若者の「日本人性」は、むしろブーストされている
読書メモ。
読み始めた本がとても興味深かったので、思ったことを書いてみる。
このnoteは流し読みでもしていただいて、もし興味が湧いたら本を手に取ってもらえたらいいと思う。すごく面白い本なので。
「先生、どうかみんなの前でほめないでください」という本。タイトルからしてそそられる。
いわゆる「若者研究」の本で、著者は大学の先生(教授)で「モチベーション研究」なるものを専門にしている方らしい。
日々の講義などで学生と接しながらのエピソードを添えながら、現代の若者について考察している。
サブタイトルは「いい子症候群の若者たち」
この本を読みながら、ぼくはなんだか妙な気持ちになってしまった。
上手く言えないけど、もしこの本に書かれていることが真実だとしたら、日本人はどんどん「日本人的」になっているんだと感じたからだと思う。
「日本人性」にブーストがかかっている
本に出てきたトピックを箇条書きにしてみる。(Amazonページから一部抜粋)
ほめられたくない、目立ちたくない、埋もれていたい
「浮いたらどうしよう」といつも考えている
成功した人も平等分配にしてほしい
自分の提案が採用されるのが怖い、自分で決められない
自分に自信がない
これを見てどう思っただろうか? ぼくはこれらを「日本人的な傾向」だと考える。
読んで妙な気持ちになった(ちょっと落ち込んだといってもいいくらい)のは、日本人の民族性みたいのが時代と共に変化していくのじゃなくて、むしろ強化されてると思ったからだ。
流れは全く変わっていないのかもしれない。
それまでぼくは、日本は(日本人は)だんだん変わってきていると思ってきた。
横並び志向、出る杭にならないことを優先する、ムラ社会的な人たち。そういった「日本人的」(とぼくが感じている)特性みたいのが、ネットが発達したグローバル社会(もはや死語かも)では消えていくものだと思っていた。少なくとも薄まってはいくと思っていた。
それは「自分の願望」でもあったと思う。
俺はそういう横並びには入りたくない、と思って生きてきたし、社会全体もそういう方向で進んでほしいと思っている。
でも、どうやらそんなことはなかったらしい。
この本を読む前から、なんとなく感じていたことでもある。ぼくにもたまにだけど「若者」と接する機会があって、なんとなく得体が知れないものを感じたことが何度かある。
その感覚の正体が、この本に書かれていることで一部説明ができる気がした。漠然とした予感みたいなのが、実体的に考えられるようになった。
日本人の根本は変わっていないんだな、と。
もちろん、本に書かれていることは著者の観測範囲から見たものだ。その傾向がすべての人に当てはまるわけではない。それでも、大学で毎日学生と接している人の視点だから説得力はあるし、自分の少ないサンプルの経験ともつじつまが合う。
ぼくには子どもがいるので、教育についても考えてしまう。
若い人たちが、むしろ昔よりも「日本人的」になっていく、というのは、
我々上の世代の傾向も影響しているのだと思う。
ぼくらが解放されようとしてもがいている姿を見ながら、子どもたちは「ぼくら本人には見えないもの」を鋭敏に感じているのだと思う。
逆らおうとしながら実は近よっている、ということを本能的に察知して、自分たちも無意識的にそちらへ向かうことになる。
傾向というのはそういうものだと思った。
ともあれ、面白い本です。
Audibleでも聴けます。