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Let's Say the "星座".

プラネタリウムで「星座」という言葉を使うとき、それは「星の並びに人やモノや動物の姿を考えたもの」と説明します。しかしこの「星座」という言葉、かなりややこしい言葉なんです。

星座の生誕、星座の成長

そもそも星座とは、今から5000年前の大昔にメソポタミア地方に住んでいたシュメール人が星と星をつないで神話や伝説に登場する人や神様、動物の姿を考えたのが始まりだと言われています。
始まりはメソポタミアだというのが有力ですが、メソポタミアのほかにも、いろんな場所で多くの人たちがそれぞれに星座を作っていたことでしょう。
そののち2世紀ごろ、ギリシャに伝わってヒッパルコスやプトレマイオスの手によって、48の星座に整理されます。この48星座のことを「プトレマイオスの48星座」とか「トレミーの48星座」と呼びます。

さらに時間が経って、15世以降になると人間たちは南半球へと船を出すようになります。大航海時代です。南半球に行くと、北半球では見られない星空を見ることができました。ここで南半球の星空に新しい星座がいくつも作られます。ですから、今でも南半球の星座には、航海に使う道具の星座や南半球の生き物の星座が多いです。

しかし、あんまりたくさんの星座があちこちで自由に作られたものですから、天文学者たちは混乱してしまいます。例えば、「ふくろう座の方向に変な星を見たんだ」「どこだよ、そんな星座知らないよ」みたいなことになってしまうわけです。
そこで、天文学者のために国際天文学連合IAUという組織が、地球から見える空全体を88個に分けて、それぞれの場所に星座を決めました。これが現在広く世界的に用いられている「88星座」というものです。
このとき、IAUが決めたのは、「空全体を区切る境界線」「その場所の名前」です。「星のつなぎ方」「その星座の姿」「神話」等は決められていません。
つまり、IAUが言うには「星座とは、空全体を88個に分けた住所のようなもの」だということです。

結局「星座」って何なの?

とまあ星座の歴史は紆余曲折あったのですが、天文学の世界で「星座」という言葉を使うとき、大きく分けて2通りの読み方ができます。

  1. 「星座とは、星の並びに人やモノや動物の姿を考えたもの」とする広い意味の読み方。
    これは星座のはじまりの頃のような、自由な考え方の「星座」です。

  2. IAUにならった「星座とは、空全体を88個に分けた住所のようなもの」とする狭い意味の読み方。
    これは天文学者が科学的な議論をするために定めた、厳格な考え方の「星座」です。


星と星をつないで、人やモノや動物の姿を考えた「星座」


空を88個に分けた範囲としての「星座」
天文学者はこれを住所のように使って「いて座にあるブラックホール」とか話をする

どちらかが正しいとか、どちらかが間違っているわけではありません。どちらも「星座」なのです。
それゆえにプラネタリウムでは苦労することもあります。科学を伝える立場として、間違ったことを言うわけにはいきません。しかし、ここまで述べてきたものをサッと伝えるのもなかなか難しいです。
例えば、「夏の大三角は星座ではないのか」と聞かれたとき。IAUの考え方によれば、夏の大三角は88星座に含まれませんから、星座ではありません。しかし、「星と星をつないで三角の形を考えたもの」ですから、広い意味の考え方では星座と考えても良さそうです。えーどうしよう。困りました。

こういう時はある程度割りきって、館ごとに考え方を統一するようです。例えば、「ウチの館では88星座のことを星座と呼ぶ」。ただし星座は空を分けた領域とか説明するとかえってわかりにくくなって伝わらないので、「星座は星と星をつないで人やモノや動物の姿を考えたものとする」。といった風に。
そして「夏の大三角は星座ではないけど、星座を探す目印になっているよ」なんて回答に落ち着くのです。


ここからは私の考える「星座」の話

個人的には、自由な考え方の星座も捨てがたいものだと思っています。多くの人は天文学者ではありませんからね。自由な発想で自分なりの星座を考えたっていいと思うんです。元をたどれば、それが星の楽しみ方であったわけですから。
もしも、少し専門的な話をするときがあれば、その時はIAUの星座について知ってもらう機会だと思って説明するでしょう。「天文学者が使う星座と、みんなが知っている星座って少し違うんです」って。

参考

もっと詳しく知りたい方は日本天文学会の「天文学辞典」がおすすめです。
本シリーズ「宇宙の入り口」では「天文学辞典」で小学生レベルに指定されている用語をメインで紹介していきます。

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