記憶

たまに記憶の一部を思い出す
思い出せなかったらそれきりだ


何年か前
弟の留学出発のために、
お母さんとおばあちゃんと空港まで見送りに来た

高い天窓の

静かな晴れた日で
うすい空

見送りが終わってお手洗いから少し離れた

お母さんを待っていたベンチ

おばあちゃんが広がる空をみながら

「わたしがあなたと同い年くらいの時
空ばっかり見ていたよ」

優しく言われた。

75くらいまで働いていたおばあちゃん
ほんの少し前は、旅行がすきだから
世界を見てきた

お姉ちゃんを連れてったペルー
わたしとお姉ちゃんを連れてったポルトガルとスペイン
エジプト
フランス

おばあちゃんがそんなことを言っていたのを今でも思い出す

たしかに世界は広くて

おばあちゃんが旅をする理由、
みて来た世界
生きて来た価値
希望が

ふと、自分がなにものかわからなくなる

おばあちゃんが言いたかったことがわかるようでわからない

話の流れで言った言葉だけど今でも心に残っている

あの日の空にもどることはできないよね



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