文化人物録34(五十嵐はるみ他、JAZZ LADY PROJECT)
34JAZZ LADY PROJECT(五十嵐はるみ(Vo)、大西由希子(Sax)、折重由美子(P&クラビオーラ)(2015年)
→女性のジャズミュージシャンを集めて結成されたグループ。ジャズで活躍する日本の女性といえば秋吉敏子、大西順子、寺井尚子、山中千尋、上原ひろみ、挾間美帆など結構いるようにも思えるが、そうはいってもジャズ界の大半は男性。そんな男性社会の中で団結して行動しようという意図は非常によく理解できる。僕がお話した3人は皆さんそれぞれ個人的な活動もたいへん多忙で、中でも大西さんはその後「ユッコ・ミラー」として、派手な見た目と骨太の演奏が大いに注目されるようになった。
ジャズ界が「LADY」をうたわずとも、女性が当たり前のように活躍する世界になるのが理想ではあるが、その実現までまだまだ頑張っていただきたいものだ。
(五十嵐)プロジェクトの最初はTVの企画でした。女子ジャズブームということで演奏したのですが、放送後に「CDはあるのか?」など結構問い合わせがあったんです。それぞれが皆個別に活動していましたが、それではやってみようということになった。2012年に第1弾としてやった時メンバーは6人でしたが、第2弾である15年の今回は11人です。ジャズ界で活躍する、美女であり演奏もバリバリできるような人を集めました。この中で第1弾から参加しているのは私だけです。
(折重)私はもともとノンジャンルで、中高では女性だけのバンドを組んでいました。高校生の後半からはジャズを志し、20歳ごろからはジャズピアニストとして活動しています。普段はもちろん男性ミュージシャンとも一緒にやりますが、女性だけのサウンドというのは皆さんとご一緒していても個性的です。男性以上のエネルギーじゃないでしょうか。違う楽しさがあります。
(大西)私は高1の時吹奏楽部に入ってサックスを始めました。女性だけというのはあまり好きではなかったのですが、思っていたイメージとは違い素晴らしいです。女性だと音が細いような印象がありましたが、そんなことはない。女性にしか出せない、すごく熱いサウンドです。
(五十嵐)私は広島で折重さんと共演したことがあったのですが、見た目と違って弾くピアノは男性のようでした。その後すぐに(プロジェクトで一緒にやりたいと)連絡しました。大西さんは「ぶっ飛んでる女性がいる」と大阪のライブハウスから教えてもらいました。奇抜なファッションで、音は間違いなく素晴らしい。そのギャップがすごいです。そうやってメンバーを集めていくと、とても個性的になりました。
プロジェクトは特にリーダーなどは決めていないので、1曲1曲をメンバーに選んでいただきました。各曲を選んだ人がリーダーとなってやりましたが、とてもパワフルな演奏になりました。演奏だけだと女性がやっている感じがしないと思います。折重さんは世界唯一のクラビオーラ(ドイツ製の鍵盤ハーモニカ。現在は生産されておらず非常に貴重な楽器)の奏者でもあるのですが、ボサノヴァをやってもらいました。
(折重)クラビオーラは複雑な音が特徴なのですが、これがボサノヴァには合うんです。その演奏空間を楽しんでもらえるよう、シンプルな演奏にしました。
(五十嵐)アルバムの「ガール・トーク」というタイトルは女性が楽器でおしゃべりしているような感じを意識しました。全員でザワザワと。イントロからいいお感じで、楽しさが出たと思います。皆さん、見た目も内容も追求するプロ集団。
女性にももっとジャズを身近に感じてほしいという思いがあります。もっとジャズを志す女性が増えてほしいと思っています。全国のガールズバンドの励みにもなりたいです。海外でもやりたいですし、ジャズ界に女性の風が吹いていることを知ってほしい。
(折重)ジャズを知らない人はまだまだ多いと思います。そういう人にも聴いてもらい、いい音楽だなと思ってほしい。女性が演奏しているとジャズに入りやすのではないかとも思います。自分自身を磨き、プロジェクトで集まるたびに進化していたいです。
(大西)ジャズは一般の人に入りにくい音楽だという認識がある。好き好んで聴く人はそう多くないと思います。この華やかなグループの音楽を聴いてジャズの入り口に立ち、一人でも多くの人にジャズを好きになってほしいです。