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#乾杯しようのあとがき と 酒税法の改正「ビールが安くなる⁉」について
■ 前回のあとがき
前回は、恥ずかしげもなくお題企画に投稿してみました。
この話を書きたいと思ったきっかけは、実はお題企画のお誘いよりも前。CM曲、あいみょんさんのハルノヒでした。
この曲は映画クレヨンしんちゃんの主題歌でもあり、映画自体は観ていないのですが、家族愛、夫婦愛がテーマの楽曲。野原家とは子どもが同世代なので、この動画をみるとホロッときます(なんとなく、うちの妻はみさえさんぽいとこもあり…)。とても好きな曲です。
ラジオでも街中でも、ハルノヒが流れると思わず口ずさむ。そんな中、最近はテレビからもよく流れるようになりました。それがグリーンラベルのCM。
グリーンラベルがここまでエモくなるとは・・。「イインダヨ、グリーンダヨ~」のドリフCMとの違いに驚きつつ、癒されました。
今を良く思いながらも、昔の騒々しくてばかばかしい絵もまた色褪せない点は一致した。心のどこかで、志村けんさんを待つわたしがいる。(前回の投稿より)
ここが投稿の出発点です。
乾杯しよう企画が始まり、迷わず学生時代を書こうと思いきや、…「 #また乾杯しよう 」の投稿は素晴らしいものばかり。場違いだよなと何度も踏みとどまりました。最終的には1人で乾杯した勢いで参加しました。
本文にもあるように、浅くて軽い、どこにでもある話です。ただ私にとっては宝物な話。普段使わない脳を刺激して、挿絵という悪あがきは3割盛る気持ちで挑みました 笑。
コメントまで頂き、綴り、描き、振り返って本当に良かった。ますます「しばし先の乾杯」が楽しみになりました。
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さて、そのエッセイの中の主役、麒麟淡麗グリーンラベル。挿絵でも登場しました。
よく見ると、現行のパッケージとやや異なります。特に「淡麗」の主張が違いますね。
現行のパッケージ↓
実は、私が描いたのは2005年パッケージでした。ちょっと古い記事ですが、以下の記事を参考にしています。
どうせ描くなら、一番馴染みのある2005パッケージがいい!という事で、探していたら、この記事に辿り着きました。2002年から発売なので、生誕18年になるそうです。長く愛され始めている、というあたりでしょうか。
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このグルーンラベルなどの発泡酒、そしてビール系飲料全般は、今後、税制の面で注目されています。
前回のあとがき、制作秘話はここまでにし、ここからは税務の話を投稿したいと思います。「な〜に浮かれてんだ」という声が聞こえてきそうなので、学生時代を懐かしむ気持ちはここで切り替えて。
本投稿のポイントは上記表です。
6年後、ビール、発泡酒、そして第3のビールも「同じ税率」になるというお話。
- 税務モードにスイッチ -
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■ 酒税法の改正(ビール関連)
報道でも取り上げられていますが、平成29年の税制改正で酒税法が大きく変わり、その施行が段階的に行われています。そのうち、ビール系飲料は大きく2つの改正があります。
1 定義の見直し
まず酒税法上の定義です。現在、ビール系といえばビール・発泡酒・その他(第三のビールや新ジャンルと言われるもの)に分かれます。この定義によって何が変わるかというと、基本的に税率です。
現行、ビールと発泡酒(そのうち麦芽比率の少ないもの)では酒税のみでも350ml缶あたり約30円違います。ビールと第3のビールであれば50円近く。
それが、2段階で、以下のように変わります。
財務省:「平成29年度税制改正」(平成29年4月発行)P12より
⑴ 第一段階:平成30年4月~(ビール定義の拡大)
ビールの定義の拡大は、既に始まっています。キリンHPに分かりやすい紹介があったため、引用します。
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⑵ 第二段階:令和5年10月~(第3のビール廃止)
続いて令和5年には、金麦や本麒麟、ザ・リッチなどの第3のビールといわれる新ジャンルが、発泡酒に位置付けられることになります。
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定義変更だけ切り取ると、税負担の多いビールが拡張し、最も税率が低かった第3のビールが廃止ということで、単純な増税策のように見えますが、改正は定義だけではありません。
最も気になる税率も改正になり、こちらがむしろインパクトが大きい改正かと思います。
ということで、続いては定義変更を踏まえたうえで、税率の改正を説明します。
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2 税率の見直し(均一化)
今はビールは高級、安さなら第3のビールという位置づけですが、この構成が以下のように変わります。
350ml缶あたりで、今度の10月からビールは7円下がり、一方新ジャンルは約10円上がります。令和5年ではまだビールが下がり、新ジャンルが発泡酒扱い(値上がり)に。
もっと細かく分けたものが、冒頭紹介した表です。
最終的に令和8年には、ビールも発泡酒(現行の第3のビールを含む)も同じ税率になる予定です。
現在の価格差は税率に起因するものが大きいです。同じ税率ということは、原材料に大きな差別化が無い限り、現状よりも同価格水準になる可能性が高いということです。
どうですか?
