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メディアを選ばずに、人が受け取りやすいように情報をデザインするお仕事

僕が社長になった理由-村上 真木さん-
多くのデザイナーさんと付き合っていますが、村上さんは職人的なデザイナーというより、実業家のイメージです。お話を聞いて納得。彼が目指すところは一流のデザイナーではなく、優秀なデザイナーなどに仕事を提供するプロデューサー側なのです。ご両親はデザイナーだったそうですが、そこから今の思いに至るストーリーをお聞きしました。

2019年夏、”いわみんプロジェクト”として、社長や起業家、独立して活動している方を対象に100人インタビューを実施しました。彼らがどんな想いで起業し、会社を経営しているのか? その中での葛藤や喜び、そして未来に向けて。熱い想いをたくさんの人に伝えたいと思っています。

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村上 真木(むらかみ まさき)さん

ボンドデザイン株式会社 代表取締役社長
大学在学中にデザイン専門学校でデザインについて学ぶ
卒業後は両親の会社に就職
2014年 事業継承しつつ、法人化させる

クリエイターの両親の影響か
デザイン系のものへの興味が強くありました

 うちの両親は父がコピーライターで母がデザイナーなんです。2人でデザイン会社をやっていて、パンフレットとか社内報なんかを製作していました。仕事場が僕の遊び場でもあったからか、小さいころから図工とかが好きでしたね。
 でも、小学生のころの夢は、スパイグッズとかを取り扱うお店をやりたいと思っていました。少年マガジンとかの後ろの方に載っていたおもしろグッズの通販ページがすごく好きで欲しかったんです。スパイグッズとか警棒のレプリカとか。だからそういった商品を扱う店をやれたら最高だな!と思ってました。

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 親からは、家業を継ぐとしても、一般教養は身に着けたほうがいいと言われて、大学は普通の学部を選択して行きました。夜学だったので、昼間はバイク便のバイトをしていました。出版社や印刷業界に出入りすることが多くて、なんとなく親の仕事と近しい世界にずっといた感覚です。
 大学3年のときに、実家の仕事を手伝っていたアシスタントの人が辞めることになって、すごく忙しいタイミングだったこともあり、僕がバイトをすることになったんです。もちろん、デザインの仕事なんてできませんが、言われた雑務をこなすうちになんとなくデザインの仕事についての知識が増えていき、見様見真似で自分でもページデザインをするようになりました。

 4年で卒業するはずが、単位が足りずに留年することになっちゃったんですが、せっかくだったらと思い、ちゃんとデザインの専門学校に通うことにしました。1年間は、大学と専門学校とバイトの両立です。かなり厳しい日々でした。専門学校は2年制だったので、大学卒業後も引き続き学校に通っていました。そこでは、具体的なデザインスキルというより、デザインする際の思考法などの概論を学ぶ授業が多かったんです。過去のデザインを見て、何を表現したかったのか? を考えるような授業でした。

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 その後、デザイン会社などへの就職ももちろん道としてはあったのですが、会社で自分が抜けたら大変だよな、という思いが強く、実家に就職しました。もともと実家では、屋号はあったものの、個人事業主のカタチでやっていたので、2014年に自分が代表になる際に、事業継承ではなく新しい屋号で法人化することにしました。

ご両親の仕事を見て育った村上さんは、家の仕事を手伝うようになり、そのままその仕事を継承していくようになります。ただ、親の時代とは異なり、出版不況やデジタル化が進む中、単に同じことをやっていけばいい時代ではなくなります。そこで村上さんが進んだのは、社名にも現れている「つなぐ」側になることだったのです。

どこでデザインするかにはこだわらず
情報をデザインする仕事をしていきたい

 経営者になるための準備として、地元の商工会議所へ参加したり、経営者が集うところにも顔を出すようにしていきました。ただ、父はかなり交流会に出ては仕事をおそろかにしているように感じられたため、自分は行くところを絞り、そのかわり参加するところでは濃く参加するようにしています。
 時代の流れで紙のデザインからウェブデザインが求められるようになって、自分の会社でもウェブデザインに対応できるようにしています。紙のデザイナーは、ウェブデザインができない人が多いのですが、僕の考えはあくまでも「ユーザーの読みやすさを考えたデザイン」なので、いわゆる見栄えをおしゃれにするデザイン中心の考え方とは少し違います"情報をデザインする"こと、人が見やすいデザインにすることがデザイナーの仕事だと思っているんです。

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 なので、単なるデザインの依頼を受けるというより、依頼される人が「何を伝えたいのか?」「どういったことを伝えるとユーザーにメリットがあるのか?」などを一緒に考えるカウンセリングだったり、ブランディングのところからやっていきたいと思っています。
 とはいえ、いきなりカウンセリングの仕事をとるってことは現実的ではないので、最初は「ロゴマーク作ります!」というアプローチで、そこでのやりとりで出てくるブランディングだったり、ビジネスデザイン的なところに介入できるようにしたいと考えています。

 仕事には、できることとやりたいことがあって、できることだけにフォーカスしていると、やりたい仕事になかなかたどり着かないものだと思っています。そこで、僕はやりたい仕事にフォーカスしてアプローチするようにしています。だから僕が受けた仕事は、僕が得意なことではないこともあります。でも、世の中には、営業より作業が得意だったり、そちらを優先したいプロの方たちがたくさんいるので、僕がとってきた仕事をそういった方たちに依頼して進めていくようにしています。
 今後の社会では、さまざまな人たちが自分の働きたいスタイルで働く時代になっていくと思います。そういった方たちの求めるカタチに合わせて、仕事を提供し彼らが最高のパフォーマンスを上げてもらえるような調整役に僕がなれたら、と思っています。

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村上さんの媒体を選ばないデザインの考え方は、非常に共感を覚えました。それぞれの媒体のお作法はありながらも、最終的には受け取り手が喜ぶものを提供することが正解なんです。きっと、専門学校時代に学んだ、デザイン思考法が大きく影響しているのかもしれませんね。今後主流になると言われているギルド式の働き方も、ぜひ推進していってほしいと思います。

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いわみん
下町の2D&3D編集者。メディアと場作りのプロデューサーとして活動。ワークショップデザイナー&ファシリテーター。世界中の笑顔を増やして、ダイバーシティの実現を目指します!