アーティストの言葉
増山士郎さんが、40を過ぎたらほとんど皆作家を辞めてしまっていると言った。
続けていくのは厳しいという意味であったが、41になってまだ作家を辞めていない私を肯定してくれたように感じた。
藤浩志さんのお宅の、海に面したベランダで、そのことを話した。
階下の砂浜では、コンテンポラリーダンスが行われていて、うねる波間にサーファーたちが浮かんでいる。
湾の遠景、雲間と山の端に夕日が落ちようとしていて、斜陽は海をオレンジと濃い青に染めていた。
世界の全てがここに見えるような景色だった。
増山さんは、私の古い友人である松崎君がずっと主催している「糸島芸農」のゲストアーティストとして、北アイルランドからいらしていた。
増山さんと松崎君はベルリンで知り合ったらしい。
松崎君とも久しぶりだったし、久しぶりに会う人がたくさんいて、とても嬉しい現場だった。
増山さんは両方の鼻の穴から鼻毛を出していて、右脛が血だらけでよたよた歩いていた。
ユーモアと美にあふれ、非常に整理されたトークとのギャップがすごくて、一緒にいて本当に楽しかった。
私は財布を忘れて糸島まで行ったが、皆さんがお金をカンパしてくれ、うどんまでご馳走になり、逆に儲けてしまった。