国民投票法「改悪」案、5月6日にも衆院採決か!? 国民投票法の次はナチスばりの緊急事態条項を含む自民党改憲へなだれ込むリスクが! 「不要不急」の改憲の目的はナチスばりの戦時独裁体制の樹立!~岩上安身によるインタビュー 第1040回 ゲスト 立憲民主党・小西洋之参議院議員 2021.4.30
国民投票法の「改悪」案が、5月6日にも衆議院で採決される見通しである。現在、国会は衆議院も参議院も改憲勢力が3分の2を超えているため、ひとたび国民投票法改正が可決されれば、一気に国会や国民を無視して日本を戦争のできる国にする改憲へとなだれ込んでいくリスクがある。大変危険な状況にあることを、大手メディアはどこも報じていない。
コロナ禍のどさくさに紛れ、ナチスばりの戦時独裁体制の樹立をめざして改憲へと突き進む菅内閣。岩上安身は、国民投票法の問題点を指摘し、CM規制を盛り込む必要性を訴えている立憲民主党・小西洋之参議院議員に、4月30日、第3弾となる連続インタビューを敢行した。問題の公共性を鑑みて、第1弾、第2弾に続き、フルオープンでお伝えした。
第3弾インタビューでは、国民投票法の次にやってくる自民党改憲案の最大の問題点である緊急事態条項についてお話しいただいた。
小西議員は「自民党は災害、戦争、コロナなどを理由にして緊急事態条項が必要だというが、実際にどういうときに必要なのかを言える人はいない」と断言し、以下のように続けた。
「千年に一度とも言われる東日本大震災の時に、緊急事態条項が必要だったか?必要なかった。発災の翌日には国会議員は立法体制に入っていた。南海トラフ大地震が予測されているが、災害対策基本法がある。民主党時代に災害対策基本法を改正し、病院の確保、死者の埋葬などの条項を整備した。国会を飛ばして内閣だけで立法しなきゃいけないという実態はなかった。
今の災害対策基本法には、緊急事態に対応する『緊急政令』がある。ガソリンの買い占めなどがおこって急騰する物価を、政府が統制することもできる。今の緊急政令の枠を広げる必要があるんだろうか、と。結論から言えばそれはいらない。今も政府与党にあらかじめ緊急政令を拡大する必要のある内容があるかと聞くと、誰も何も言えない」
さらに、小西議員は、「国会が開けない状況」とはどんな状況なのかと問うた。
小西議員「議員の3分の1がいれば、国会は開ける。国会が召集されれば立法は可能である。それすらできないような事態を想定しているのが緊急事態条項だが、それはどんなものですか、というと誰も言えない」
岩上「自民党改憲案の緊急事態条項は、1930年代の国家総動員法だと指摘する人もいる。戦時中は人の命を1銭5厘の赤紙で招集、人々に覚せい剤を打ちながら工場で働かせる、富裕層の財産を没収、戦時国債を大増刷、といったことをした。自民党改憲案の緊急事態条項は理不尽な戦争目的以外には不要なのものでしょう」
小西議員「自民党内では、戦争を想定した上で緊急事態が必要だという議論をしていた。しかし、歴史上国会を止めて、国民が幸せだったという民主主義国家はありますか。戦前の大政翼賛会すらない、選挙もない、今の改憲案は戦前よりもっと悪い」
岩上「中国を一党独裁というが、それよりも悪い。全人代すらないんです。しかも、無期の永久です」
小西議員「災害が、というけれども、自民党は本気で災害のことを考えていない。菅総理は首相公邸に住んでいない。先日福島で大きな地震があったが、菅総理は議員宿舎から出てくるのに30分もかかった。首相官邸の横に公邸があるんだから、指揮権のある総理をそこに住まわせて災害対策に当たらないといけない」
小西議員「二つ目の条文には、大規模な災害で国会議員がいない状況があげられている。衆議院の解散の時のために、参議院の『緊急集会』が用意されている。衆議院が選挙中の場合は、参議院は改選制なので常に議員はいるので、参議院だけで可決できる。
衆議院が任期満了中の場合は参議院が緊急集会が設定されていない。だから、改憲すべきという意見があるが、それは法律で対処できる。空白の期間が生じないように衆議院の選挙のやり方をかえればよい。参議院は既に、例えば投票は7月10日だが、任期の7月26日までは参議院議員でいられるような選挙法になっている。
衆議院もそうすればいいだけ。法律で解決できる問題です。自民党の皆さんにはそれぐらい勉強してほしいです」
岩上「(安倍前総理の顔写真を指さし)この人たちに勉強してくださいと言っても無理です。安倍前総理は4月20日に自民党憲法改正推進本部最高顧問に就任しています。自分が独裁者になるために」
小西議員「今の自民党議員の多くは、安倍前総理しか知らないので、それが当たり前だと思っている」
岩上「カルトのようなものですね。安倍さんは発言を振り返っても、自分は立法府の長だとか、神羅万象をつかさどるとか、妻の昭恵さんは国母だとか。独裁者気取り。菅総理はともかく、安倍前総理は改憲のためにまた出てくるんじゃないですか」
