文化人物録12(村上春樹)
村上春樹(作家)
→村上春樹さんは僕が語るまでもなく、誰もが認める国民的、世界的作家である。僕は少年時代から村上さんの作品、村上さんの生き方が大好きだった。仕事柄お会いする機会もあるのではと思っていたが、今に至るまで実現したことはない。ひたすらニアミス続きだったといえるかもしれない。何がニアミスだったのか。
・小説→仕事柄直接話を聞く機会はあったと思うが、僕が文芸を担当していた頃、村上さんはあまりメディアには出ていなかった。ラジオをはじめ割とあちこちに出てくる今と違い、おそらくちょうど「長編小説執筆モード」にあったと思われる。ご本人には話を聞けなかったが、村上作品については結構書いたほか、盟友である柴田元幸さんとはいろいろお話しさせていただいた。
・ジャズ→村上さんはかつて千駄ヶ谷でジャズ喫茶ピーターキャットを営んでいて、小説にもジャズの影響が多大に感じられる。特に文体。僕もジャズが大好きで村上さんのジャズに関するエッセーや翻訳作品は全て読んだし、村上さんが通ったジャズ喫茶やライブハウスなどにもかなり行ったことはある。が、やはり直接お話ししたことはない。
・ヤクルトスワローズ→村上さんはピーターキャットを神宮の近くでやっていたこともあり、大のヤクルトファン。僕もセリーグならヤクルトが好きで、よく神宮球場には行っていた。最近は行けてないものの、すいている外野自由席でビールを飲み、神宮カレーを食べるのは至福の時だった。最近村上さんは神宮外苑周辺の再開発に反対の意向を示したが、それだけこの周辺への思い入れが強いということだろう。
・大学→村上さんと同じ大学に通っていて、村上さんが演劇博物館のシナリオを読み漁っていたことは当時から承知していた。村上春樹ライブラリーが大学内にできた後も訪れたことがあるが、残念ながらご本人に会える機会はなかった。また大学の近くにはノルウェイの森の舞台にもなった村上さんが短期間過ごした男子学生寮があり、友人が住んでいた。