「切り替え」を最小限に抑える(あるいは、テキストで説明する練習)

いちばん手間がかかるのは「切り替え」である。

以前、仕事で取引があったメーカーの工場長が言っていたことだ。
なにげない会話のなかで出てきたんだけど、なぜか記憶に残っている。


聞いたときは「ふーん、そうなんですね」くらいにしか思わなかった。
でも、今になって、とても深いレベルで理解できるようになった気がする。

ふとしたことが、時間を経て突然「意味を持つ実体」になるときがある。

”切り替え”には多くの時間を要する

その工場長は「大勢の人間が働く工場のラインを効率的に稼働させる時の考え方」の話だったのだけど、切り替えにかかる時間を甘く見てはいけない、というのは多くの仕事にも当てはまることだと思う。

工場の概要。(言葉だけで説明するのは困難だけど、あえて図などは使わずに試みてみる)
その工場で生産している製品にはたくさんのバリエーションがある。
形、色、性能がそれぞれ3種類あって、それぞれの組み合わせが製品ラインナップとなる。

単純化するとこんな感じだ。

  • 形は3種類(大・中・小)

  • 色も3種類(赤・青・黒)

  • 性能も3通り(高・中・低)

全ての組み合わせで27種類(3×3×3)。

それら27種類の製品を、毎月決められた数量で生産する。
そのとき、どういった順番で生産するのが最も効率性が高くなるか。

それを考えるのが「あなたの仕事」だと仮定してみよう。
さあ、どんな順番で材料の手配や人員の割り振りをしますか? これはある種のゲーム性があると思う。シュミレーション・ゲーム的な。

まず、あなたがやるべきなのは「どの作業にいちばん時間を要するのか、削れるのはどの工程か」を見極めることだ。

  • 「形」の3種類は、「基本の入れもの」によって変わる。この切り替えは手間がかかる(入れもの自体は外注からの仕入れとする)

  • 「色」は自社の工場で塗装を行う。切り替えはスプレーガンの中身を入れ替えるくらい

  • 「性能」は入っている中身の機械を変える。こちらも切り替えは比較的容易

という設定があるとする。文章ではイメージが湧きにくいと思うけどこのまま進める。

つまり、27種類の生産順番を考えるのに、最も考慮すべきなのは「どの工程(入れ替え)に時間を要するか」ということになる。

なぜなら、それが分かれば削減すべき工程が見えてくるからだ。

たとえば上記の場合だと、
「形」を切り替える手間・・・大きい
「色」を切り替える手間・・・中くらい
「性能」を切り替る手間・・・少ない
となる。

ということは、「形」の切り替えを最小限にするのが先決だとわかる。

すると工程は自動的に以下となる。

最初に「大と赤」で性能を3種類(高・中・低)つくる。
次に、形は「大」のまま色を「青」に入れ替え、3種類の性能(高・中・低)を作る。同じように色を「黒」に入れ替えて3種類を作る。
「大」がすべて作り終わったら、形の工程を「中」に入れ替える。そして先ほどと同じ手順で赤で3種類(高・中・低)、青を3種類(高・中・低)、黒を3種類(高・中・低)
最後に「小」のバリエーション(3×3=9種類)を作る。

この順序が最も効率的な生産工程になる。(ジャンルごとの順番はなんでもいい。たとえば小→中→大でもいいし、中→大→小でもかまわない)

つまり、いちばん時間がかかる切り替え(この場合は「形」)を最小限にすることを考える。この場合は「形」の切り替えは3回となる。
2番目に時間がかかる「色」の切り替えは9回、最も所要時間が少ない「性能」の切り替えが27回おこなわれる。

わかりにくかったらすいません。
(あえて図を書かずにテキストで説明する、というがこの文章の隠れた目的なので)


※気づいたら構造の説明で紙幅を使い果たしてしまいました。

ほんとうは「切り替えを最小限にすることは他の仕事においても重要」というテーマで書こうと思っていたのだけど。

それを書くのは次の機会にするして、今回のnoteは「ややこしいことを言葉で説明する訓練」というテーマということで、終わる。

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