漢方は未病を治すか
ある方がFBの私の投稿をシェアしてくださって、「漢方で未病を治す医者」と紹介してくれましたが、実は今の漢方外来に来る患者さんは未病ではないです。だって何かの症状に困って来院してくるのですから、已病、つまり既に発病した人です。現在使われる意味での未病を治すのは、例えば血圧やコレステロールや糖尿病などをなんの症状も無い内に治療して招来の心筋梗塞、脳梗塞、認知症などのリスクを減らす、のが未病を治すと言うことになります。
ところがですね。実は本来の「治未病」って今言われているような意味ではありませんでした。病気の進行の先を読んでその治療をする、と言う意味だったのです。分かりやすくたとえ話で言うと、ある患者がストレスを一杯抱えて不眠症で来院した。当然安定剤と睡眠薬を出すけれども、「この患者は今ストレスをたくさん抱えているから必ず近々胃腸の働きが狂うだろう」と考えて胃腸薬も出す、と言うようなのが本来の「未病を治す」という意味です。
今の「未病を治す」がどうして今のような意味になったのか、私はよく知りませんけど、最近ではご本家中国や台湾でも治未病というと「招来疾患にかからないように健康に気をつけ、血圧などの管理をする」という意味になったようです。まあ医学概念は変わるものなので、それはそれで構わないんですけど。