救命加算というものは無い

内田隆一先生が、またFBでぶつくさ文句を書いている。めったにない稀な急変に気がついて、教科書に無い治療をして一命を取り留めさせたのに誰も評価してくれないという。



考えてみればそれは私が「なんともなさそうな患者を検査したら大変なことになっていたから救急搬送したが全然加算が付かない」と文句を言っているのと本質は同じだ。



めったにない病態は、めったにないから、統計に載らない。なんともなさそうな患者がじつは大変な患者だったから救急搬送したというのも統計に載らない。医者は「自分は凄いことをした」と思っているかもしれないが、国の統計にそういうことは載っていかない。



一方高血圧患者に降圧剤を出すのは馬鹿でも出来る。血圧が高いから降圧剤出しておきますねと言うのに特殊な技術や知識は必要ない。しかし全国の高血圧患者にそうやって血圧を下げると、心血管イベント(心筋梗塞や脳卒中)が減るという統計が出る。だから国はそういう診療に加算を付ける。高血圧の中の1割ほどいると言われる二次性高血圧(甲状腺機能亢進症、アルドステロン症、下垂体腫瘍等々)を見つけて高次病院に送って救命しても、それは国の統計に載るほどの数字にはならないから、国は加算を付けない。



加算が付かないという事はめぐり巡って病院経営に関わってきて、加算が付かない診療をする医者は評価されないという事になる。内田先生がどんなに難しい病態を彼一流の診断力、治療の技で救命しても、それに加算は全く付かず、かえって材料費ばかり嵩むから、病院の評価は低い。私は開業してみてそれに気がついたが、彼は勤務医なのでまだ気がつかず、「自分はこんな凄い治療をしているのにどうして評価してもらえないんだろう」と文句を言っている。理由は簡単。彼の技術は統計に反映されず、従って加算が付かないからである。救命加算というものは無いのだ。

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