#3 私のワイヤレスイヤホン物語

ワイヤレスイヤホンというものを、ご存じだろうか。
イヤホンというのは、耳にはまるサイズの小さなスピーカーを内蔵し、
スマホ等のポータブルプレイヤーを使って音声を聴くときに使う。
近年はケーブルで信号を送るのではなく、
Bluetoothで信号を送るワイヤレスタイプが一般的になっている。

昨年の年末から今年の年始にかけて、新型コロナに感染して倒れていた。
その為初詣も初売りも行けず、帰省していたのに家族ともほぼ話さなかった。
何ともおめでたくない年明けを迎えたので、完治して外出規制が解除されたその日に、
気晴らしにでもと近所のヤマダ電機へ、自分への快気祝いにご褒美を買いに行った。
その時ちょうど新しいワイヤレスイヤホンが欲しかったので、
奮発して3万くらいのSONYのいいイヤホンを購入した。

SONYのいいイヤホン

この時までに使っていたのは、コンビニで買った3,000円くらいの安いイヤホンだったが、
首にかけて使うタイプで、そこそこ重宝していた。
しかし、大通りを徒歩で通勤していると、車が通る音で音量MAXにしても音が聞こえづらかった。
電車の中でも、トンネルに入ると外の音で全然聞こえなくなる。
なので、ノイズキャンセリング機能が付いた、いいイヤホンが欲しいというのは、
かねがね思っていたのだ。

首にかけるタイプのワイヤレスイヤホン

購入した翌日、電車で翌日自宅へ戻ることになっていたので、
早速実家の最寄り駅のホームで新しいイヤホンをつけてみた。
求めていたノイズキャンセリングも問題なさそうだった。

第一の悲劇

しかし、第一の悲劇が起こってしまった。
これまでは首の後ろでケーブルがつながっているタイプのワイヤレスイヤホンを使っていたので、
耳から外れかけても、イヤホンが地面に落ちることは無かった。
この感覚に慣れていたため、今回新調した完全独立タイプのイヤホンが
耳から外れそうになっても、手で抑えることを頭に入れていなかった。

その瞬間…耳からイヤホンがポロッ…
イヤホンがホームを転々と転がり、ホームの線路上へ落ちてしまった。
買った翌日に、だ。使い始めて3分後にはホームの下だ。
急いで駅員事務所へ走り、
「すみません!ホーム下にワイヤレスイヤホン落としました!」
電車が来るまであと10分くらいあったので、
何とか無事、救出してもらえたのだ。
その時の駅員さんに心の底から感謝したとともに、
自分の情けなさにあきれてしまった。

第二の悲劇

悲劇は終わらなかった。
ある大雨の日。
普段は徒歩で通勤しているのだが、大雨すぎてこの日は地下鉄で行くことにした。
朝出る時間もギリギリで、走って地下鉄の駅まで行き、
何とか乗りたかった電車に乗ることができた。
ドア横のスペースに立ち、いつものようにイヤホンを装着した。
そして、マスクを着けようと耳に手をかけた。

その瞬間…耳からイヤホンがポロッ…
ワンバウンドして電車とホームの間にストンと落ちてしまった。
急いで電車を降り、上階の駅員事務所へ駆け込み、
「すみません!ホーム下にワイヤレスイヤホン落としました!」
この言葉を人生で2度も言うとは思ってもいなかった。

前回同様、駅員さんがマジックハンドを持って、現場まで行き、
次発の電車が行くのを待ってから目視で探してもらった。
しかし見当たらない。
ホームの下には側溝があり、ドブ川が流れている。
「もしかしたら、側溝に落ちたかもしれませんね…。」と駅員。
会社にも「イヤホン落としたので遅れます。」と遅刻の連絡をし、
2,3本電車を見送りながら探してもらったのだが、結局見つからなかった。

「じゃあ次の電車までに見つからなかったら、あきらめましょうか。」と駅員からの提案。
無いものは探しても仕方がないので、結局諦めることに。
購入から3か月の出来事であった。
このイヤホンとは、ここでサヨナラすることになったのだった。
3万を失ったのはデカすぎる。

第三の悲劇

悲劇は終わらない。
それ以降、再度昔のつながっているタイプのイヤホンを使い始めた。
やはりSONYの3万のイヤホンに慣れてしまったので、露骨に違いが分かる。
それでも、徒歩+電車の通勤時間を充実させるために、
普段音声コンテンツを摂取する習慣がついてしまったので、
妥協してこの格安イヤホンを使っていた。

ある日、夜行バスに乗る機会があった。
夜行バスの中では、バスが暗くなるとスマホは開けないので、
いつもの通り音声コンテンツを摂取しながら寝落ちしようと考えていた。
その計画はうまくいき、気づいたらイヤホンが取れた状態で目を覚ました。
またイヤホンを装着しようと思い、イヤホンを手に取った。

しかし、手に取ったイヤホンから、イヤーピースが無くなっていたのだ。
きっとイヤホンが外れた後、体の下敷きになってうまいこと外れたのだろう。
4列シートの夜行バスだったので、寝ている隣の人を起こさないレベルで探したのだが、
結局見当たらなかった。
しかもバスの終点で降りず、途中駅で降りることになったので、
ゆっくり探すタイミングもなく、このイヤーピースも諦めることに。

とことんイヤホンにはついていない。

第四の悲劇と神隠し

この話には続きがある。
それから約2か月。ずっと聞いていた音声コンテンツもだいぶ溜まってきたので、
そろそろ新しいワイヤレスイヤホン買うか、と思い、
今回もケーブルがつながっているタイプのワイヤレスイヤホンを購入した。
5,000円くらいの比較的安いイヤホンで妥協したが。

ある日、通勤中にふとスーツのポケットを触った。
なんかゴミ(のようなもの)が入ってる感覚があった。
恐る恐る取り出してみると、なんと無くしたと思ったイヤーピースだったのだ!
ただ、夜行バスに乗った日は休日で、スーツは着ていなかったので、
どうしてスーツのポケットに入っていたのか、今でもわからない。
きっとあのバスからスーツのポケットに瞬間移動していたのだろう。
(そうとしか考えられない。)

今は結局、新しく買った妥協イヤホンを使っている。
なぜか私のイヤホン事情にはトラブルが事欠かないのだが、
どうすれば安心してワイヤレスイヤホンライフを送ることができるのか、
私に一生付き添ってくれるイヤホンは現れるのか。

私の伴侶(イヤホン)探しは、まだ終わらない―――。


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