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からあげマニア

から揚げが昔から大好きだった。一体いつからだろう。
「からあげマニアのカラッと日記」を更新し始めたのは。

あげる記事がない、と思うと
ネットで有名な唐揚げ屋さんに行っては、そのレビューを書いて、ブログを更新していた。

とりわけ今日はなぜか、
あげる記事がないと思ったのは同じだったが、ふと我に返っていた。


憎たらしい過去だ。
昔はもっとアグレッシブだった。
やりたいことはとことんやる。

空回りしようがお構いなしで、
毎日料理の勉強。

唐揚げ屋さんをやりたかったんだ、昔は。今じゃその唐揚げは俺の腹にたんまり溜まり、30過ぎて、チビのデブのハゲときたよ。
挑戦することが怖くなって、誰かの挑戦を応援できなくなった。


揚げ足とりをするようなひねくれた性格は持ち合わせていなかったのが、幸運だ。夢を諦めた俺が、それでも夢を叶えた唐揚げ屋に通うってのは、俺もまだおおらかな証拠だ。


カリカリしたってしょうがねえ。
それでも結局、挑戦ってのはどっかで失敗が来る。
俺も昔は毎日、唐揚げを揚げたり、お店を出してる人間に取材して、どうやったら店が出せるか聞いて回ったものでさ。

辛い真理でこれぁ、毎日って続かねえもんなんだよなあ。
三日坊主になったり、十日坊主になったり、二年坊主になったり。
ようけ坊さんを生み出したもんだ。これ以上、坊さんを生むのが怖くて、俺は挑戦できなくなった。


油売ってないで、記事書くかあ。
今日は、隣町の唐揚げ屋台の大将の取材記事だ。


「唐揚げ屋の未来を語る」
大将は言った。
「食文化も時代も同じ。常に新しいものが生まれ、古いものは変わりゆく。
だからこそ、常に動かなきゃいけねえんだ。
過去を振り返ること、改善することは大事だが、それだけだ。

”過去の役割”とは、改善するためだけにある。
俺らの想像力を、ネガティブにするためにあるんじゃねえ。


過去100回できなかったことは、
諦める理由じゃねえ。ネガティブなイメージはそうさせる。

けど、過去の役割はそこじゃねえ。
101回目に挑戦する理由なんだ。

さっさと未来の旗を、揚げにいかねえとよ」


書きあげた文章を読む。そうだよな。
何度同じ失敗をしたって、次やらない理由にはならないよなあ。
諦める口実にできるだけで、理由じゃない。過去を気にするな。今から変われ。


俺はキッチンに向かい、また唐揚げを揚げ始めた。


______おしまい


かい(改@3分物語)


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