男たるもの
2021/10/04
「男たるもの、強くなければならない」昔はもっとこの考えが強かったのだろうし、当たり前だったのだろう。でも、今は時代に合わない考えとして見られている。そんな今の時代でも、未だに根強くうっすらと存在し続けている。
「くれなずめ」という映画を見た。ただの男6人の友情物語、青春の延長線の映画かと思ったら、そうではなかった。主人公が既に死んでいて、全員がそれに気づいているのにあえてそこに触れない。死を受け入れることができない仲間達がずっと6人で馬鹿をする。そんな重いテーマなのに、重たい雰囲気がほとんどない、コメディ映画だ。
冒頭でも言ったが、「男たるもの」みたいな考えは未だに存在している。それを押し付けている人間は減ったにしろ、その考えが根付いているのはぼくたちの心の中。強くなければいけない、泣いてはいけない、みっともない姿を見せてはいけない。そんな誰が決めたのか分からないような考えに縛られて生きている。性差に関して苦言を呈するのは女性が多い。その理由には、女性が不平等な扱いを受けている、と感じる機会が多いということもあるだろう。でも、同じように男だって、「男なんだから」の一言で蔑ろにされてきたこともたくさんあるはずだ。それに対して文句を言えないのって、きっと根底にあるこういう意識のせいなんじゃないか。
この映画に出てくる男は、みんな弱くてダサくて臆病者だ。何年も前に死んだ主人公のことをずっと忘れられないでいる。スクールカーストが高い人間が輪の中に乱入してきたら、何も言えずに逃げてしまう。先輩にダメ出しをされたら、否定することもなく謝ってしまう。それでいいと心から思っている人なんか一人もいない。なのに、何にも効いていないフリをして笑うのだ。「男たるもの、かっこよくあれ」みたいな言葉の呪縛は、なんと強いことか、と思う。
「引きずることから逃げんなよ」なんて言葉があった。引きずるということは、とても女々しくて、かっこよくない行動、と思われている。でもぼくは、「まあいいや、しょうがねえ」なんて笑い飛ばすことで解決することよりも、ちゃんと引きずれる方が立派だと思う。当人からしてみれば、男らしくない行動かもしれない。それでも、何かがあった時に強がらずに「悲しい」と言えること。他人の目を気にしてカッコつけるよりも、その方がかっこいいと思うのだ。当事者だったらこんなこと考えないんだろうな。だからこそ、こういう映画を見たタイミングで客観的に見るというのは、楽しい学びだ。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?