帰りにわたしと一緒にあの階段を歩いてくれないかとか、
好きな人がわたしのことを心配してくれるのではないかと内心期待して。
わたしは気持ち悪いだけの男を、
自分の恋のために利用したに違いない。
あのキモ男にはそれしか活用法が見当たらないから。
好きな人の気持ちをこちらに向けるためなら、
使えるものは何でも使いたい。
でも昨日の運送会社の男性達の反応を見ていると、
男の人は嫁や彼女でもない女が、
キモ男にビビっていても、
心配するという発想がまるで無い。
好きな人の工場では、
一度わたしが恐怖のハイタッチ男が怖いと話すと、
女性タイミー達はたまに会う度に、
「最近は大丈夫?」
とよくわたしに声を掛けてくれるけれど、
男性にはそういう発想は無いらしい。
わたしには全く意味がわからないけれど、
日頃から怖い目に遭うこともなければ、
万が一のときも自分の力で抵抗できる男性には、
本当にわからないのかもしれない。
もしかしたら好きな人もそうなのかもしれない。
わたしの好きな人は、
他のおばちゃんタイミーに、
「1年もうちに通っているのに、
どうしてうちで働こうとはならないの?」
と聞くような人だ。
いつもいつも忙しそうな彼が、
珍しく雑談をしたかと思えばそんな話で、
常連タイミーにそんな純粋な疑問を抱くような、
良く言えば真面目、
悪く言えば想像力の欠片もない男の人に、
恐怖のハイタッチ男の話をしたら、
どんな反応が返ってくるのか、
わたしには全く予想できない。
きっとわたしの想像を軽く超えてくるに違いない。
下手したら彼は、
キモ男のことを普通に会社の人に言ってしまって、
タイミーのわたしがブロックされて終わるかもしれないし、
「じゃあ違うとこ探せば?」
などと残酷なことを平然と言うかもしれない。
だってわたしは彼に好かれていないのだから。
恋愛でキモ男を利用するには、
好きな人もある程度、
こちらに興味を持っている段階じゃないと、
かえって逆効果かもしれない。
わたしは好きな人に会いたいから、
恐怖のハイタッチ男に毎回声を掛けられても、
なんとか耐えてビビりながら通っているのに、
その好きな人に「他のとこ行けば?」なんて言われてしまったら、
わたしはまた泣きながら帰る羽目になるのだ。
怖い。怖すぎる。でもなぜかリアルだ。
昨日他の男の人達でこれがわかって良かったかもしれない。
やっぱりいきなり好きな人にいってはいけないのだ。
好きな人はオリンピックだから、
その前に練習試合をたくさんこなさないといけないと前に何かで読んだのは、
こういうことだったのかもしれない。
わたしはまだ試合にも出られないレベルだ。
これからまだまだ個人練習を重ねて、
そのうち試合に出れるようになって、
いつか勝てるようになれば、
わたしは好きな人と普通に話せるようになるだろうか。