
noteで補足2:示していることの続き
他のサイトで大学で扱われる内容についての記事を投稿していまして、長くなったので、こちらに補足を述べることにします。
本当に例となっているのかを確認
三元体 $${F}$$ 上の $${3}$$ 次の上三角行列で、対角成分がすべて $${1}$$ となっているもの全体を $${G}$$ とします。
三元体 $${F}$$ の乗法単位元 $${1}$$ を使った特徴的な $${3}$$ 次の正方行列を利用します。
$${E_{i,\,j}}$$ を $${(i,\, j)}$$ 成分が $${1}$$ で、他の成分がすべて $${0}$$ となっている 3 次正方行列とします。
$${A\in G}$$ とすると、$${A}$$ は対角成分がすべて $${1}$$ の上三角行列なので、ある $${a,\, b,\, c}$$ という $${F}$$ の元を用いて、単位行列と行列単位を用いて、次のように表すことができます。
$${A = E+aE_{12}+bE_{13}+cE_{23}}$$ です。
また、行列の乗法で $${G}$$ が閉じていることが分かります。
行列式の性質とも合わせて、$${G}$$ は非可換な群です。
$${F}$$ の元を成分としていることから、
$${|G| = 3^3 = 27}$$ となっています。
ここからは、位数 $${27}$$の非可換な群 $${G}$$ が、冪零であることの証明を目指します。
特徴的な行列を利用する
$${A\in G}$$ に対して、$${E-A}$$ が対角成分がすべて $${0}$$ である $${3}$$ 次の上三角行列であることを利用します。
まず、$${E-A}$$ がベキ零行列であることを示します。
※ ベキ零行列は、ある自然数 $${n}$$ が存在して、$${n}$$ 乗すると零行列となる行列のことです。
$${E-A}$$ が対角成分がすべて $${0}$$ である $${3}$$ 次の上三角行列なので、次のように、行列単位の $${F}$$ 上の一次結合で表すことができます。
ある $${a,\, b,\, c\in F}$$ が存在して、
$${aE_{12}+bE_{13}+cE_{23}}$$
$${= E-A}$$ となります。
そのため、
$${(E-A)^2 =}$$
$${(aE_{12}+bE_{13}+cE_{23})^2}$$ です。
それぞれの行列単位の積を考えたときに、零行列 $${O}$$ となっている部分を消すと、次のようになります。
$${(aE_{12}+bE_{13}+cE_{23})^2}$$
$${= acE_{12}E_{23} = acE_{13}}$$ です。
すなわち、
$${(E-A)^2 = acE_{13}}$$ です。
このことから、
$${(E-A)^3 =}$$
$${(aE_{12}+bE_{13}+cE_{23})(acE_{13})}$$
$${= O}$$ となります。
$${E-A}$$ は、$${3}$$ 乗すると零行列になるというベキ零行列ということが分かりました。
$${E-A}$$ は、上三角行列ですが、対角成分の値が $${1}$$ でないため、$${G}$$ の元ではありません。
しかし、$${E-A}$$ というベキ零行列を利用することで、$${A^{-1}}$$ を計算することができます。
キャラクター3の体上で考察
$${A∈G}$$ に対して、$${E-A}$$ は $${3}$$ 乗すると零行列となりました。
さらに、$${E}$$ と $${-A}$$ が行列の乗法について可換であることから、高校生のときに学習した 三乗の公式が使えます。
$${O = (E-A)^3}$$
$${= E-3A+3A^2-A^3}$$ です。
今、三元体 $${F}$$ 上で考えていて、$${F}$$ の標数は $${3}$$ です。
つまり、$${3 = 0\in F}$$ という状況です。
$${3A}$$ や $${3A^2}$$ のスカラー倍の部分が $${F}$$ の $${0}$$ なので、
$${O = E-A^3}$$ となっています。
よって、
$${A(A^2) = E}$$ です。
群の逆元の一意性から、
$${A^{-1} = A^2}$$ ということが分かりました。
これで、$${G}$$ の任意の元について、逆行列を乗法を用いて表せました。
正規部分群かどうかの確認がしやすくなります。
さらに部分群についての考察をします。
$${N = \{E+xE_{13} | x\in F\}}$$ という $${G}$$ の部分集合を考えます。
$${N}$$ は、$${(1, 2)}$$成分と $${(2, 3)}$$成分が $${0}$$ となっている $${G}$$ の行列をすべて集めたものです。
$${N}$$ の元は、対角成分がすべて $${1}$$ の上三角行列なので、$${G}$$ に含まれています。
ここで、$${N}$$ が $${G}$$ の部分群となっていることを示します。
$${x,\, y\in F}$$ とすると、
$${(E+xE_{13})(E+yE_{13})}$$
$${= E+(x+y)E_{13}+(E_{13})^2}$$
$${= E+(x+y+1)E_{13}\in N}$$
これで、$${N}$$ が行列の乗法で閉じていることが分かりました。
$${E = E+0E_{13}\in N}$$ となっています。
そして、$${A\in N}$$ について、$${A\in G}$$ だから、
$${A^{-1} = A^2\in N}$$ です。
これで、$${N}$$ が $${G}$$ の部分群であることを示せました。
また、
$${(E+xE_{13})(E+yE_{13})}$$
$${= E+(x+y+1)E_{13}}$$
$${= E+(y+x+1)E_{13}}$$
