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Designing Interactive System

こんにちは。山口大学の坂口です。昨年富士通を退職し、9月から研究者として活動しています。今年からラボの活動をこちらで紹介していきます。
今日は私のバックグラウンドと関心についてお話しします。

建築+情報=?

私はこれまで建築、広告、UX、サービスなどのデザインを行ってきました。それぞれの分野の設計方法や工学を実践によって学びつつ、自分がやっているデザインが対象物(ハード)だけでなく、人との関係性や時間軸の変化といったソフト的な側面に特徴を持っていることを日々感じていました。2009年に発表されたDan Safferの著書で初めて「インタラクションデザイン」の存在を知ります。インタラクションデザインは様々な分野を横断するデザインで以下のような位置付けで紹介されています。建築や情報といった側面に加え、人間にまつわる領域を併せ持つデザイン対象、それがインタラクションデザインです。

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インタラクティブシステムとは

インタラクションデザインの設計方法として代表的なものに人間中心設計(ISO9241-210)が挙げられます。国際標準化が進んでいる設計方法で様々な分野で活用されています。これらの学術に基づき、私の研究ではより複雑な対象の設計方法の研究を行っています。特に関心を持っている「インタラクティブシステム」は以下のように定義されています。

Combination of hardware and/or software and/or services and/or people that users interact with in order to achieve specific goals.
(ISO25065:2019 Systems and software engineering)

ハードとソフトとサービスと人の組み合わせ、って一体何?って思うかもしれませんが、デジタル技術が発展した社会では対象範囲が大規模、かつ複雑化しています。そのため、様々な要素を統合して一体の「システム」として扱う必要があります。例えば、自動運転車はハードとしての車両と情報技術によるソフトウェアの組み合わせによって構成されています。それらは人との間に接点(インタフェース)があり、サービスとして提供されています。ソフトウェアと聞くとデジタル技術をイメージされるかもしれませんが、それだけに限りません。例えば、人が主役のワークショップや組織についても同様にこの定義に当てはめて考えることができます。ハードとしてのチーム、ソフトとしてのルールや文化、これらを人がサービスとしてどのように利用していくか、という形で示すことができるのです。
このような「組み合わされたもの」がインタラクティブシステムという概念として定義されたのです。しかしデザインの世界では古くからこの考え方に通ずるものがあります。以下はデザインの定義に対するイームズ夫妻のコメントです。

One could describe Design as a plan for arranging elements to accomplish a particular purpose.(Eames 1972)

ここでは「要素」として表現されていますが目的達成のために組み立てる計画がデザインとして定義されています。言い換えると、デザイナーは「目的-手段」の関係を組み合わせることで様々な問題を解決していると言えます。

アーキテクチャを構築する

ではインタラクティブシステムをどのように設計するのか?そこで鍵となるのが「アーキテクチャ」です。
アーキテクチャと聞くと「建築物」を創造する方が多いと思います。近年では情報や法など様々な分野で聞かれる言葉です。建築に例えて外部環境との関係、内部環境の関係として対象を構造として統合することの意味としてこの言葉が使われています。建築の場合は周辺環境に対して建築物が目的を満たしているか、建築物内部の空間が目的を満たしているか、これら統合の結果が建築物であると言えます。ハーバード・サイモンは人工物の環境はインタフェースによって規定されると論じています。周辺環境(外部)や内部空間(内部)の目的の結果としてシステムとしての建築物が構築されると考えることもできます。

デザイン教育の世界でも統合に関する取り組みを見ることができます。昨年100周年を迎えたバウハウスでは予備教育や工房教育を経て、最終的に建築(BAU)を最終目標とするプログラムを展開していました。

バウハウスはあらゆる芸術的創作活動を集めて、統一すること、そして諸々の創作芸術的領域ー彫刻、絵画、美術工芸と手工作ーを不可分の構成要素として新たな建築芸術へ向けて再統合することを目指す
(ヴァルター・グロピウス「バウハウス宣言」1919年)

初代校長のグロピウスは「全ての芸術の最終目標は建築である」として建築をプログラムの中心に位置付けていました。予備教育では平面構成や立体構成などの造形の基本を習得し、その後、工房教育にて金属、壁紙、陶芸、家具など対象物のデザインを習得します。そして最終目標として建築を学び、様々な対象を芸術として統合することを教授していました。バウハウスの歴史や伝統を伝える映画が昨年公開され、私も何度も映画館に足を運びました。

小型衛星システムの設計者であり、システムアーキテクチャの研究者でもある慶應義塾大学大学院の白坂成功教授はアーキテクチャを以下のように紹介しています。

目的を実行するための、システムと外界の関係及びシステムを構成する要素とその構成要素間の関係
複数の視点において、構成要素とそれらの関係性を明確化するとともに、各視点間の関係性を明確化すること

衛星のようにこれまで前例のない大規模で複雑な対象は全体像が見えないため他視点からモデル化を行い、視点間の関係性を調整することで徐々に全体像が見えてくると白坂は説明しています。建築設計ではボリューム模型やスケッチなどを使いながら部分と全体を徐々に可視化していきますが思考プロセスとして共通していることが多いことが特徴です。白坂教授のアーキテクチャ思考に関する記事は以下をご参考に。

インタラクティブシステムの未来

Society5.0やデジタルガバメントなどの社会システムは大規模かつ複雑です。また人間中心の社会の実現にはインタラクティブシステムのデザインがこれからより重要になるでしょうか。このような時代を見据えて建築の思考方法をモデルとしたアーキテクチャの構築方法をインタラクティブシステムに適用することが私の研究課題です。そして前例のない未来に対してはデザイナーの創造性が求められます。デザイナーが自己の経験や知識に基づきどのように倫理的に解釈し、自由意志を形成していくのか?ここにも私の関心があります。研究については様々な視点から別の機会に紹介していきたいと思います。長文にお付き合い頂き、ありがとうございます。
研究室のサイトも順次整備していきますので乞うご期待!

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