
画面を閉じろ。
上にスワイプするたびに、感動もしないコンテンツが次から次へ、やってくる。
画面を閉じたいのに、こいつが時間と脳を蝕んでいく。
なんだか気分が悪い。何時間見てるだろうか。
1.-ケンカ-
「スマホばかり見ないでよ」
カオリとケンカしたばかりだった。
でも、俺は悪くない。
お前がスマホばかり見てたのが先だ。
俺は、お前がスマホを見始めるまではスマホを見ないって決めてる。
カオリは退屈そうにすると、すぐスマホだ。
家では俺なんか構わず、音量だって気にせず動画を見始める。
なあなあになるのもイイトコだ。
ただ、よりによって、寝る前にケンカしてしまった。
暗い部屋、ベッドの上で青白い光が二つ。
背中越しに、カオリの背中の熱を感じる。
なんだろうなこの悲壮感。
カオリもスマホを見てる。
2.-くだらない-
何度スワイプしたって、面白くない。
大体、こんな短いコンテンツが流行り出したのが気に入らない。
画面の中で体験した気になって、何がいい。
話したり、笑い合ったり、語り合ったり。
そういう心のつながりを感じ合うのが、人間の楽しみってもんじゃないのかよ。
いや待てよ。
そうだ。
一緒に話したり。
一緒に笑い合ったり。
一緒に語り合ったり。
してた…っけな…。
カオリがスマホばかり見るようになったのは、俺らの会話が減ってきた頃からだ。
一緒にいるのに楽しいと思えない。
一緒にいるのに、心がつながってる気がしない。
そんな感覚が二人の心に広がっていて、
気づけば、くだらない画面の光に吸い込まれていた。
心のつながりを作れていなかったのは、俺の方だ…。
俺はすかさず、自分の画面を閉じた。
今、カオリを楽しませてるのは、誰だ?
暗い部屋、青白い二つの光は消え、
二人は向かい合った。
____おしまい
改(かい@3分で読める美味しい物語)