各地に思いを馳せ
岡本綺堂
「青蛙堂鬼談」
「羊羹色の黒羽織などを着ているのではなく、なかなか立派な風をしてゐた」
なるほど羊羹色とは、黒の色褪せた冴えない色なのだ。
伝統色のいろは #羊羹色 #Youkan-iro #伝統色のいろは
集まった男女が、近しい人からの聞き伝えの話として順に語る不思議な記憶、体験。時代は江戸よりも古くから明治ごろまで。詳しい事情の一部は語られながら、ある細部は明かされず謎が残る。語り手や当事者たち自身にも全ては解明されていないのだから語りようもない。怪奇の中、そこに何ともいえないリアリティ、ものの道理、そして美しささえ感じる。
九州から越後まで、日本の各地に思いを馳せて。中国の話もありました。
中公文庫の、山本タカトさんの口絵も味わい深く、幽玄な笛の音が聞こえてくるよう。