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2021年11月1日月曜日 グリコのマカダミアナッツチョコはどこにもない

朝から春日の実家に寄る。
今、母親は入院中で春日の家は父が独り暮らしを謳歌している。
新聞や洗濯物が積み上げられ、床面の埃が目立つ。
母が所望していたタオル、卓上時計、孫の手などを回収して家を出る。

母が私に頼んだ品物、用事は他にもいくつかあり、その中に「グリコのマカダミアナッツチョコをふた箱」とあった。
昨夜から近所のスーパー、ディスカウントストアを探すが見つけられないでいる。
サニー、ダイレックス、ルミエール、ハローデイと回ったが見つからず、結局「グリコのマカダミアナッツチョコをふた箱」以外を紙袋に入れて病院の受付に手渡した。
なんとかウイルスのワクチン接種をしていない私は、病室で母に面会することができない。

帰り道、母から電話がある。
荷物ありがとうの他、近況等。
声は普段と変わらなく元気だ。
色々探したが、グリコのマカダミアナッツチョコはどこにもないという話をすると、「そうやろう」と何故か嬉しそう。

夕方はS氏と打ち合わせを一本済ませて、大名のスカッシュに初めて行き、作品やグッズを眺める。
そこで久しぶりに遭ったまっちゃきくんと話し込み、彼は「やることはあるけどやる気が起きなくて眺めている時間を過ごしている」というようなことを言う。
私は「やることはあるけどまだ手の付け方が分からず待ちの状態を眺めている」というようなことを言った気がする。
時間を表した彼の描く砂時計は、砂の代わりに花が詰められていて美しく切なかった。

S氏と近頃進めている全プロジェクトを整理するべく、日の暮れた西通りのスタバに入ってアーモンドミルクラテをすすっていると、盟友ウェイドが現れて驚く。
彼も別件の打ち合わせで、来訪の作法としてテイクアウトのコーヒーを持参するつもりとのこと。
まだつまびらかにできない文化事業を各々進めている旨、互いに確認し、ウェイド、S氏と別れて天神地下駐輪場に向かう。

そのまま帰ろうと思っていたが、思い立ってDUNEを見に博多駅に。
ドゥニ・ヴィルヌーヴが作ったアメコミSF映画だった。
たくさんのアメコミ映画キャストがティモシー・シャラメを囲んでわーわーやっており、終始骨に響くハンス・ジマー節を浴び続けて大変満足した。

紆余曲折ありまくった今作をよくもここまで作り上げたもので、紆余曲折ありまくったDC映画をうまく道筋つけた矢先に、こちらのSFにまで手を出してワーナーという会社はいったいどういうテンションの人たちがいるんだろうという思いに駆られる。
他にも色々な映画を作っているのだろうが。

思いに駆られながら、博多駅地下駐輪場に降りると私の自転車のすぐそばで若者がマウンテンバイクを蹴りまくっている。
見ると、そのマウンテンバイクのフロントディレーラーが曲がって、チェーンに食い込んでおり、乗れなくなっているようだった。
幸い私が持っている多少の工具で直りそうだったので、彼を地上に誘導して、ディレーラーの調整を試みることにした。
彼の手や顔は、機械油でよい具合に汚れている。

ちゃんと確認して作業を始めれば良かったのだが、私もDUNE後で気が変になっていたのか、生来の人見知りが発揮されていたのか、いじらなくていいワイヤー部分を触ってしまい、ディレーラーは直ったものの、ワイヤーが変に絡まってしまった。
多少疲れてはいるが概ね無表情の若者の向こうに、交番の灯りが見える。

交番に行って、ペンチのようなものを借りれないか尋ねてみると警官の一人が出てきて、自転車を前に私が状況を説明する。
警官は一応若者の自転車登録と身分証をあらためる。
至極嫌そうな顔を隠さない若者を見て、まずいことをしたかもと思ったが、その自転車が無事彼のものであることを確認できて、私も若者も何となくほっとした空気になった。

あとを警官にお任せして立ち去ろうとすると、警官は最高の笑顔で「ご苦労様でした」と送り出してくれ、若者もありがとうございましたと頭を下げてくれた。
帰り道、私は何でワイヤーいじっちゃったんだろうあれさえなければ今頃彼も帰宅できていたのにという後悔の念と、警官や若者の顔はじめ今日会った人たちの顔や話がぐるぐる頭を回って異様なテンションでこちらは無事な自転車を一生懸命こいだ。

自宅近くのマックスバリュに寄ってプロテイン飲料を買い、念のためチョコ売り場を見たが、グリコのマカダミアナッツチョコはここでも見つからなかった。

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