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【EmpowerHER】スタートアップのジェンダーギャップ解消に向けて

今回のIVS2024 KYOTO/IVS Crypto2024 KYOTOの大きな特徴のひとつが、起業家や投資家を取り巻く環境のジェンダーギャップ解消に向けた取り組みです。

具体的には、以下のような目標や施策が盛り込まれていました。
・女性参加者の比率30%以上をめざす
・セッション登壇者が3人以上の場合、1人以上は女性とする
・女性起業家を応援するセッションに特化した「EmpowerHER Lounge」を設置
・託児サービスを手がけるジョサンシーズによる託児所を設置

本記事では、このような取り組みの背景や当日のセッションレポート、関係者の声などを基にジェンダーギャップ解消に向けた展望を探っていきます。


EmpowerHERが生まれた背景

昨年、招待制を廃止し、その前年を大幅に上回る1万人の参加者を集めたIVS。次なる目標は、より精度の高いマッチング機会の提供と、より公正かつ包括的なカンファレンスを実現するため登壇者の多様性を確保することでした。

そして、女性が少なく多様性に乏しいと言われてきた起業家や投資家の現状を変えることで、さらなるスタートアップ・エコシステムの発展につなげることをめざしてきました。この“ジェンダーの壁”を超えることも、2024年のテーマである「Cross the Boundaries」につながる大切な理念です。


EmpowerHER Loungeでのセッション一覧

DAY1
①ダイバーシティ時代の企業発信とは powered by NewsPicks forWE
②スタートアップのグロースフェーズを再考する powered by NewsPicks forWE
③ガラスの天井を打ち砕くWOMEN IN TECH
④ジェンダーによる創業者の資金調達ギャップを埋めるためには powered by Women In Tech
⑤女性起業家とスタートアップ:テクノロジーとジェンダーの未来

DAY2
①キャリアもファミリーも諦めない。「佐俣家の秘密」オフライントーク
②世界を6兆ドル豊かにしうる女性起業家。多くの女性起業家が活躍する世界を作るために

DAY3
①テクノロジー業界のジェンダーギャップがもたらす影響とこれからの未来に向けて
②女性の意思決定者・決裁者はどうしたら増えるか? 〜多様性を後押しする仕組みづくりに迫る〜
③ピッチイベント・アクセラ選考におけるDEIの重要性
④地域から日本、世界の課題解決に挑む女性起業家に聞く!地方発の強みと活かし方とは?
⑤Z世代の女性が歩む多様なスタートアップキャリア

注目のセッションPick Up

ダイバーシティ時代の企業発信とは(DAY1)

この5年ほどで、企業の発信方法にも多様性を意識した変化が見られるようになりました。プレスリリース画像は、経営層が並んでいる同属性の強い写真から、ニュートラルかつ事業領域に関わる写真を選ぶ企業が増え、内容もより誠実で自社に不利なことも真摯に応える傾向に。

このような背景から、企業が発信時に重視すべきポイントとして以下のような項目が挙げられました。

どのメディアを選択するか
戦略(目的/伝えたいストーリー)によって、どの戦術(動画/SNS/テキストツール/音声コンテンツ)を選ぶかが大事。パッと見でわかりやすいコンテンツならSNS、じっくりと理解してほしいものなら音声や動画コンテンツ。目的によってツールを使いこなすことがより多くの人にリーチするポイント。

ストーリーに穴をつくると人を惹きつける
完全で完璧なストーリーや人間に人は惹かれない。「穴をつくる」というのは「誰かに助けてもらう隙間」をつくることで、「今はめざしたい頂上に対して5合目あたりにいて、あれもこれも必要」というようなストーリーのこと。読み手に共感や考える隙間を与えることによって、当事者として考えてもらえる。読み手は多様な受け取り方をするので、プレスリリースの草案を作ったら周りの人に感想を聞き、ブラッシュアップしていくのがおすすめ。

炎上リスクとの向き合い方
今は企業側が炎上リスクを気にしすぎる傾向もあるので、必要以上に気にしないことも大切。一方、特にスタートアップは社員の発信力も大事になってくると思うので、事前のSNS教育や「何のために発信するのか」の共通認識を持つことも重要。

これらの議論を踏まえ、ダイバーシティ時代の企業発信のあり方として、属性の違う人に事前に草案への意見をもらうことの重要性が指摘されました。その一方で、ダイバーシティを気にして守りに入りすぎたリリースは誰にも届かないため、「自分らしさ」を出すことの大切さにも言及されました。自分たちのスタンスを守りつつも、発展途上であることを誠実に伝えつつ、挑戦する姿を発信できるかどうかが鍵になりそうです。

▼登壇者
川口 あい NewsPicks Studios / NewsPicks for WE editor in chief
中澤 理香 newmo PR / Public Policy
鈴木 聡子 for Startups Communication Design Officer
野村 高文 Podcast Studio Chronicle CEO / Producer

