海外のデザイン研究で論じられていること
これから定期的に海外のデザイン研究論文を紹介していきます。日本と比べて海外の論文はプロセスや理論に焦点を当てた研究が数多く存在します。しかし、海外のデザイン研究で明らかにされている理論や方法論は日本の論文で引用されているものはごくわずかです。そこで海外の論文で明らかにされていることを紹介し、日本の文脈での展開を考えていきたいと思います。
論文とは
論文誌(Journal)に投稿された論文は他の研究者によって査読されます。査読者は論文に対する批評や議論を行います。採録(Accept)された論文は学会から公開される仕組みです。学会によって評価方法は多少異なりますが、論文は新規性、信頼性、妥当性などの観点で査読されるため、第三者から見て客観的に認められたものとなります。これらの基準を満たさなければ不採録(Reject)となります。書籍の場合は査読者による批評や議論がないため、著者の主張として論文とは区別しています。(学位論文などが書籍としてまとめられている場合もあります。)
日本のデザイン研究誌
海外の研究論文誌の前に日本のデザイン研究誌について紹介します。
デザイン学研究(日本デザイン学会)
日本のデザイン研究ではデザイン学会が発行する「デザイン学研究」が代表的な論文誌です。1956年の創刊でデザインの科学的研究や知的考察を行う目的に刊行されました。
芸術工学会誌(芸術工学会)
「芸術」と「工学」の融合領域として、1992年に芸術工学会が設立され、デザインの理論的、学術的研究が行われています。私自身、九州芸術工科大学の出身で芸術工学の学位を取得しています。
海外のデザイン研究誌
次に海外のデザイン研究誌について紹介します。デザイン研究も単純な人工物から複雑なシステムへと研究対象が日々変化しています。今後新しい研究誌を発見した場合は追記していきます。
Design Studies
1979年に創刊されたデザインプロセスの理解に焦点を当てた学術誌です。エンジニアリング、プロダクトデザイン、建築、都市、ソフトウェア、システムなどさまざまなデザイン活動を対象としています。そのため、認知科学や方法論から価値観や哲学までデザインに関する研究分野が関わっています。一部の論文がオープンアクセスに対応しており、無料で読めます。
Design Issues
1984年に創刊したデザインの歴史、理論、批評を扱う米国の学術誌です。特別号ではデザイン史、CHI、サービス、組織、開発、製品デザイン方法論などのテーマで刊行されています。一部オープンアクセスに対応し、MIT Pressが発行しています。
She Ji: The Journal of Design, Economics, and Innovation
学際的なデザイン研究の論文誌で複雑な社会技術環境における経済、イノベーション、デザインプロセス、デザイン思考に焦点を当てています。近年はシステムやソーシャルデザインに関する論文が発表されています。ほぼすべての論文がオープンアクセスなので無料で読めます。中国の同済大学が発行しています。
Design Science
人工物やシステムの創造や物理的、仮想的、心理的、経済的、社会的環境に組み込まれることに関する定量的、定性的研究を対象としている。2015年に創刊し、複数の分野にまたがる科学的根拠に基づくデザイン知識を集積を目的としています。Cambridge University Pressが発行しています。
The Design Journal
1998年に創刊し、デザイン実務、デザイン研究、デザイン理論、デザインマネジメント、デザイン教育などに関連する査読付き研究論文誌です。ヨーロッパデザインアカデミーの公式論文誌で、Taylor&Francisが発行しています。
Journal of Design Research
https://www.inderscience.com/jhome.php?jcode=jdr
社会科学とデザイン分野の統合的研究を通して、デザインの中心的な課題である人間的側面に焦点を当てた学術誌です。工学、建築、工業デザイン、企画など関連するデザイン分野の理論、モデル、実製品を扱っています。一部オープンアクセス対応し、Inderscience Publishersが発行しています。
International Journal of Design
工業デザイン、視覚伝達、インターフェース、アニメーション・ゲーム、建築、都市など、デザインのあらゆる分野の研究論文を掲載。すべての論文がオープンアクセスで閲覧可能。国際的なフォーラムとして文化的要因がデザインの理論や実践に与える影響に関心を持つ。台湾の国立台湾科技大学が発行しています。
Interaction Design & Architecture(s)
コミュニケーション、学習、仕事、エンターテインメント、ヘルスケアなどの分野において、最先端の研究・教育・技術開発・応用を目的とした研究論文誌です。インタラクションデザイナー、技術開発者、コンピュータ科学者、認知科学者、人類学者、建築家、教育者、研究者、実務者などが参加しています。すべての論文がオープンアクセスで閲覧可能です。
Design and Culture
広義のデザインを反映して2009年に創刊したデザインの理解を再定義する学術誌です。非物質的、概念的、戦略的なデザインを実践、研究、言説を問い直すためのプラットフォームとなることを想定しています。一部オープンアクセスに対応し、Taylor&Francisが発行しています。
Design Management Journal
https://onlinelibrary.wiley.com/journal/19487177
製品、コミュニケーション、環境におけるデザインの効果的な管理に焦点を当てた学術研究を掲載する査読付き研究誌です。2000年に創刊し、デザインマネジメント研究所(DMI)が発行しています。
海外のデザイン研究誌で語られていること
私の研究と関連した海外の研究論文を順次紹介していきます。
Circularity
Citizenship
Ethical Smart City
Framing
Human rights
Politics
Principle
Public Service
Social Innovation
Systemic Design
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?