私の活動のご紹介
第2回 『ほびっと村学校で育てた活元会』 書き手:曽我部ゆかり(活元コンサルタント、産後ドゥーラ、ほびっと村学校講師)
自発性を育てる場
「母と子の活元会」をほびっと村学校でレギュラークラスとして開催させていただくようになり、はや5年になろうとしています。赤ちゃんの時から参加してくださっているお子さんは4歳、5歳となり、当時、幼児だった上のお子さんは小学生に…。見様見真似で邪気を吐いたり、背中に手を当てたり…。まさに門前の小僧の手習いで、いつの間にかすっかり整体法の初歩を身につけています。
さらには、私の説明をフルコピーして会の進行をサポートしてくれる女子も登場しました! しかも、終了後は箒で掃き掃除までしてくれる…。お願いしてやってもらっているわけではなくて、自らやってくれるのですよ。私の会は子どもたちの自発性を育てる場にもなっているようで嬉しいです。このように若いお母さんとそのお子さんたちと共に愉しめる場を与えてくださったゆりこさんには心から感謝しています。かつて本部講師のロイ先生(野口裕介先生)が「会を育てる」ことの意義を説かれていましたが、その意味を今となって改めて感じています。
子育てこそが整体の一番の勉強
私が本部道場で本格的に整体コンサルタントへの道を目指して年間講座で勉強をはじめたのは21年前のこと。ところが翌年に妊娠したのです。子を授かったことはもちろん嬉しくありました。でも、折角、コンサルタントを目指して勉強をはじめたのに中断しなくてはならない、という不安混じりの焦りを感じていたのもまた事実。そんな私の思いを察して師匠がかけてくださった言葉が、今日の私を支えています。
「きちんと勉強に取り組んだことで身体が整ったのですよ。妊娠出産子育てこそが、一番の整体の勉強ですよ」と。ですから、私の会は「母と子の活元会」なのです。
活元運動の魅力が伝わって
子育てに愉気を…という想いと共に活元運動を皆で一緒にやりたいという想いがありました。それは愉気と活元運動は「ひとつらなり」だからです。活元コンサルタントの資格をいただいた時から、その思いは一貫しています。
ただ、活元運動には、ヨガやピラティスのようなお洒落な要素はまるでないし、また、有酸素運動のようなわかりやすさもありません。ダンスエキササイズのような華やかさとももちろん無縁…。格闘技のようなキレの良さもありません。
無意識の働き、錐体外路系の運動という説明や、「身体が自然に動きだすのを待つ」と言われて、何かオカルト的なイメージを持ってしまう方もいらっしゃるようです(笑)。また、無意識の運動ですから、普段自分が意識していない赤裸々な自分と向き合うことにもなります。そのことに抵抗を感じる方もいらっしゃるのは確か。
長い整体生活の経験から、そうした面も熟知しているため、「若いお母さんたちに活元運動を好きになってもらえるだろうか…」と、少し不安があったけれど、「いや、私が大好きな活元運動なんだからきっとその愉しさは伝わるはず」と思ったり…。そんな葛藤を抱えていたわけですが、ゆりこさんの後押しもあって、会はレギュラークラスにしていただけたのでした。
それに、活元会を開催するにはまさにここしかない、という思いもありました。隣のスペースのナワ・プラサード書店では全生社の野口晴哉先生の著書が揃っているのですから。ここまで常設してくださっている本屋さんを私は他に知りません。
いつしか活元運動が好きになっていた
「母と子の活元会」は一時期人気講座に育ち、多い時には20組の母子の参加もありました。ほびっと村学校の畳間をハイハイするたくさんの赤ちゃんたち…。私が活元運動の準備運動の「邪気を吐く」のお手本をやってみせると、赤ちゃんたちが一斉にハイハイしながら突進してきて、ポカ~ンと私を見上げている姿が可愛くてたまりませんでした。そんな赤ちゃんたちも、2歳にもなると皆、大人と一緒に準備運動をするようになっていきました。「邪気を吐くー腰を捻るー延髄に気を集め肩甲骨を寄せる」という一連の流れをすっかり覚えています。そんな子たちもいまは園児、児童と大きくなって、また生まれたばかりの弟さんや妹さんも新しく加わっています。
もちろん子どもたちばかりではなく、若いお母さんたちも「すっきりしたい」と会を楽しみにしてくれるようになりました。いつしか活元運動が好きになってくださっていて、これには私の方が驚いたほどでした。
コロナ禍だからこその活元運動
2020年は緊急事態宣言が発令されてからの一月間、そしてその後の世間の厳戒な空気の中で、いましばらくは会をお休みしていたのですが、そんなある日、会のメンバーから、「ゆかりさんに会って話がしたい。毎日、息が詰まってしまうから活元運動がしたい」とリクエストをいただき、会を再開することにしました。
