内防通信vol.4 | ケアとしての被災聞き取り調査
うちぼうプロジェクトの活動日は不定期の水曜日。今回は、6月12日に行われた「うちぼう定例会」の模様をレポートします。今回も地域活動家の小松理虔さんをゲストに迎え、活動全般についてアドバイスいただきました。アドバイス、といってもみんなで毎回取り留めもない話をしたり、今後の方向性について話し合う時間になっております。
さて、今回の定例会の主要テーマは、ぼちぼち活動が始まった「被災証言の聞き取り」についてです。
すでにこちらの記事で、聞き取りライターの染矢優香さんがレポートしてくださっていますが、昨年の台風13号水害で被災した方々への聞き取りがスタートしています。東京で元々ライターとして活動し、かつ内郷在住の染矢さんを軸に、内郷各地区で開催されている高齢者のサロン「ふくみちゃんカフェ」に伺って、被災の状況を伺っています。
染矢さんに、現在の状況を整理してもらいました。染矢さんによると、ふくみちゃんカフェで集まった方に災害について話を聞くと、皆さん、話したいことがたくさんありすぎるようで、一旦話を始まると小一時間は聞かざるを得ないとのことでした。
染矢さんからは、「辛い思い出を語ってくださっているのに、次々に質問をしていって証言を取るような取材方法は取りにくい」というお話が。たしかに、せっかく話し始めてくださっているのに、あれは?これは?と質問を被せてしまったら、皆さんが本当に語りたいことを語ることができないかもしれません。大事な指摘だと思います。
プロジェクトのことを考えると、証言集をつくろう、マッピングしようという「成果」を私たちは思わず思い浮かべてしまいますが、成果以前に、私たちは防災の経験を次の世代に引き継ごう、まちづくりに役立てていこうというプロジェクトですから、まずは同郷のおじいさん、おばあさんたちに寄り添うという姿勢が大事だと思います。
その話を聞いた小松さんからは、「染矢さんの取材そのものが、話を聞くという傾聴の時間、ケアの時間になっているのではないか」という話もありました。たしかに、誰かが自分の話に耳を傾けてくれるという場は安心感につながると思いますし、そうして傷を語ることができる空間はケアにつながっているのかもしれません。
ケアに関わるのは、もちろん染矢さんばかりではありません。ふくみちゃんカフェのような取り組みを続けている社会福祉協議会の皆さんや、主催されている馬目さんのご尽力、醸し出す場の雰囲気があってこそ。こうした「集い」が各地で開催されていること自体を内郷の財産と捉え、今後も積極的に関わっていきたい、連携したいと改めて思いました。
自分たちの取り組みがケアに通じているとは思ってもみませんでしたが、こうして二人から言及してもらうことで、うちぼうが目指すべき方向性も見えてくる気がします。成果も大事ですが、まずは地域の方々に向き合い、そしてその話に耳を傾ける。そうして地域のコミュニティの基盤となるものを支えていく役割が、うちぼうにはあるのかもしれないと思いました。
ノルマを達成しようと闇雲に話を聞くのではなく、例えば今年は内町、来年度は宮町、などとエリアを分けてじっくりと収録していくような方法もありかもしれません。「内郷」といっても、エリアはめちゃくちゃ広いんです。
また、前回行われた喋り場「内講」の振り返りも行いました。江尻浩二郎さんを迎えた内講、大変に盛り上がりまして、夜の12時ごろまで開催したんですが、解散時に「お疲れ様でした!」と挨拶する声がご近所に響き渡ってしまっていたようで、以後気をつけましょう、という注意喚起をしました。
それほど盛り上がってしまったことの裏返しですが、だからと言って地域の人たちの安眠を妨害していい理由にはなりません。今後は自制を保ち、節度をもってお酒やおしゃべりを楽しみたいと思います!!
小松さんにお話を伺いましたら、江尻さんも、まだまだ話し足りないという状態だったということですので、ぜひまた内講に登場いただければ、なんて話も会議では出ていました。
そしてその内講ですが、次回の講座は、令和元年台風で被災した、いわき市下平窪「平31区」の江尻区長にお声がけさせて頂いております。いわば防災のまちづくりの先輩である下平窪の皆さんに、じっくりとお話を伺う予定です。フェイスブックページに開催の概要が出ておりますので、ぜひ参加表明などもよろしくお願いいたします。
では、今回のレポートはこのあたりで。
内郷まちづくり市民会議「うちぼうプロジェクト」事務局