ITIL4のコア書籍紹介③「Drive Stakeholder Value(利害関係者の価値を主導)」(DSV)
今回は、ITサービスマネジメントのベストプラクティス・ガイダンスである「ITIL4」のコア書籍紹介第三弾「Drive Stakeholder Value(利害関係者の価値を主導)」(DSV)です。
(すでにご紹介したITIL4書籍に関する記事はこちらからお読みいただけます。)
当社IVEのコンサルタントの所感も交えて、内容をお伝えます。
ITIL4 Drive Stakeholder Value(利害関係者の価値を主導)とは?
ITサービスマネジメント領域で最も採用されているベスト・プラクティス・フレームワークであるITIL4のコア書籍のうち、「Create, Deliver & Support(作成、提供およびサポート)」(CDS)に続いて出版された3つの書籍の一つが「Drive Stakeholder Value(利害関係者の価値を主導)」(以下、DSV)です。(同時期に出版された「Direct, Plan and Improve(方向付け、計画および改善)」(DPI)と「High Velocity IT(ハイベロシティIT)」(HVIT)については今後ご紹介していきます。)
DSVはITIL4の資格体系の二つのトラックのうち、マネージングプロフェッショナルのモジュールの一つに位置付けられています。(下記資格体系図参照)
日本語版書籍および日本語での研修コースが提供されています。(ITプレナーズ社の申込サイトはこちら)。
コンテンツをざっくりご紹介
1.概要
DSVが目指すところは「機会と需要を価値に変換することで、関係するすべてのステークホルダーにとってサービスジャーニーの価値を最適化すること」です。
対象領域としているのは、サービスプロバイダとその顧客、ユーザー、サプライヤー、パートナーとの間のあらゆる種類の関わりや相互作用で、より広い関係者(ステークホルダー)間の関わりを対象としているのが特徴です。
DSVはあらゆる種類の組織で採用することができ、適切なレベルの効果的なサービス関係を確立、維持、発展させることができます。
2.DSVの章立て
DSVの章立ては大変シンプルな構成で読みやすいです。カスタマージャーニーのステップに従って説明されるのでわかりやすく、また、ステップ毎に事例がストーリー形式で紹介されており、さらに理解を助けてくれます。
DSVの核心「カスタマージャーニー」
DSVの中で最も重要な考え方として出てくるのが、「カスタマージャーニー」です。カスタマーサービスを理解するためのポイントは、「End-to-Endの視点」「顧客・プロバイダ双方の視点」「カスタマージャーニーを通じて常に顧客への価値を意識すること」の3点です。
サービスを価値のあるもにするためには、サービスプロバイダだけではなく関係者全員でEnd-to-Endで全体の流れを見て、互いにすり合わせをしていくことが重要です。カスタマージャーニーでは顧客とプロバイダがどのような活動をしていくかということが双方の視点から提示されています。
当社のコンサルタントが考えたDSVの特徴
当社のコンサルタントがをDSVを読んだ所感を元に、その特徴を挙げてみます。(以下はあくまで当社コンサルタントの見解です)
1.「ビジネスとITの乖離」問題に対する処方箋になり得る
DSVは、サービスマネジメントの根幹である「ステークホルダーへの価値の提供」に正面から答えており、長年にわたってITの課題である「ビジネスとITの乖離」を解消するための一つのアプローチを提示しています。
2.カスタマージャーニーを通じてサービス消費者とサービスプロバイダ双方の観点が記述されており、相互理解に役立つ
DSVでは、カスタマージャーニーの入り口部分である「Explore」「Engage」の重要性を説いています。関係性構築の重要性、さらに双方がEnd to Endでジャーニーを見ていくことの意義を強く意識するきっかけになります。
また、サービス消費者とサービスプロバイダ双方の観点が示されたことで、ITIL4が強調している「サービスの共創」の意味を納得感を持って理解できました。
3.カスタマージャーニーに数多くのプラクティスがマッピングされておりBody of Knowledge(BoK)的に使える
ITILv3では主に『サービス戦略』『サービス設計』で紹介された範囲で、どちらかというとITIL独自の考え方・プラクティスが紹介されていましたが、ITIL4 Practices ではサービスデザイン手法、Lean等、外部のプラクティスでも良いものは積極的に採用しています。結果として、より実務者にとって使いやすいものになっている印象です。
実際の適用にあたってのポイント
適用対象が幅広いDSVですが、適用するためのポイントをいくつかご紹介します。
誰のための書籍か?
DSVはBoK的要素が強く使い勝手が良いので、ITIL4プラクティスとセットで使うことで、現場にも受け入れらやすい印象です。特にEnd to Endでサービスを考えるマネージャーやコンサルタントにお勧めです。
また、お客様と接する役割(セールス、プリセールス)の方にも有用です。
適用にあたっての壁となるもの
関係者全員がEnd-to-Endの視点をもつことが大変重要なポイントですが、実際にはカスタマージャーニーを分断する多くのサイロが存在しています。
ビジネス・IT組織間のサイロ、IT組織とプロバイダ組織間のサイロ等、こういったサイロをどうやって崩せるかが、DSV適用のカギになってくるでしょう。
その他のキーワード
参考までに、DSVの書籍内でその他に紹介されているプラクティスや考え方を一部抜粋して紹介します。
Stakeholder map
Golden circle
PESTLE Analysis
SWOT Analysis
7つの習慣
Service relationship types
Minimum Viable Product
User story mapping
Service blueprinting
Service interaction
XLA™
Omnichannel management
Service mindset
Service empathy
おわりに
前回の「Digital & IT Strategy(デジタルおよびITストラテジ―)」(DITS)に引き続き、今回は「Drive Stakeholder Value(利害関係者の価値を主導)」(DSV)についてお伝えしました。「カスタマージャーニーを通じて、ステークホルダー全員で、ビジネス価値を共創していく」というDSVのメッセージが伝わったでしょうか。
今後もITIL4のコア書籍について順次ご紹介していきますので、どうぞフォローしてください。
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