小西議員「安倍さんは、なんというか、我々のような普通の人ではまったくないんですね。宇宙人というか。普通でない人が普通ではない思い込みで動いている、日本国の憲法は汚らしいものだとか。
憲法で一番大事な条文は、憲法13条。すべての国民が個人として尊厳と幸福追求権を持っている、国はその尊厳と幸福追求権を守らないといけないという。だから、国は戦争のように個人の尊厳を踏みにじるようなことはできない。安倍前総理はそれすら知らないし、理解していない。そういう人が顧問とは恐ろしい。ぞっとします」
岩上「安倍さんが学生時代に読んできたのは『諸君』だとか『正論』。今は『Hanada』。戦後レジュームからの脱却を掲げながら、日米安保はそのままで、戦後レジュームから一歩も歩も出ていない。自国の主権回復どころか、自国の自衛隊を米軍に垂直統合し、指揮権も取られている。韓国のまったく逆。『わが民族の運命はわが民族が決める』というのは文大統領の言葉だが、日本にはそういう独立の気概がまったくない」
小西議員「2017年にトランプ大統領が北朝鮮に軍を派遣した時も、安倍さんは『100%米軍と共にある』と言っていた」
岩上「さらに、安倍さんは脱炭素社会実現には原子力発電が必要だとする自民党の議員連盟の顧問にも就任した。敵基地攻撃までやるんだという人が、原発をさらに新増設するという」
小西議員「米軍を守るために集団的自衛権を発動すれば、日本は相手から反撃、報復を受けますよね。政府は一貫して、答弁拒否を連発して、この点を認めなかった。昨年、初めて岸防衛大臣が認めた。安倍さんのやっていることが国民を守るためなのかというと、そこは疑問。
安倍前総理の時には、改憲を進めたい安倍さんの意向を受けて憲法審査会が開かれたが、菅総理にはそういう圧力がない。自民党の中で改憲を進めたい人たちのために、安倍さんを顧問に招いたのではないか」
立憲民主党は、国民投票法について修正案を提案している。これについて、小西議員は以下のように懸念を示した。
小西議員「28日、立憲民主党の中で議論があった。立憲民主党は修正案を出している。この修正案をまるごと飲むんだったら、国民投票法の改正に賛成してもいいと。立民案だと付帯部分に、CM規制等を3年以内にやると入れているが、3年以内に改憲発議をしてはいけないという条件はないので、改憲したいと思えばできちゃう。
自民党はもうずっと、憲法改正の議論を同時にやっていこうと言ってる。だから、3年以内に発議されるんじゃないかと不安。その可能性は高いと」
岩上「自国の軍隊に主権がない。そういう国が、戦争できる国になろうとしている。これは恐ろしいことです。コントロールは米軍がやる。米軍がやるといえばすっ飛んでいかないといけない」
次に、小西議員が国会質疑などを通じて明らかにした、2017年から18年にかけて北朝鮮との戦争が目前まで迫っていた実態についておうかがいした。
小西議員「安保法制が2015年に出た後、2017年から18年のことです。2017年3月、トランプ大統領の時に、核爆弾を搭載できる爆撃機やカールビンソンなどを派遣して、自衛隊と共同訓練しました。
意外かもしれませんが、実はそれまで、北朝鮮は日本を敵国視していなかった。在日米軍基地は攻撃対象だが、日本を攻撃対象にするといったことは1度もなかった。
それが2017年に変わった。きっかけになったのは、2017年の米軍と自衛隊の共同訓練。最強の空母カール・ビンソンがきて自衛隊と共同訓練したあと、北朝鮮が日本に警告を出した。
その後も米軍と自衛隊の共同訓練のたびに警告を発して、5月29日には『われわれの標的は変わるしかない』といって、日本そのものを攻撃対象にすると警告した。北朝鮮は、日米の共同訓練が安保法制の集団的自衛権行使の共同訓練だと看破し、攻撃対象に日本を加えた。
安保法制が本当に必要だったかというどころか、逆に日本を攻撃対象にしてしまうという亡国の法制だった。米国は、北朝鮮から見て地球の裏側にありますが、日本は目の前にあるんですよ」
岩上「日本列島は『ミサイル吸着ホイホイ』ですね。『なんだ、たかが訓練か』という人がいるかもしれないが、ほんとうに一触即発だった」
小西議員「北朝鮮のメッセージは防衛省が出してくれた資料なんですが、そこには北朝鮮のメッセージが激化していく理由が日米の共同訓練だということは一言も書かれていない。
共同訓練では、アメリカの戦略爆撃機を護衛するという訓練をやっている。航空自衛隊の司令部である航空総隊は横田基地の中にある。在日米軍の基地の敷地の中にある。だから航空自衛隊の動きはすべて米軍に管理されている。それが自衛隊の実態」
岩上「米軍の統治下にある」
小西「自国の軍の司令部が米軍基地の中にあるような国が他にもあるのかと、今、防衛省に調べさせているが、おそらく他にはないでしょう。
2017年当時は、北朝鮮と戦争する直前まで行っていた。当時の統合幕僚長だった河野克俊氏は、米軍が実際に北朝鮮を攻撃する可能性が6割あると思っていたと言っている。河野氏は集団的自衛権の行使をして米軍への攻撃に自衛隊が反撃する『存率危機事態』を想定していた。『平成29年後半は、米朝は一触即発』だったと河野氏は振り返っている。
