塵労の世の五輪
東京に家を構えて選挙権持ってるのは、高額所得者が過半数、一部は低所得者層。中間層は隣県から通勤通学するので都議選の選挙権は無い。高額所得者は五輪だなんだのおこぼれになにがしか預かる層なので、五輪反対の候補に入れない。今回の都議選の結果はそれをそのまま反映したのだろう。
私も来月で57になるが、色々な体験をした。
もう述べたように、あるとき在籍していた日本東洋医学会の専門医制度が「専門医制度機構」という国の外郭団体の規則改定に合わないというので、学会の制度を機構の規則に合わせる作業をした。委員達(大学の准教授とか教授とか)がよってたかって「こことこことここがマズい」と言って全部書き換えたが、実際はその通り運用することは不可能だったので、「運用は従来通り」にしてしまった。紙切れの上だけ書き換えたのである。
またあるとき東北大が中心になって、WHOの補完代替医療に関わる部署の、まあ言ってみれば課長クラスを呼んで花を添えようと言うことになったが、WHOが出してきた条件が往復はスイス航空のファーストクラス、新幹線は一等席(つまり当時ならグリーン車)、ホテルは5スターであることだった。WHOの課長は表向き謝礼を受け取れないので、裏金を捻出して10万某を渡した。
それに対し、あるときやはり東北大が主催するシンポジウムに、石学敏国医大師という、世界中で中国伝統医学をやる者でその名を知らなければ潜りと言われるほどの大学者を天津から招いたときは、そんな条件は全く言われなかった。WHOの課長の名なぞとっくに忘れたが、石学敏という名は既に歴史に刻まれている。勿論こちらで気を遣って飛行機はビジネスクラス(仙台―北京はファーストクラスが無い)にしたが、石先生はそんなことは一向に気にしなかった。石学敏国医大師の謝礼も確か10万だったが、これはきちんと東北大学の正規の金で出した。
石学敏国医大師の謝礼は正規に出したが、その時更に箔ツケに、当時の仙台市長(今の市長とは別)を呼んできて二言三言しゃべらせた。市長も公務員だからおおっぴらに金を渡せないので、裏金で渡した。金は色々なルートを通したが、要するに漢方関連の大手製薬会社が出元である。
そういうことを散々経験したので、IOCのお偉方が散々贅沢をして、その金が全部税金とおそらく一部裏金で出たと聞いても、私は驚かなくなってしまった。その驚かない層が、つまり自民公明都民ファーストを支持しているのだろう。
しかしそう言う色々な経験をしたとは言え、今回のようにパンデミックの中で10万人の大集会をやり、幾ら感染者が増えようがお構いなし、関係者は一室300万円!のホテルに泊まるというのは聞いたことが無い。まあ、一室300万円の部屋がオークラにあるのも知らなかったのだが。
その上それに反対論が高まると、8500人の軍隊を出して五輪をやるというのは、さすがに私の57年の生涯で見た汚いものの域を完全に超えている。しょうがないさ、世の中こんなもんだよと割り切れる範疇では無い。ここまで社会矛盾を許容してはならない。だから私は五輪断固反対なのである。