日本漢方を斬る
今日のオンライン漢方診療に受診してきた人の話を聞いて、私は呆れかえった。40代女性、色々症状があって地元の漢方内科に掛かっているがよくならないのでこちらを受診したという。
どんな症状でどんな治療を受けていますか、と訊いた。
「慢性のかゆみと鼻水で葛根湯加川芎辛夷が出ています」。
「雨の前の日になると身体や気分が重いので五苓散を貰っています」
「生理の一週間前からイライラが止まらず子供に当たり散らしてしまうので加味逍遙散を貰っています」
・・・。
「アレルギーの検査はしたことありますか?」
「ありません」
「鼻水ですか、鼻が詰まるんですか」
「鼻水です」
「そういう漢方薬を飲んで効いていると感じますか?」
「五苓散だけは効いている感じがします」
その「漢方内科」の医者のやっていることは、「エビデンス漢方」のハウツー本にある「この症状にはこの漢方」を足しただけだ。いや、「エビデンス漢方」の著者だって流れる鼻水に葛根湯加川芎辛夷は推奨していないかもしれない(読んでないから推測)。その漢方内科の医者がこの人をどう弁証し、どういう治療方針を建てているのか、この処方からは全く分からない。と言うか、明らかに弁証などしてない。単なる対処療法だ。これなら鼻水にエピナスチン、頭痛にカロナール、生理前の不調にメイラックスを出したって同じことだ。漢方薬は出しているが、これは漢方治療では無い。
これで漢方内科を名乗っているんだそうだ。漢方内科を名乗るほどなら、おそらく例の「日本東洋医学学会認定漢方専門医」の資格ぐらい持っているんだろう。知らんけど。
「まずアレルギー検査を受けて下さい。鼻水、かゆみはそれからです。今日はともかく生理前のイライラに効く薬だけ煎じ薬で出します」と言って大柴胡湯去大黄を生理前一週間だけ飲むように指示して出した。足の冷えなどもあったが、まずは「先急後緩」である。子供が被害を受けているからには、まずそこから手を付けると決めた。去大黄にしたのは軟便気味だったからだ。熱入血室で小柴胡湯でも良いかと思ったが、舌が真っ赤だったので大柴胡湯にした。
これが日本漢方の現状である。到底学会とは呼べないあんな所の「漢方専門医」を持っていても、やってることはハウツー本の寄せ集めに過ぎない。「その人をどう診断(弁証)するか」がすっぽり抜け落ちている。どう弁証し、どういう治療戦略を建てているのか、それが完全に欠落しているのだ。
だめさ、こんなものは。