安倍前総理のトランプ大統領に対する過剰な『忠誠』によって、日本国民が危機にさらされていた。安保法制によって、実際に日本国民に生命・身体等の安全を侵害する危険が発生していた」
2017年~18年当時だけではなく、現在も日本は集団的自衛権の行使によって米軍の戦争に巻き込まれていくリスクは変わっていない。
小西議員「安保法制が通った後、政府は米国を守れば相手国から報復を受けるということをずっと認めてこなかったんですが、昨年ようやくこの答弁を引き出しました。
『政府においては、将来において存立危機事態が生じ得ると認識しており、その際に我が国が集団的自衛権を行使すれば相手国より武力攻撃を受け、そのことによって国民の生命等に被害が生じ得、かつ、その被害は大規模なものとなる可能性もある』
これで本当に国民国家を守ることになっていますか? そこは国民の皆さんにも見抜いてほしいと思います。
日本は戦争に巻き込まれないようにしないと。9条があったからアメリカの戦争に巻き込まれないでくることができたんですが、今は集団的自衛権で自動的に参戦することになる。日本自身が、敵国視されるようなことはやってはいけないですよね。軍事的な緊張関係をエスカレートさせない外交が最重要。
中国に対して軍事的な覇権を争うのはやめるべきで、米国にとっても日本にとっても最大の貿易国ですから。
安倍政権には外交がない。軍事路線をひたすら走ってきた。菅政権も同じ。岸防衛大臣は先日、尖閣諸島が中国に『侵略』されているといった。『侵略』というのは軍事的な力で入ってくること。そんな事態は起こっていない。防衛大臣ともあろう人が迂闊なことをいうべきではない。
米国に対して日本は外交ができるはず。在日米軍基地があるからこそ。日米同盟はアメリカにとっても最重要の同盟で、それがなければ東シナ海、南シナ海、インド洋への軍事的な影響力を及ぼすことはできない。
在日米軍基地を守っているのは自衛隊なんですよ、日本の領土なので。在日米軍が自前でPAC3を持っているのは嘉手納だけ。あとは全部、自衛隊が守っている。その上なぜ、日本がアメリカのために集団的自衛権をやる必要があるのかと。
安倍・菅政権は、東シナ海から南シナ海からインド洋まで自衛隊が行って中国包囲網を作ると。これだけ貿易をして経済的な結びつきもあるのに、なおまだ軍事的な対立を高めるようなことをする。米国の戦争に巻き込まれるということに対する危機感が、今の日本の政権にも社会にもないのが恐ろしい。
今日、自衛隊は東シナ海で、中国を敵国と想定した米軍と共同訓練をしたと発表。米国を相手に戦争をして勝てると思っている日本人はいないでしょうが、中国はそれに匹敵する国力を持っている。戦争して勝てるものではない」
岩上「緊急事態条項を絶対やるべきではないです」
小西議員「今の内閣に国家緊急権が与えられれば、国民を無視して無謀な戦争に踏み込んでいくかもしれない。与党が数をもっているので、国会ではやられてしまうんです。
今できることは、国民投票法改正の衆議院の採決をせめて数週間遅らせること。参議院でも戦いますが、5月6日に衆議院を通ってしまうと、審査会が6回開かれてしまう。それはさすがに採決されてしまうので、せめて3回くらいにならないかと」
安倍・菅政権が目指す改憲とは、日本を戦争できる国にすることに他ならない。大手メディアがどこもそのリスクを報じないため、多くの国民が知らないままだ。
しかし、このままむざむざと自民党改憲案の入り口になる国民投票法の改正を進めさせてはいけない。IWJだけが孤独にこの危機を叫んでいる状態。まったくもって、「炭鉱のカナリア」的な状態である。しかし、この単独者としての叫びが、ジャーナリストの「使命」である。身に迫る危険を察知して大声を上げて、多くの人々に危険を知らせること。それが我々のようなジャーナリストの、本来のやるべき職務なのである。
岩上安身による小西議員のインタビューはフルオープンで中継、さらに、第1弾から第3弾まで、運命の5月6日まで、録画もフルオープンにする。ぜひ、SNSなどで共有して、この危険を多くの方に伝える力となってください。
国民投票法の改正案の7つの改正ポイントのうち、2つは改悪であることを指摘した第1弾インタビュー、CM規制を欠いたまま改憲キャンペーンが始まるリスクを指摘した第2弾インタビューもあわせて御覧ください。
■ハイライト(全編動画2時間30分ほどは有料となります)
日時 2021年4月30日(金)19:00~21:00
場所 IWJ事務所(東京都港区)
※この記事はIWJウェブサイトにも掲載(https://iwj.co.jp/wj/open/archives/491635)しています。
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