天照大神も「プっ」? 日本人ダジャレ愛3000年!

割引あり

《目次》

  • 若者たちにずっとバカにされ続けている”オヤジギャグ”

  • 「曽根崎心中」の近松門左衛門もダジャレ大好き!

  • 江戸庶民の銭湯はダジャレと譬えを交えた会話の宝庫~式亭三馬「浮世風呂」

  • 十返舎一九はダジャレの王様

  • 平安時代~和歌と掛詞(かけことば)

  • 日本最古のダジャレ!?

  • 日本語で言葉遊び~天照大神の心の岩戸を開け!

若者たちにずっとバカにされ続けている”オヤジギャグ”

いい年をしたオヤジさんが、
「あそこの家の塀が倒れたってよ、へぇ~」
とか、
「布団が吹っ飛んだ」
とか、
「このイクラいくら?」とか「お前んちイルカいるか?」とか、「雷はもうたくサンダー」とか・・・、一人ボソッとつぶやいては、周囲の冷たい視線も気にせず一人で笑っている光景をよく見かけます。

若い頃は私もそうでしたが、そういうダジャレを言う大人を見ると、
「ああ、人間て年を取るとこうなってしまうんだ。特に男は気をつけなければ・・・」
と、ある種の軽蔑をしておりました。

ところがいろいろ知っていくうちに、いわゆる”オヤジギャグ”と呼ばれる文化は、現代に始まった事ではないということが解かってきました。

特に江戸時代の草紙を読んでいると顕著で、多くの男女の恋愛悲劇を書いた近松門左衛門は、一見、冗談など言うような人には見えませんが、彼の書いた文章には語呂合わせのダジャレを用いた箇所がいくつも出てきます。

「曽根崎心中」の近松門左衛門もダジャレ大好き!

”お笑い”と言えば今も関西を連想しますが、近松門左衛門の活動の拠点も関西でした。
彼は江戸時代の前期から中期にかけて、人形浄瑠璃や歌舞伎の演目の作品をいくつも書いた脚本の原作者です。

その中に「国性爺合戦(こくせんやかっせん)」という物語があり、和藤内(わどうない)という独身の主人公が浜の干潟で貝を探す場面があるのですが、そこで捕った魚介類の種類を言うのに次のような文章が見られます。

『カニにシタダミ、アサリ貝。汐吹き上げたスダレ貝。チラと見初めたヒメガイに一筆書いて送りタイラギ(平貝)。口を開いてホヤホヤ笑う赤貝に心ヨセ貝、アぁイタラ貝。君は酢貝と吸い付けど、我はアワビの片思い。憎らしいあなたのサルボウ(猿頬貝)に、喰わせたいのはサザエ貝。娘はハナ貝・サクラ貝、寝たまま一人でアケニシ(赤螺)の、誰を待っているのか人が見て食うワスレ貝。我ら二人寝のトコブシ貝は身にシジミ貝祝いガイ(甲斐)。門出で好しのホラガイは悦び甲斐(ガイ)と獲っては探す。』

貝の種類を「これでもか!」と言う程ことごとく連ねつつ、いずれ嫁を迎える我が身の、ほのかな期待感を見事に文章の中に融合させています!

スゴっ!!

この箇所の現代語への翻訳は、「こんな名前の貝なんて本当にあるのか?」と、さんざん調べて書いたのを思い出しますが、
「ここまでやるか!」
と舌を巻いたものです。

江戸庶民の銭湯はダジャレと譬えを交えた会話の宝庫~式亭三馬「浮世風呂」

続いて式亭三馬の書いた「浮世風呂」を見てみましょう。
この作品は江戸時代の庶民の交流の場でもあった銭湯を舞台に、当時の人たちの日常会話を生き生きとそのまま伝えています。

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