四柱推命客の思い出
黒革の手帳
そのお客との付き合いは、私が入店してから退店するまで続いたので7年強にわたった。かなり高齢のお客なのだが、高齢だからなのか知らないが、我が強いわ、口は汚いわ、かなりの手強さで接客NGにしているキャストも多かった。
男はデータをとりたがる傾向にあるのかもしれないが、このお客もまさにデータ廚のメモ魔で、在籍キャスト全員の入店日、生年月日、出身地、本名(自己申告の)、将来の夢までも手帳に書き記しているのであった。来店日も書いており、何回フィニッシュできたかも書くというマメさだ。自分で楽しむ分にはいいが、たちが悪いのが、そのデータをキャストに教えるというもので、たとえそれが本当のデータではなくとも気分が悪くなるのは当然だろう。キャストのことをポケモンとか、遊戯王か何かだと思っているのだろうか。
データをもとに占う
なぜ本名と生年月日が必要かというと、お客は占いをしたいからなのであった。四柱推命で占うのに必要らしい。古典的でベタなお近づき方法だが、自分を占ってくれる分には話のネタにもなるし、まあ良いかな、と思う。お客と自分の相性を占うのも、なに言ってるんだと内心思いながらも、まあ良いかな、と思う。しかしお客はそれだけでは満足せず、私の親の占いもしてくるのであった。親をお客に占われるとは、なんとも微妙なシチュエーションだ。たぶんお願いしたら先祖代々さかのぼり喜んで占ってくれたと思う。
知らんがな!
しかし一番困ったのは、他のキャストと私の相性を四柱推命で占ってくることだった。キャバクラなどの水商売ならキャスト同士の関わりがあるけど、風俗はほぼキャスト同士の関わりはなく、規模の大きな店になると揉め事回避の為、キャスト同士は一切会話するなと言われていたりする。だから、うっすら名前は知っているけど、顔と名前も一致しないし、占われても、しらんがな!って感じなのだ。
極め付けは、このキャストとこのキャストは相性が良い(四柱推命的に)、という話を私にしてくることで、もうここまでくるとあいづちの打ちようもなく、無の境地に陥りそうになるのだった。
お客は口が悪く、わたしはいつも「あんたは図太いわ」とブーブー言われていたが、このようなつわものと長年付き合っていたので、実は図太い神経だったのかもしれない。いや、図太くなってしまったんだろう。忍耐が鍛えられたことは間違いない。w
この作品はフィクションです。実在の人物・団体・とは一切関係がありません。
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