8.予言
深夜2時くらいになると、
必ずと言ってイルミナティカードの話をする奴がいる。
彼が言うには、この世に起こる大事件は、全てイルミナティカードによって、予言されているらしい。
そいつにも何度も言ったけど、
(彼はこの話が大好きだから絶対にやめないけど)
俺は予言だとか、陰謀論だとか、都市伝説みたいな話があまり好きじゃない。
自分にあまり関係のない話だと思うから。
たとえ誰かが裏で糸を引いている、操られている、それが何だって言うんだ。
俺は基本的に操り人形だ。
資本主義の、クーポンの、コーヒーとコカコーラの、男性性の、ハッピーエンド至上主義の、夕暮れの操り人形。
ヴォネガットの『タイタンの妖女』が好きだ。
実にくだらない目的で、全てが仕組まれていたと知って、
ものすごくうんざりして、ものすごくスッキリする。
バンドを組んだことも、東京にいることも、朝なかなか起きれないことも、掃除や洗濯を先延ばしにしてしまうことも、観たい映画に限って借りられてることも、全てが遠いところにいる誰かによって予め決められているとして。
そう伝えられた俺は、「そうか!オッケー!」と叫んで、また朝飯を食べ始める。
コーヒーを飲み、身支度を整え、
大好きなやつに会いにいく。
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