絵唐津陶片
陶片とは?
陶芸の道に入り古陶磁を勉強していると、美術館などで名品をガラス越しに見るだけではなく、手に取りたくなるし、できることなら所有して身近に置いてみたくなるものである。
そんな時、作られた時代は完器の名品と変わりないものの、安価で手に入る陶片はとてもありがたい。その上、釉薬、土、細工など、勉強になることがたくさんある。さらに、産地の窯名がわかれば陶磁史の上でも資料となる。作り手にとって陶片は、作陶の師でもあり、着想の源の一つでもあるといえるだろう。
陶片から見えること
この唐津の陶片は50年以上昔、初めて購入した陶片である。
完器ならば角入りの四方皿。いくぶん砂気のある土味で、高台は小さめの丁寧な削り出し。草文の鉄の発色もよく、部分的に鉄砂が出て味わい深い。
一つの見どころは、表側の縁の段差をつけるために、裏面の縁の下を1㎝ほど抑えてあること。それが裏面のフォルムの抑揚となり、結果としてこの皿を単純な平たい皿ではなくしている。もちろん、陶工は意図したことではないだろう。まさに「巧まざる美」である。
広尾の日赤病院近くの磯谷欽古堂という店で手に入れたこの陶片、残念ながら窯名は明らかではない。しかしその晩、小さな皿立を用意し、机の上に置いて大満足で眺めたことを思い出す。