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ITIL4の補完書籍紹介「Acquiring and Managing Cloud Services(クラウドサービスの調達と管理)」

今回は、ITサービスマネジメントのベストプラクティス・ガイダンスである「ITIL4」の補完書籍である「Acquiring and Managing Cloud Services」をご紹介します。
(すでにご紹介したITIL4書籍に関する記事はこちらからお読みいただけます。)

現在は英語版のみ提供されています。先行して英語版書籍を読了した当社のコンサルタントが所感を交えて、内容をお伝えします。

「Acquiring and Managing Cloud Services」とは?

ITIL4の補完書籍(ITIL Extension modules)は2冊あり、そのうちの1冊が今回の「Acquiring and Managing Cloud Services」です。コア書籍とは異なる立ち位置の書籍となっています。(下図左)

コンテンツをざっくりご紹介

1.背景と目的

この20年で、クラウドは世界を大きく変えました。それに伴って、クラウドに対する企業側の捉え方、活用の仕方も変わってきました。クラウドサービスが前提としているものはシンプルですが、クラウドを管理するのは決して簡単な作業ではありません。

一方で、クラウドに関する出版物の多くは、サービスプロバイダの視点で書かれており、大半が技術に焦点を当てたもので、これらの技術をサービスマネジメントや運用のベストプラクティスの中でどのように使用すべきかというガイダンスは提供されていない、という課題がありました。

本書籍は、急速に変化する世界において、組織が価値を生み出す存在であり続けるために、全体的な戦略の一環としてクラウドサービスを調達し、管理することを目的としています。対象としているのは「クラウドサービス利用者=顧客側」です。

2.Acquiring and Managing Cloud Servicesの章立て

章立ては以下のとおりです。
全部で240ページほどのボリュームがありますが、相応のコンテンツが含まれています。補完書籍ですので、コア書籍と関連する内容も多いです。

3.Acquiring and Managing Cloud Servicesに含まれる内容

ITIL4コア書籍「Drive Stakeholder Value」(DSV)で定義されている「カスタマージャーニー」のステップに沿ってクラウドサービスの調達と管理の具体的なプラクティスが紹介されています(DSVについて詳しくはこちら)。
最初から順に従う形の硬直的なステップではなく、あらゆる組織がそれぞれのステージに応じて活用できるように設計されています。
また、クラウドサービスの定義や、クラウドに関する業界のプラクティスも含まれています。

キーワード:
本書に登場する主なキーワードは以下の通りです。

  •  Digital Transformation

  •  The shared responsibility model

  •  Cloud strategy

  •  Cloud readiness assessment

  •  The value co-creation map

  •  Cloud service provider(CSP)

  •  CSP partner

  •  Cloud service agreement

クラウドサービスのカスタマージャーニー

本書籍で紹介されている「カスタマージャーニー」は内容がより具体的で、この一枚の図で書籍の概要が理解できるものになっています。
ITIL4全体を通してのテーマ「価値共創」がここでもベースとなっています。

書籍内で明示的に言及されているITIL4プラクティス

補完書籍である本書にはITIL4プラクティスが多く言及されています。
以下は明示的に言及があるものです。
・Incident management
・Problem management
・Knowledge management
・Strategy management
・Portfolio management
・Service Level management
・Organizational change management
・Monitoring and event management
・Change enablement
・Availability management
・Capacity and performance management
・Architecture management
・Continuity management
・Service financial management
・Supplier management
・Risk management
・Information security management
・Continual improvement

IVEコンサルタントの所感

当社コンサルタントの所感をいくつかのポイントにまとめました。

1.顧客側でクラウドサービスを調達、利用する管理者、実務者向けの書籍である
顧客組織がCSP(クラウドサービスプロバイダ)やCSPパートナー(SIer)をどのように活用してクラウドで価値を生み出すかという観点でまとめられています。
「ベンダ中立」の立場で書かれているためプロバイダ側からすると従来は顧客側に見せなかった部分が明らかにされているなど、「ネタばれ」要素があるかもしれません。しかしベンダと顧客双方で認識のすり合わせをすることによって、契約後のトラブルは予防できますので、決して悪い事ではないでしょう。

2.コア書籍と比べ具体的なプラクティスやサンプルが多く含まれ、有用性が高い
ITIL4は全体として内容が概念的ですが、本書籍は平易な文章を用いた具体的な内容が多く理解しやすいと思います。クラウド戦略におけるクラウド移行のパターン、サービス選定時のベンダへの質問票など、たたき台としてすぐ使えるコンテンツも数多く含まれています。

3.ITIL4の内容及びITIL4プラクティスとの連携が取られている
後発の書籍として、すでに出版されている書籍との整合性を意識して作られていますので、ITIL全般を理解した上で読んでいただくとより有用性は高まります。一般的にも十分良い内容ですので、ITILに触れたことのない方でもベストプラクティスとして使いやすくおすすめです。

4.この一冊でクラウドサービス利用者として必要十分な情報は得られる
クラウドサービスが世に広まったピークの時期からしばらく経っていることもあり、できること・できないこと・リスク等「冷静に」クラウドを捉えていると言えます。クラウドサービスの調達と管理に関わる要素の包括的な理解に役立ちますので、自社でクラウドを管理している立ち位置の方にはぜひ読んでいただきたいです。

おわりに

ITIL4コア書籍に続いて、補完書籍となる「Acquiring and Managing Cloud Services」をご紹介しました。具体的で、実務者が使いやすい内容になっていると思います。ぜひ手に取ってみてください。

当社IVEでは日々のコンサルティング活用の中でITIL4の適用もすでに始めています。当社のサービスについてのお問い合わせ、提案依頼、協業のご相談等がございましたら、下記からお問い合わせください。

お問い合わせ先:https://iv-experts.co.jp/contact/
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以上

※本文中に記載されているフレームワーク、ベストプラクティス等に関する商標の情報はこちらをご参照ください。


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