良い傾向だと思う方、庶民イジメだと思う方、分かれると思います。企業努力で開拓された発泡酒市場、そして新ジャンル市場に規制が入り、全体的に増税感がある。しかし、本来のビールの味を愛し、急降下している販売量に文化的危機を感じる人には嬉しい。そもそも税率・取り扱いが煩雑であれば簡便化すべき、などなど。
公平・中立・簡素。
税の三原則は、このような場面でも難しい判断になりますね。
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■ 酒税資料から見えること
国税庁では約150頁に亘る「酒のしおり」という刊行物が毎年発行されます。酒は税のみならず、管理・規制面、国際的な輸出入の面でも結構、国税庁とリンクします。
酒税は歴史も古く、現在は国税収入の約2%ですが、現在のような税構造になる前、明治前期は約17%近くを占めていたそうです。
よって今も酒税法は、税理士試験の1科目に選ばれるほど税の世界では取り上げられます(約50種類近くある税目のうち、税理士試験の税法科目8科目の中に選ばれています)。まぁ実務では取り扱う業種はかなり限られますが。
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酒のしおりは、酒税だけでなく、酒を取り巻く様々な変化も記載されています。例えば、習慣的飲酒(週に3日以上、1日1合以上飲む)の年齢別割合は以下の通り。
上記のグラフのみでは読み取れませんが、文章を読むと平成元年の割合と比べ、特に若年層の飲酒割合が低いそうです。この段階で20~29歳の層が、今後、30~39歳になる時には、より少なくなりそうですね。
最近は量よりも度数の問題(ストロング系)がありますが、そこらへんは全く専門外なので割愛します。
お酒は週3以上飲むべき、なんて発想は微塵もありません。ただ数字を見て、残念に思う事と言えば、コミュニケーションが希薄化しているという背景が感じ取れてしまうことでしょうか。飲みニケーション好きの意見なので偏っているかもしれません💧
区分別の数量推移表は以下の通りです。
お酒のシェア争いの歴史です。
ビールが、紫の発泡酒市場の誕生に飲み込まれ、発泡酒市場に規制が入ると、オレンジの新ジャンル市場が誕生、その誕生と同時期からチューハイなどの緑色で示されたリキュール市場が伸びに伸びてきた、といった感じです。
この点は以下、日経の記事でも詳しく触れられています。
【 関連記事 】
「第三」販売量、ビール抜く コロナで広がる家飲み(日経 2020.7.8)
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最新のコロナ禍における近況では、以下に示した酒税の課税状況表という資料があります(速報値)。飲食業界が休業していた中、ビールの移出数量は前年の5割~6割とのことです。
(国税庁:酒税課税状況表 5月分速報 8/25公表データより作成)
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■ おわりに
国税庁のHPを日々チェックしていると、「酒税」の情報がよく更新されるため、定期的に追っています。まだまだ改正点の施行第1、2段階で、より大きな動きは3年後、6年後。
税率だけじゃなく、お酒と国民の趣向、動向にも注視したいですね。
私の青春の味、グリーンラベルも今後どうなるか。歴史も出てきたし、コンセプトそのままに、贅沢配合にしてビールに鞍替え…なんてこともありそうな、いやさすがになさそうな…。
と、妄想していたらこんな記事がありました。
おいしさと糖質ゼロを両立!日本初のビールが「キリン一番搾り」から10月に発売(ウォーカープラス 2020.8.28)
酒税改正の追い風を受け、ビールカテゴリーを活性化する商品として発売されるのが、「キリン一番搾り 糖質ゼロ」だ。発泡酒や第3のビールにおいて、糖質ゼロの商品はこれまでも存在していたが、ビールカテゴリーでの糖質ゼロは、本品が国内初となる。(記事より引用)
ビール=贅沢、にも関わらず糖質ゼロとは。技術の進歩はすごいですね。注視!
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※ 参考
ちなみに、令和2年10月からの施行に関して、酒類の手持品課税(戻税)の申告等もあります。通常、酒類は製造場から出荷された段階で酒税が課されますが、令和2年10 月1日の午前0時時点で流通段階にある課税済みの酒類に対して、新旧税率の差額を調整する措置が行われます。
該当する業種はかなり限られますが、念のため、リンクを貼りました。
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【 参考資料:酒税率一覧表 】
以上、本日は素面で「気になる税制」を書きました。
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