⑤310文字の「撒き」
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それは終わりの見えない鬼ごっこ
目を離せば
遠くへと走りゆく姿が
置き去りの彼の視界に映る
見付け出しても
掴む手はするりと躱され
翻る裾の影に笑われる
撒く理由も
追う理由も
本能とプライド以外何もない
夜の帳も
降る雨も
駆ける衝動を抑えるなんてできない
背中を見せたらそれが合図
鬼さんこちら
手の鳴る方へ
夜の街で隠れんぼをしよう
ボールを使って缶蹴りもどき
拍子の抜けたカーチェイス
鬼の居ぬ間に水遊び
ただでは撒いてやらぬ
鐘の音を待つ祝いの日に
鬼さん交代
仕返しするぞ
夜の街でもう一回遊ぼう
でも鬼は悪魔には勝てない
キメられてしまう関節
偽りの心変わり
ただでは撒かれてやらぬ
帰ればいいのに
追いかけてくる筈なのに
すれ違う言い分
果たしてあたおかなのはどっち?