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刑務所メガネ

刑務所メガネと表題を打ってみた。

刑務所のメガネ事情について分かる範囲でまとめておこうと思ったのだ。


私は、近眼でメガネユーザーだが、眼鏡は留置場で自殺未遂したときに破壊して以来、しばらく眼鏡を持たなかった。
金属のツルを首に突き立て、割れたレンズで手首を切って眼鏡を駄目にしていたが、刑事手続公判で替え眼鏡にかまってられない日々だった。

遠くが見えなかったが、拘置所の狭い独房では不便がなかった。
たまに、部屋の隅にホコリが溜まっているのが刑務官に注意を受ける程度で、目が悪いことを伝えたらお咎めはなかった。

裁判出廷のときなどは、傍聴人たちの顔がぼやけ、顔を見ずに済んで良かったと思ってる。

刑が確定し、刑務所に入ってからは、時計が見えないのはもちろんのこと、黒板に記された明日の洗濯物などの予定表まで見えなくて困った。


メガネの購入について

眼鏡は、購入希望を出したものが5名ほど集まると、刑務所付近の指定業者が来てくださる。
オートレフラクトメーターでおおよその屈曲率を測定し、3メーター先の指標の見え方をチェックしてレンズの度数を決めた。

自分が測定するようになって振り返ると、最低限の測定もしていない雑な眼鏡屋だった。
その眼鏡屋は、
「(受刑者を相手にして)今月は十分な売り上げになった」
と得意げに刑務官に話していた。
眼鏡は、本屋と同様に、指定業者が決まっている。
量販店のように安くてほど良いものは手に入らない。
手に入るものは、高くて悪い。

眼鏡の購入は最低価格18000円(フレーム最低価格5000円、レンズ2枚で13000円)はした。
最低価格のフレームはどれも古めかしく、まともな物を選ぶと単価は4万円を超えた。
ある受刑者は遠近両用で社会一般で売っているようなフレームを選び、支払いが10万円を超えた。

受刑者は、毎月使えるお金が2000円ぐらいなので、これまで貯蓄した作業報奨金の特別使用許可願いを出してその許可を認められる必要がある。

または、年金や貯金から所内へ持ってきている「領置金」があればそれで購入できる。


プラスチックメガネ用の鼻パットを盛るシールは購入できなかった。
ただ、指定メガネ業者に(高い)お金を出して、メガネパッド付きに修理してもらうことはできた。

差し入れてくれる人がいる者は、眼科やメガネ屋さんのでレンズ情報を見てもらって、その数値を持って親族に発注するのが安く上がる。
かくゆう自分も、指定業者が喜ぶような高い眼鏡を買う気になれず、その眼鏡屋に度数だけ測ってもらい、それを手紙に書いて友人づてに発注した。

届いたのは緑のセルフレームのメガネ。2万円せずに作れた。

食堂のテレビの字幕を読めるほどには見えなかったが、
工場からの帰りに明日の洗濯物が書いてある黒板を横切るのだが、皆と同じ歩くスピードで見れたので、それだけでも生活が楽になった。

運動時間はその眼鏡をかけたままだと、走りづらい。
私は眼鏡をベンチに置いて走った。

走り終わった頃には眼鏡が潰されて変形していた。
誰か眼鏡の上に座ったかもしれず、故意か過失かわからないし、誰が壊したかも不明。

樹脂製のフレームなので金属のように手で曲げて補正もできない。

自分の管理甘さからの泣き寝入りだった。


私がいた刑務所では眼鏡の所持点数は、2点までだった。

それが、新行刑法開始のときには、私物の自己管理化が推進され、

2個以上の数の眼鏡を持つことができた。

使うもの以外は、室内の半透明の衣装ケースで作られた私物箱に入れておけば良く、実際いくつでも持てた。
つまり、私物箱の中には何個所持してもよく、箱の外には2個まで出しておけるというルールだった。

眼鏡のフレームの種類は、金属、セルフレーム、フレームなしのものなら、変わったデザインのものでない限り制限が無い。

私が川越少年刑務所にいたときには、ドルチェ&ガッバーナのロゴ(直径1センチほど)がつるに入っているものはそれを外して許可された。

規則では透過率80%未満が禁止だが、職員が目視するしかないので一旦許可されたメガネは使い続けることができた。

青みがかったレンズのメガネの人がいたし、戸外運動で紫外線に反応してサングラスになるレンズの人もいた。


ご年配の多い刑務所だったので、親族に頼んで百均のメガネを大量に仕入れては他の仲の良い年配の受刑者に配った。
もらった受刑者達はこれまで使っていたボロボロのメガネと交換し、その壊れたフレームは私がじぶんのものとして廃棄の届け出をした。

長期服役の人たちが多く、使っているメガネは3万円以上する眼鏡屋の測定のものだったが、百均のもののほうが綺麗で気に入られた。

2022年11月6日追記
メガネケースとメガネ拭きについても記す。
メガネケースは無地でプラスチック製のものが差し入れ許可される。
(メガネケースの裏張りにメモ帳を仕込む人もいた)

メガネ拭きも、無地のもので、柄や会社名がついているものは禁止。
でも、サイズ指定はなく、一辺30センチのものが許可された。
どちらも、自分の称呼番号が書かれる。


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