キャリアもファミリーも諦めない。「佐俣家の秘密」オフライントーク(DAY2)

先日、Forbesの記事で話題になった佐俣アンリ・奈緒子夫妻が登壇。「キャリアも育児も諦めない」と夫婦で決めて歩んできた2人が、その様子をメディアに公開したことで多くの声が寄せられました。

下の世代の起業家からは「勇気が持てた」、逆に上の世代からは「これまで裏ですごく大変な思いをしながら両立してきた。それを表に出せなかった」などの声。未婚の方からは「子どもを持つことと起業は両立できるんですね!」と喜びの声も届いたそうです。

続いて、キャリアと育児を両立するために佐俣家が大切にしていた3つのポイントが紹介されました。

①シンガポール流を貫く
「自分たちだけでなんとかしようとせず、子どもの数だけシッターを雇う」「片方の役員報酬は全額子どものために使う」などを決めると、心が削られないそう。シッターのコストは一時的なものですが、キャリアは一度止めると元に戻れない可能性も。だから、キャリアを止めずに育児に投資することは合理的なのです。

②家族を拡張させる
子どもが成長して人見知り期が来る前に、シッターさんに“親”のようになってもらう。そんな工夫も大切です。

③プロジェクト化する
家を会社、家族をチームと捉えてマネジメントし、シッターさんもチームの一員として役割分担をしています。新しく子どもが生まれたら、新しい“事業部”としてシッターさんに来てもらいました。

そして最近では子どもも成長し、「幼児期(シード期)から小学校(シリーズA)に入り、マネジメント手法も変わってきたね」と楽しんでいます。定期的に夫婦二人で飲みに行く「1on1」も大切です!

▼登壇者
佐俣 アンリ ANRI General Partner & Co-Founder
宮本 恵理子 Editor/Writer/Interviewer
佐俣 奈緒子 STORES Director

女性の意思決定者・決裁者はどうしたら増えるか?(DAY3)

「企業内の女性管理職比率が、北欧の43%に対して日本は13.9%」「国内VCの女性比率は15.6%」など、まずは国内の現状の紹介からセッションがスタート。続いて「似たようなバックグラウンドを持つ人や、同じようなテーマに投資しがちになる」など、女性意思決定者や決裁者が少ないことで生まれるデメリットについて意見が交わされました。

多様性を後押しするための仕組み作りとして、男性の意思決定者も積極的に巻き込んでいくことや、CXOのマッチング創出、女性たち自身がそれまで染まってきた固定観念を捨て、自分でブレーキをかけてしまうマインドを変えることなどが提唱されました。

参加者からは「VCでインターンをしているが、VC側から女性起業家を支援するには?」「地方で女性がもっと活躍するには?」などと熱心に質問が飛んでいました。

▼登壇者
堀江 敦子 Sourire CEO
丹下 恵里 mento COO
松本 美鈴 Incubate Fund Associate
田中 美和 Waris Co-Founder and Co-CEO

参加者の声

ゲストの声

「女性の支援をマイノリティだけでやるのではなく、男女の対立構造にするのでもなく、『多様性の中でどのように生かしていくか』という言葉が響きました。また、登壇者のエネルギーに圧倒されました!」

「わが家もワーキングペアレンツで二人の子どもがいます。女性活躍は女性だけの問題ではなく、キャリアと育児の両立にはパートナーの理解も必要です。セッションを聞いてる方には男性も多く、そこが個人的にとてもうれしかったです!」

「京都で個人事業主をしているのですが、私も起業に興味がありました。地方で起業するのは難しさもあると思いますが、実際にビジネスを大きく動かしている登壇者を見て勇気をもらいました」

登壇者の声

「印象的だったのは、女性はもちろん多数の男性が聴きにきてくれたこと。女性活躍は女性だけが活躍する話ではなく、女性を通して誰もが活躍できる社会をつくるということ。 IVSでこのセッションができて本当に良かったです」
(DAY3「女性の意思決定者・決裁者はどうしたら増えるか?」でモデレーターを務めた株式会社Waris共同代表・田中美和様)


総括と今後への期待

近年、多様性と包括性が経済成長の原動力となるという認識が広まっています。 しかし、女性起業家の発展と支援には、 これをやったからすぐにジェンダーギャップが解消される!といった魔法のような方法はなく、 多面的で持続的なアプローチが不可欠です。

IVSの強みである ネットワーキング機会の拡大により、 女性起業家が投資家や他の起業家と出会い、ビジネスチャンスを広げられるようにする必要があります。

公平性の確保や社会全体での意識改革など、どれもこれも一朝一夕にはいかないことばかりですが、今後も女性起業家の増加がスタートアップ・エコシステム全体の発展につながるという認識を広め、多様性がイノベーションを促進するという事実を強調しながら、女性の積極的な参画を推進していく。IVSのこの取り組みが、文字通り次世代への起爆剤となることを願っています。


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