【VR/AR】 AppleがWWDC20で見せた帝王の布石 |今日の「ヤバい!VR」#16
今日のトピックは「Appleの開発者向け会議、WWDC20」です。
こんばんは。
ARの会社を設立した大学院生(@iwhododo)です。
VRは注目の高い領域だけに、日々大量のニュースを目にします。
そこで毎日1つだけVRに関連したトピックを取り上げてお届けしています。
※ちなみに選定基準は100%の独断と偏見に基づきます。
この記事のまとめ
Appleが年次の開発者向け会議「WWDC」を開催
「WWDC20」は初のオンライン配信
App Clips,空間オーディオ,AR Kit 4はARの布石か
「WWDC 2020」は初のオンライン開催
Appleは毎年開発者向けに「WWDC」を開いていますが,今年は同社初のオンライン開催が実現しました.その「WWDC20」では事前に録画した2時間弱の動画を基調講演(key note)として公開しています.
ARに関する発表はゼロ?
目玉はかねてより予想されていたApple独自CPU「Apple Silicon」と,5つのOSに関する発表でしょう.
新機能について詳細をまとめている情報サイトやTweetはたくさんあるので「#WWDC20」などで検索してぜひチェックしてみてください.
ここではVRに関するだけに注目してまとめています.
とはいえARKit 3を用いて『Minecraft Earth』のデモンストレーションなどが行われた昨年のWWDCと違い,ARに対する直接の言及がなかったようにも見えるWWDC20.実際にはAR時代のための布石が散りばめられています.
今回は「App clips」,「空間オーディオ」,「ARKit 4」を取り上げます.
App Clips
App Clipsはアプリの一部機能が使える機能.
メッセージだけでなく,QRコードやNFCタグからも起動できます.
画像出典:WWDC 2020 Special Event Keynote — Apple via YouTube
これによってwebARなどの例外を除いて従来のARアプリで大きなネックになっていたアプリのダウンロードや登録の煩わしさを解消することが期待されます.
画像出典:WWDC 2020 Special Event Keynote — Apple via YouTube
専用の「App Clipsコード」も開発されました.画像とNFCタグの両機能を持っています.
Air Pods Proの空間オーディオ
Air Pods Proにも2つの魅力的なアップデートが発表されました.
1つはシームレスな接続先の切り替えです.
これまで手動で切り替えていたBluetoothの接続を自動化してくれます.
画像出典:WWDC 2020 Special Event Keynote — Apple via YouTube
複数のデバイスを同時に使うAppleユーザーは多いはずなので嬉しい機能.
煩わしさからの解放はきっとARでも大きく役立ちます.
さらにAir Pods Proは空間オーディオの機能を発表しました.
左右のイヤホンから仮想的に立体音響を表現する技術です.
画像出典:WWDC 2020 Special Event Keynote — Apple via YouTube
仮想的な立体音響自体は決して珍しい技術ではありません.
ゲームや音楽のデバイスでは一般的といっても差し支えないほどです.
しかしながら特筆すべきはAir Pods Proの立体音響はセンシング技術を用いたダイナミックヘッドトラッキング.
iPhoneなどのデバイスとイヤホンの位置からリアルタイムで正面を割り出して固定のサラウンドスピーカーを仮設し,頭の向きを変えても体の向きに合わせた正しい位置から音が飛んでくる設計になっています.
視覚のAR以上に注目を集めている音のAR表現.
これらを組み合わせた五感の相互作用によって(クロスモーダル効果),バーチャル空間やデジタルな表現が一層リアルに感じられるはずです.
ARKit 4
基調講演では取り上げられなかったものの,ARKitもアップデートしています.今回加わった機能は大きく次の3つです.
① Depth API
② フェイストラッキングのサポート拡大
③ Location anchors
Depth API
iPad Proに搭載されているLiDAR Scannerを活用した深度情報を利用することができるようになりました.ARKit 3.5で追加された椅子や机を区別するシーンジオメトリAPIによって生成された3Dメッシュデータと組み合わせることで,ARのオブジェクトを瞬時に配置したり,現実の風景に溶け込ませることが可能になった模様です.
LiDARスキャナについては別途こちらにまとめています.
フェイストラッキングのサポート拡大
フェイストラッキング機能に対応するデバイスが増え,インカメを使ったAR体験できるユーザーが増えました.さらにTrueDepthカメラを使って一度に最大3人の顔がトラッキング可能.
MemojiやSnapchatでの楽しみ方が広がります.WWDCでは個性を表現できる顔文字・Memojiについてもコンテンツの拡充が発表されました.
画像出典:WWDC 2020 Special Event Keynote — Apple via YouTube
Location anchors
ARクラウドを標榜する際に欠かせないのが位置ベースのAR体験です.
有名なランドマークのような特定の場所にAR体験を配置可能
これによって観光情報を付与したり,SnapchatのLandmarkersで楽しめるようなエフェクトも広がったりしそうです.
Googleはゲームエンジン・Unityで使えるGoogle MapsのSDKを配布しており,『Pokémon GO』や『ドラゴンクエストウォーク』に代表される現実世界を舞台にしたゲームをクリエイターが作りやすい環境を整備しています.
特にWWDCは開発者向けに開かれていることもあり,Appleもアプリケーションへの展開には熱が入っているに違いありません.
既に開発者向けのサンプルアプリも公開されています.
特定の緯度、経度、高度の座標にAR作品を固定することが可能
GPSだけの場合と比較すると,カメラ越しの映像を用いてユーザーの位置を推定するため,より自然でリッチな体験が期待されます.
まだ対応範囲やデバイスに制限はあるものの,デジタルツインやAR時代を見据えた最も明確な動きといえるかもしれません.
Apple Glassに関する情報はなし
iPadOSにおいてPencilで手書きした文字をテキスト化する機能や,ダンスを検知したり手洗いを促したりするWatchOSの進化も広義にはARといえるかもしれません.個人的には特にApple WatchがSuica以上の機能を使いこなせていないだけに,機械学習の発展とともに機能拡充が期待されます.
さて上記のように細かく見るとまだまだARの話は続きそうですが,私見では,既に噂されているARグラス・Apple Glassを見据えたときに今回紹介した3つが特に大きな布石になると予測しています.
なお,Apple Glassについて,今回のWWDCでは言及されませんでした.
その存在が単なる噂なのか,本当なのかは依然不明のままです.
来年のWWDC21ではApple Glassが発表されるかもしれません.
音のARについて触れた通り,ARは視覚だけのものではありません.
複合的な感覚体験です.
その観点から見ても,Apple WatchやAir Pods Proによって腕や耳をおさえ,さらにはマーカーを店舗や現実空間も手中に収め始めています.
触覚や聴覚からもユーザーに訴えてくるAppleのAR体験は他の追随を許しません.今後のさらなる発表に期待が高まります.
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