いまはレギュラーメンバー限定の小さな単位で開催していますが、かえって密度の濃い内容を伝え実践にうつすことができるようになりました。集中の型ということを考えた時、奥を探究し、鍛錬することが求められる世界…。そして本部道場でなくほびっと村学校の私が担当するクラスでも、このメンバーとならば探求を深めることができる…そのことを実感できた一年となりました。
2021年、コロナが終息した暁には、クラスをレギュラーメンバー限定の会と新しく取り組みたい人たちを迎えられる体制を作りたいと思います。活元運動のように、流動的に変化し、次のステップに移っていくことも大切ですから。
↑「2017年の母と子の活元会より」
コロナ禍の産後ケア
私の日常の仕事はアウトリーチ型産後ケアを専門とする産後ドゥーラです。一般社団法人ドゥーラ協会に認定を受けたのは8年前…。これまでに500人に近い産後ママと赤ちゃん、そのご家族のサポートをさせていただいてきました。
昨年、コロナ禍で迎えた妊娠出産は、ママにとっては、とても厳しいものでした。まず、産前の健診も妊婦さん一人しか病院に入れないし、普段なら行われているはずの両親学級も中止。お産の時の立ち合いにも入院中のお見舞いにも制限があり、まさにママは孤独なお産を余儀なくされました。しかも、ご実家から来てくれるはずだったお母様お父様が上京できない。里帰り出産も東京からは受け入れてもらえない。という産後も孤立した状況が続きました。
私はもちろん仲間の産後ドゥーラたちも緊急事態宣言中は自宅待機、解除後は感染予防を徹底的にした上で、ママと赤ちゃんには接触しない形でのサポートに限られました。
↑2017年のサポート風景
子育てのアドバイザーとしてのニーズ
ところが、5月ゴールデンウィーク以降は、ご依頼が急速に増えました。孤独な育児に限界を感じてのことだと推察しています。
また、リモートで在宅のパパに沐浴の仕方をはじめ、それこそ、おむつの変え方、ミルクのあげ方、抱っこの仕方、寝かしつけの仕方…etcを指導して欲しい、というご依頼が急速に増えたのです。本来なら保健所や産院や病院で行われているパパ学級や両親学級で習っていたことを、ドゥーラが役割を担うことになったわけです。加えて、抱っこ紐のこと、赤ちゃんのお洋服のこと、お部屋の環境、母乳によいお食事のことなどもお伝えしてきました。
パパが家にいる安心感
さらには、ママへはどんな言葉をかけたらよいか、あるいはどんな言葉をかけない方がよいか、などなど、メンタルな面でのアドバイスもいたしました。リモートワークでパパが在宅中、力を合わせて育児に取り組んでいく若いご夫婦を支えながら、この状況も決して悪くはない、と思うことも増えていきました。
なぜなら、産後ママにとっては、パパが家にいてくれるのは何より気持ちが落ち着くからに他なりません。
先日もあるお母さんとお話ししましたが、産後一、二か月は下手をすると仕事に行ったパパが帰ってくるまでは、一日中大人と話す機会がゼロになってしまう…。お一人目のご出産時に、そのことがこんなに辛いとは思わなかったと話してくれました。お二人目、パパが在宅中という状況は、そんなママたちの不安を解消してくれる一因ともなっているようです。
ドゥーラだからできること
昨年は妊娠中にメンタル面の病気を発症されたママをお二人ほどサポートさせていただきました。パパは育児休暇をとり、ママを支えながら、懸命に育児に取り組んでいました。ママに負担がかかり過ぎないように、交代制で赤ちゃんのお世話をして、一人はその間に睡眠をとる…というローテーションが確立されていきました。
母乳についてのご相談も受け、ママの負担にならないような方向にもっていき、パパも哺乳瓶で上手に授乳できるようになりました。沐浴もパパが担当し、おすすめしたスリングも上手に使いこなせるようになりました。
ある日、訪問すると、パパが冷えないように腹巻をして、スリングで赤ちゃんを抱っこしていました。その姿を見て「産後パパ」と私が感心していたら、ママも加わって三人で笑いました。だんだん、ママにもゆとりがでてきて、赤ちゃんを抱っこしながら楽しそうに鼻歌を歌いながらあやしている姿を見た時には、私も感動して胸が熱くなりました。お宮参りの準備で、赤ちゃんの手形をとるお手伝いをしたり、保育園が始まってからの生活を考えたり、共に楽しい思い出ができました。
コロナ禍は不安の方が大きく辛い思いをされていらっしゃる方も多いはずですが、このような時だからこそ、産後のご家庭に入ることができ、寄り添うことができる産後ドゥーラとして、お役に立てていることを嬉しく思い、やり甲斐を感じています。 2021/01/10
曽我部ゆかり
公益社団法人整体協会認許活元コンサルタント/一般社団法人ドゥーラ協会認定産後ドゥーラ/特定非営利活動法人遊びと創造協会認定おもちゃコンサルタント/フリーライター
Yucari Sogabe
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