「USスチール買収」の混迷
バイデン氏は日鉄の買収を阻止した訳だが、その理由に合理性がないという指摘は一般的な理解だ。「経済安全保障上の問題」を上げているが根拠に何の説得力もない。半世紀以上の同盟国に対してこれを言いだすと話が余計に複雑になる。現在においても両者の合意書は生きている訳で法廷の場に移ろうとしている。
そもそもトランプ氏が選挙前にこの買収に反対したという理由だけで現在に至っている。日鉄が愛想を尽かして撤退した場合のUSスチールの製鉄所の閉鎖並びに多くの労働者の失業対策等について言い出しっぺのトランプ氏は全く言及していない。トランプ政権になって温情的対策を講じる方向性など、マスク氏が容認する筈はない。
アメリカ人の能天気の一部は、トランプ氏の発言に沸いているが、政界一のほら吹き大統領になる(ウクライナ戦は1日が半年になる)男の発言に、全く前後策を気にしない国民に呆れるしかない。野口氏は日鉄と米政府に対してそもそも論的に両者が「不合理」な立ち位置になっていると指摘しているが、私は日鉄の中国を念頭に置いた世界戦略は日鉄にとってそれなりに根拠があると思っている。
質と量の関係を野口氏は時代遅れな発想だと指摘しているが、そこは机上論と第一線のビジネス展開とは何かしらの違いはあるのは当然だと考える。一見、不合理だと見えたとしても、その先の先の展望は日鉄のビジョンであり、結果を確信した数字を保障するビジネスなど無い筈である。