書評「21世紀最強の職業 Web系エンジニアになろう AI/DX時代を生き抜くためのキャリアガイドブック」

書評:イヴァム

本書は、「Web系企業とはなにか」「Web系エンジニアにはどういう職種があり、どういった仕事をして、どういった技術をつかっているか」を著者である勝又健太氏によって体系的に初めてまとめられた書籍である。

本書の前書きでは、本書が「Web系エンジニアを目指す初学者」「Web系エンジニアとしてスキルアップしていきたい駆け出しエンジニア」を対象とし、Web業界とWeb系エンジニアの全体像、および必要とされるスキルやキャリアの概観を把握しキャリア・キャリア戦略を行うことを目的とした書籍であるため、下記のように記されている。

Web業界の概要やWeb系企業の定義、SIer(エスアイヤー)系企業とWeb系企業の違い、Web制作とWeb開発の違い、Web系エンジニアの各職種における具体的な仕事内容、Web系エンジニアになる方法、フリーランスエンジニアになる方法、必要とされるスキルやキャリア戦略を、できる限り現場の実態に即した形で包括的に解説しています。

本書の序盤では本書の目的「Web系エンジニアになる」を達成した際のワークスタイル・IT業界内における「Web系エンジニア」の立ち位置を「Web系企業」と「SIer系企業」とを対比させより詳らかに想起させる前提知識が示される。(第1章~第2章)

以降は本書の目的である「Web系エンジニア」の職種・必須知識・ワークスタイル・Web系エンジニアになる方法・キャリアプラン・業界のトレンド動向が勝又健太氏独自の視点で整理・分類され初学者・駆け出しエンジニアへ著者の体験談を踏まえて示される。(第3章~第8章)

本書における論点は「雑食系エンジニア」である勝又健太氏独自の視点・経験談が綴られた内容であることは疑いようもなく、結論に綴られているVUCAでも明確に示されています。

VUCA(ブーカ)という用語が最近トレンドになっていますが、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)がいずれも非常に高い今の時代においては、世の中の変化に適応して柔軟に会社や職種を乗り替わり続けて自分自身をアップデートしていかないと、面白い仕事や高い報酬を獲得し続けることはどんどん難しくなっていくと考えておいた方がよいでしょう。

つまり、勝又健太氏の経験と結果に関しても「再現性がなく、運の要素が絡んだ不確実な結果」と言えるでしょう。著者はこの点を踏まえて技術の習得に関しては初学者・駆け出しエンジニアに対して自身の想定するキャリアに関わる技術分野に「投資」すると表現します。本書では、「Wantedly」「Green」を利用して「Rails」を利用したポートフォリオを用意するといった例が「Web系エンジニア」への登竜門として綴られ「Webでのスクール」を想定された構成で描かれていますが、必ずしもその限りでなく自身で世情を見て適切な「選択と投資」を行う必要がありそうです。これはコラム「文系出身者はエンジニアに向いてない?」にも書かれていますが、Web系エンジニアには「論理的思考能力」「抽象化能力」「言語化能力」が必要という点からも類推できるでしょう。基礎を理解して応用につなげる…

既に説明した通り、何らかのプログラミング言語や技術を学ぶ上では、基礎を全て理解しようとするのではなく「基礎に関するインデックスを頭の中に構築して、早めに応用に入ってたくさん壁にぶつかって、そのたびに基礎に戻って調べてまた応用に戻って一つ一つ機能を実現していくという作業を繰り返す」のが最も効率的であるということを覚えておいた方がよいでしょう。

きちんと書いてありました、私もまだまだ捨てたものではなかったようです。とはいえ少々読解力を要求されて難解だったため非常に楽しく読ませていただいたのですが、これから就職を控える下の息子には内容を私独自に噛み砕いてお話ししないといけないところ多く辛いところです。重版を行う際は就職を控える学生にもより分かりやすく改定されると助かります。またレビュアーが適切に機能していなかった点(用語の解釈誤りなど)もいくつか伺え執筆者である勝又健太氏は、執筆時大変苦労されたのではないかと感じました。(細かい点が気になるのは稼業であるエンジニアの悪い所ですね)

末筆ながら、勝又様の益々のご活躍をお祈り申し上げます。

いいなと思ったら応援しよう!