使う言葉には人柄が出る | インドひとり旅での出会い
インドに来て3日が経過した。
首都ニューデリーの南部で宿を取り、週末まで仕事をする予定だ。
この地域は東洋人はおろか、西洋人の姿も少ない。ホステルに滞在している旅客のほとんどがインド国内から来ている。一人は慣れていたはずなのに、一抹の寂しさと孤独感を感じ始めていた。
旅の仲間が欲しい。初めてそう思った。
調べてみると「地球の歩き方」のWebサイトから掲示板を利用することで旅の仲間を募ることができるみたいだ。さっそくスレッドを立ち上げてみた。
すると、背後から突然話しかけられた。
「君、もしかして日本人?」と英語で聞いてきた彼の見た目はアジア系の顔立ちをしていた。「そうだよ」と答えると嬉しそうに話を続けてきた。
クアンと名乗った彼は台湾からのバックパッカーらしく、9ヶ月間世界を旅していると聞く。
2~3年のスパンで仕事を辞め、1年弱を旅に費やす生活を続けて10年以上経つと言う。日本の文化、特に漫画と音楽が好きらしく、来年には日本を訪れ沖縄から北海道まで縦断する予定だとか。
話してみるとあまりにも価値観が一致したので、一緒に食事をすることにした。ニューデリーを案内してもらいながら、旅のTipsを親切に色々と教えてくれた。私がお礼を言うと、決まって「small thing,small thing(ささいなことさ)」と返事をする。いい言葉だなと思った。
彼は旅を「安全」か「危険」の2軸で判断している。
「ここはsafetyで、これ以上はdangerous」だから「こうするのがおすすめだよ」と教えてくれる。彼いわく、旅をしていると、ぼったくりやひったくり、危険に晒される場面が多々あるという。その経験を通じて、彼の中でセーフティーラインを設け、自身の身を守っているのだ。
「旅にはチャレンジがつきものだけど、しちゃいけないチャレンジもある」
そう彼は教えてくれた。私は性格上、石橋を叩いて渡るタイプではあるが、時たまチャレンジングなことをしでかす。それがいい結果を招くこともあれば、その逆もまたしかり。
本格的にインドの旅が始まる前に、先人より忠告を受けることができたのは幸いである。
クアンは既に次の旅先であるシンガポールへと旅立った。来年、私はタイのチェンマイに行く予定だ。そのことを彼に話したら、彼も同じ期間にチェンマイへ訪れるとのこと。また彼と出会うのはそう遠くない未来かもしれない。