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ITサービスマネジメントの価値創出戦略
今回のテーマは、当社のコア領域であるITサービスマネジメント(以下、ITSM)領域における重要課題の一つである、価値創出です。
ITSMのベストプラクティスであるITIL4(こちらの記事参照)では、顧客との価値の共創が前面に押し出されています。
しかしながら、価値創出の戦略については、十分なガイダンスが提供されておらず、具体的にどうすべきかに悩む方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、弊社で考案した「価値の出しどころ」を検討するためのフレームワーク「サービスマネジメント価値創出マトリクス」をご紹介します。
背景:高まるITSM組織への期待
デジタルトランスフォーメーション(DX)は、もはや選択肢ではなく、企業が生き残るための必須条件となりました。テクノロジーの進化は急速で、近年では生成AIのような、従来の想像を超えた新しい技術も登場しています。
こうした変化は、ITSM組織に対して、これまで以上に多くの要求を突きつけています。(以下は例)
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戦略オプションの必要性
このような要求の高まりは、継続的なコスト削減や人材不足に直面しているITSM組織にとって、さらなる重荷となっています。
現状のままでは厳しい状況に陥ることは容易に想像できますが、ITSM組織に潤沢なリソースがあるわけではないため、総花的に変革を進めるのではなく、注力する領域を明確にして変革していくこと(=戦略オプション)が求められます。
サービスマネジメント価値創出マトリクスとは
注力する領域を明確にするために、まずは「価値の出しどころ」を定めることが重要です。そのフレームワークとして、「サービスマネジメント価値創出マトリクス」を提案します。
このマトリクスは、企業の成長戦略を検討する「アンゾフの成長マトリクス」を応用したもので、IT運用に従事するITSM組織が、価値を創出する戦略を検討するために利用できます。
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サービスマネジメント価値創出マトリクスは、「ターゲット組織」と「ケイパビリティ」の2つの軸から成り立っており、ITSM組織が、どの組織(市場)に向けて、どのようなケイパビリティ(商品)を提供していくかという戦略オプションを、マトリクスの4つの象限をもとに検討することができます。
なお、ここでは、ITSM組織がIT運用業務に従事している(=既存×既存の象限)ことを前提としており、ITSM組織が次の第一歩をどこに踏み出すかを検討することができます。
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戦略オプションの概要
サービスマネジメント価値創出マトリクスの各象限の戦略オプションの概要を以下にまとめます。
1.深化(IT組織内×運用ケイパビリティ)
既存のIT運用領域を、先進的なテクノロジーやプラクティスを用いて高度化する戦略オプションです。
既存の領域の変革となるため、着手しやすく、効果も期待しやすいオプションですが、どうしても「内向き」の変革になってしまうため、提供価値がマネジメントの期待に合致しているかには注意を払うことが必要です。
キーワードとしてはSRE、XLA™、Observability、AIOps、BPMなどが挙げられます。
2.展開(IT組織外×既存ケイパビリティ)
IT運用領域で培ったケイパビリティやサービスを、IT以外の組織にも適用する戦略オプションです。サービスマネジメントのプロセスとツールセットを用いて、人事、総務などのバックオフィス部門の業務改革を推進するもので、エンタープライズ・サービスマネジメント(ESM)とも呼ばれています。
キーワードとしては、SIAM™、KCS、ローコード開発、AIOps、サービスカタログ(ポータル)などが挙げられます。
3.統合(IT組織内×運用以外のケイパビリティ)
開発と運用のプロセスを統合し、IT組織が提供する価値の流れを最適化する戦略オプションです。ITSM組織と開発組織に伝統的に存在する壁を取り払い、事業がITに求めるスピードや品質を実現します。
キーワードとしては、DevOps、IaC、CI/CD、VSM、コンテナオーケストレーションなどが挙げられます。
4.越境(IT組織外×運用以外のケイパビリティ)
テクノロジー知見と培ったケイパビリティを武器に、企業全体のDXを推進する戦略オプションです。ITSM組織にとってこのオプションは既存のケイパビリティをそのままは生かせないため「応用問題」になりますが、DXプロジェクトが対象とするあらゆるサービスにはマネジメントの仕組みが不可欠であり、ITSMが貢献できる領域は多くあります。
まとめ
ITSM組織を取り巻く環境は、大きな変化の波にさらされています。
この変化に対応し、組織としての価値を最大化するためには、戦略オプションを検討し、どこで価値を創出するかを明確にし、優先順位をつけて変革を進めていくことが求められます。
「サービスマネジメント価値創出マトリクス」を参考に、次の戦略オプションを特定し、変革の道筋を描いてみてはいかがでしょうか?
おわりに
いかがでしたか?
当社では、ITSM組織に対して、今回のテーマである価値創出戦略を含む、コンサルティングサービスを提供しています。アドバイザリーやコンサルティングなど、皆様の組織の状況に合わせて最適なご提案が可能です。
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