$${= (E+yE_{13})(E+xE_{13})}$$ なので、
$${N}$$ 自身は可換群です。
次に $${N = \{E+xE_{13} | x\in F\}}$$ が $${G}$$ の正規部分群であることを確認します。
$${T \in N,\, A\in G}$$ を任意に取ります。
すると、ある$${ x, \,a, \,b, \,c\in F}$$ が存在し、
$${T,\, A}$$ はそれぞれ、
$${E+xE13,}$$
$${E+aE_{12}+bE_{13}+cE_{23}}$$ と表されます。
さらに、$${A^{-1} = A^2}$$ を計算します。
分配律で括弧を外して整理します。
$${(E+aE_{12}+bE_{13}+cE_{23})^2 =}$$
$${E+2aE_{12}+(2b+ac)E_{13}+2cE_{23}}$$
ここで、★ $${= 2b+ac}$$ と置きます。
すると、
$${TA^{-1} = TA^2 =}$$
$${(E+xE_{13})(E+2aE_{12}\,+}$$★$${E_{13}+2cE_{23})}$$
= $${E+2aE_{12}+(}$$★$${\,+x)E_{13}+2cE_{23}}$$
ここで、★$${+x}$$ を ◇ と置きます。
$${E+2aE_{12}\,+}$$◇$${E_{13}+2cE_{13}}$$ に左から $${A}$$ を掛けると、
$${ATA^{-1}}$$ となります。
$${ATA^{-1} = ATA^2}$$ は、
$${(E+aE_{12}+bE_{13}+cE_{23})}$$ と
$${(E+2aE_{12}+}$$◇$${E_{13}+2cE_{13})}$$ の積です。
計算結果の $${E_{13}}$$ のスカラー倍の部分を ◆ と置くことにします。
すると、$${F}$$ の標数が $${3}$$ より、
$${ATA^{-1} =}$$
$${E+3aE_{12}+}$$◆$${E_{13}+3cE_{23}}$$
$${= E\,+}$$◆$${E_{13}\in N}$$ です。
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中心列の定義を満たすためには、
$${G/N \subset Z(G/N),}$$
$${N/{e} \subset Z(G/\{e\})}$$ を確かめます。
もう少しで完了します
$${Z(G/N), Z(N/\{e\})}$$ は、それぞれの剰余群の中心です。
二つ目について、
$${G/\{e\}}$$ は $${G}$$ と同型なので、
$${N \subset Z(G)}$$ ということを示します。
$${T\in N, A\in G}$$ について、
$${T = E+xE_{13},}$$
$${A = E+aE_{12}+bE_{13}+cE_{23}}$$ と $${F}$$ 上の一次結合で表します。
すると、
$${TA =}$$
$${E+aE_{12}+(b+x)E_{13}+cE_{23}}$$
$${=E+aE_{12}+(x+b)E_{13}+cE_{23}}$$
$${= AT}$$ です。
そのため、$${T\in Z(G)}$$ です。
群として同型なので、
$${N/\{e\} \subset Z(G/\{e\})}$$ です。
$${G/N \subset Z(G/N)}$$ を示そうとするときに、$${N}$$ を法とした剰余類について、等しいのか等しくないのかを議論します。
$${N = \{E+xE_{13} |\ x\in F\}}$$ と表してきましたが、乗法群についての剰余群について議論をするので、+ の記号に注意です。
そこで、$${N}$$ は、$${(1, 2)}$$成分と $${(2, 3)}$$成分が $${0}$$ となっている $${G}$$ の行列をすべて集めたものだったということを拠り所として議論を進めます。
剰余群 $${G/N}$$ において、次のような等しい関係が成立します。
任意の $${A\in G}$$ と任意の $${x\in F}$$ について、$${G}$$ と $${N}$$ の単位元 $${E}$$ を用いて、
$${AN = (AN)(EN)}$$
$${= (AN)((E+0E_{13})N)}$$
$${= (AN)((E+xE_{13})N)}$$ となっています。
$${N}$$ を法として合同の記号を使って表すと、
$${A \equiv E \equiv E+xE_{13} \ (mod\ N)}$$ となっています。
このことを踏まえ、
$${x, a, b, c, p, q, r}$$ という $${F}$$ の元を使い、行列の計算を $${N}$$ を法として進めます。
$${A, B\in G}$$ を、それぞれ
$${A=E+aE_{12}+bE_{13}+cE_{23},}$$
$${B=E+pE_{12}+qE_{13}+rE_{23}}$$ とし、
$${AB \equiv BA \ (mod\ N)}$$ を示します。
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これで、
$${AB \equiv BA\ (mod\ N)}$$ が示せました。
$${N}$$ を法として考えている状況では、同値類が一致しているということです。
以上より、剰余群 $${G/N}$$ が可換群ということを示したので、
$${G/N \subset Z(G/N)}$$ となっています。
そのため、
$${G \supset N \supset \{e\}}$$ は $${G}$$ の中心列ということが分かり、G は中心列をもつため、冪零です。
冪零群だけれども、可換ではないものが存在するということが分かりました。
高校内容の記事も投稿していまして、よろしければご覧ください。
では、失礼します。