ウィステリア

凪いだ空の青さ
僅かに差す木漏れ日
永い夢に微睡んで
このまま君と過ごせたら
どれほど幸せだったのだろう

幾代八千代と
枝垂れる紫の雨粒が
戀う君の貌を隠す

風に揺らいでる雨霧に
そっと微かに垣間見た
君の優しい微笑み

降り頻る花の雨
背を向ける幻を
必死に掻き抱いてた

陰る雲の厚さ
仄かな雨の匂い
胸を過ぎる悲しみが
せめて夢であるように
どれほど願えば叶ったのだろう

幾代八千代と
広がる紫の花房が
降る雨から僕を隠す

ほんの束の間の雨宿り
閉じた瞼の露先に
伝う君を戀う雫

花散らしの雨の中
消えてしまう幻に
どうか　餞の傘を




降れや　降れや　雨を乞おう
空を映す水面に君の影が見えるように
咲けや　咲けや　花を戀おう
舞い落ちる花弁が君の天を覆うように



幾代八千代と
繋がる紫のまほろばが
遥かな時を紡いでいく

今も聴こえてる君の声
僕の心を震わせて
遠い過去へ帰っていく

降り注ぐ花の下
愛おしい幻に
そっと別れを告げよう


ひとりっきりの傘の中
せめてひと時だけでも
君と歩けることを夢見て