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文化人物録56(小原孝)

小原孝(ピアニスト、2015年)
→ピアノの可能性や魅力を世間に伝え、愛好者の裾野を広げた功労者の一人だろう。NHK-FMの「弾き語りフォーユー」に代表されるように、老若男女がピアノを楽しめるよう工夫して音楽を届けるのが小原さんのスタイル。彼が紡ぎ出す音はいつも優しく親しみ深く、そして楽しげである。

特にクラシック音楽のファンにはクラシックの難曲や有名曲を中心に演奏するのが真のピアニストだと思っている人も多いだろうが、ピアニストと言っても、多種多様な生き方があるのである。

*デビュー25周年アルバム「アルハンブラの想い出」
・自分の中では納得の選曲です。弾き語りフォーユーを積み重ねてきましたが、25周年記念としてのCD発売が急遽決まりました。番組の中でのリクエスト曲、番組の雰囲気を映したアルバムだと思います。子供の頃に聴いたり、デビューアルバムに収録したりした曲も入れています。10曲目以降は1990年代以降のヒット曲です。聴きやすく親しみやすい曲が中心です。

・ピアノを音として楽しめるよう、そして収録は演奏としゃべるが別録りではなく、弾きながらおしゃべりするスタイルを17年間続けてきました。お便りを読み、その気持ちのまま演奏する。お便りの内容によって演奏も枯れたりするのです。今回はリスナーではなく、僕自身が思い入れがある曲を選んでいます。歌詞を読んで情景を思い浮かべることによって、弾き方も変わってきます。二度と同じことはできない、即興的な感じにしました。

・ピアノは演奏会、楽器によって全然違う音になるのです。ホールにあるピアノに合った弾き方をすると、その場に合う音になります。クラシックの世界では楽譜通りに弾くことがいいとされますが、そうでない方法もあると思います。それが僕らしい方法でもあるのです。

・特にジャズをやるようになってからはいろんな方法があっていいという思いが強くなりました。昔のピアニストや趣味でピアノを弾く人は同じではなく、いろんな方法、自分らしく好きな曲を弾くことがいいと思ってます。ピアノはピアニストにならなくても楽しめる楽器なのです。

・僕は猫ふんじゃったシリーズというのをかつてやったのですが、最初は総スカンでした。ですが今は僕のアレンジによる猫ふんじゃったが弾かれるようになった。ようやくここまで来た感じがします。子供たちが練習つまらないとなったときも、猫ふんじゃったなら弾くのではないかと思ったのがきっかけです。結構マジメに作ったのです。猫ふんじゃったでピアノが好きになった人が先生になり、次世代につながるといいと思ってます。20年たってもこの作品売れ続けているようです。

・音大の時は試験曲が弾けないと評価されませんが、ピアニストとしてはすべての曲が弾ける必要はありません。全部評価されなくても諦めてはいけないと言いたいです。レッスン曲であっても、楽しく弾くことが重要です。小さな曲でも簡単な曲でも、楽しく弾けばいいのです。それで音楽が好きになればいい。アルバムに入っている「履物と傘の物語」、曲自体は物語をピアノ曲にしたものですが、レコーディングと番組で取り上げたときは全く違いました。

・デビュー25周年ということで記念リサイタルもやりましたが、25年というのはまだ中間地点なのだろうと思っています。ソロ活動とコラボ・伴奏を並行してやってきましたが、クラシックとポピュラーの音楽を両方できることが利点です。当初はそういうやり方はダメだと言われましたが、ソリストもやれば伴奏もやる、作曲もやる。それぞれの活動を区別し意識して切り替えるようにしています。何でもやるイメージを追い求めて努力してきたつもりです。大学院ではメシアンを演奏した直後に由紀さおり・安田祥子姉妹のピアノ伴奏をやったこともあります。初めから両方やっていたので違和感なく、偶然が重なった結果が今につながっているのだと思います。
・いま子供の音楽に限らず、皆で聴ける曲が少なくなっています。音楽を通じて世代間の交流がしたいです。動揺は今ピアノの先生でも知らない人結構いるのです。家族全員で聴けるようなCD、コンサートももっとやっていきたいです。

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