![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/142207268/rectangle_large_type_2_fcee1aac739f5bd4bb108761ab334df5.png?width=1200)
文化人物録57(大内孝夫)
大内孝夫(名古屋芸術大学教授、音楽教室マネジメント論など)
→メガバンク行員から武蔵野音大のキャリア推進担当職員に転身。音大生のキャリアや音楽教室の運営に関する著書などを多数発表し注目された。銀行で培った会計学や財務、経営学の知識を芸術文化にうまく落とし込んだ格好だが、こうした手法はこれまでにありそうでなく、大きな意味があった。個人的にも大変お世話になっている。著書に「「音大卒」は武器になる」「「ピアノ習ってます」は武器になる」「「音楽教室の経営」塾」など。
*音大生のキャリアについて(2017年、音大生のキャリアについて)
・武蔵野音大は元々就職する学生が15%ほどだったが、いまは30%くらいに増えている。あとは30%が大学院、教員が20%、残りが音楽家と音楽教室の先生という感じになる。かつてはこの音楽教室の先生が多かったのだが、少子化によって生徒が減り、教室が成り立たなくなる教室も多い。私は音楽教室をなんとか維持し、音楽人口を増やしたいと思っている。
・音大生が持つ力って本当にすごい。いろいろな分野で間違いなく通用する。ピアノなどに取り組む集中力は半端でなく、耳がいいので語学などにも集中して取り組める。音大自体志願者数が激減してますが、ぜひいろんな人に音大に来てほしい。音大に行くと演奏家、音楽家しか道がないと思っている人が多いが、決してそんなことはない。いろんな道があるんです。僕が武蔵野音大に来てからは、授業に「キャリアデザイン」という科目もつくった。1年生の時から自分の将来を考え、音大に行ってどうするかを考えてもらう狙いがある。
・音大生は入学当初、多くの人が音楽家志望です。それは当然です。しかし、必ずしも全員が音楽家になれるわけではない。夢を見ることも大事だが、現実も直視しないといけない。プロとして生きるための音楽家、演奏家だけでなく、ほかの仕事をしながら音楽活動を続ける人もたくさんいる。そうやって頑張っている人がいることが学生には伝わっていないようです。
・前は女性ならピアノ教室の先生をやってお金を稼ぎ、そして結婚して家庭に入るというパターンが多かったが、今はそういう時代ではない。時代の流れにふさわしい改革が音大でも必要です。音大には音楽家、音楽の先生、音楽教室、就職のような序列があったが、これらは順番でなく並列だ。意識改革が必要です。それぞれの道にふさわしい人材育成が必要になる。そのためには社会に通用する人材が不可欠。数学とか会計学の知識も必要になることがある。楽譜だって論理的にできているわけですから、英語や数学を学べば人間として強くなる。エリート演奏家であっても社会に通用する力は必ず必要になります。ホール運営、オーケストラ運営などアートマネジメントを学ぶことも非常に意義がある。
・僕がこのようなことをやっているからか、武蔵野音大では学生の意識も変わってきた。っまえは就職したら負け組のような印象だったが、そうではない。音大を出て商社や銀行に入る人もいます。就職率も高く、音大生の能力の高さが実証されています。僕は銀行員だったので、音大生が非常に訓練されていて能力が高いことがよくわかる。音楽はいろいろなところで役に立つ。つぶしがきかないというのは誤解だ。
・今や芸大生だって演奏家、音楽家になれるが人は一握り。だからエリート教育もいいが、キャリア教育も大変重要になる。大学も昔のようにエリートばかりではなく、大衆化している。エリートの養成と裾野を広げる動きと両極がある。だからキャリアデザインの意義を学んだ上で、安心して音楽を学んでほしい。