ジョーゼフ・キャンベルの「ヒーローズ・ジャーニー」とジョージ・ルーカスの「スターウォーズ」について

 もう何年も前の話だが、神話学のジョーゼフ・キャンベルをジョージ・ルーカス監督に引き合わせたキャンベルの弟子のロバート・ウォルターさんか来日にして都内で講演を行ったことがある。キャンベルが唱えた「ヒーローズ・ジャーニー」の話を伺って、ふと気づいたが、今は亡き今道友信先生も「哲学は自己から始まり、自己へと戻る」とおっしゃっていたのをまるで昨日のことのように思い出す。「永劫回帰」を唱えたニーチェもキャンベルもギリシア悲劇の研究という「ヒーローズ・ジャーニー」(内省が伴う知的冒険を含めて考えても良いだろう)の末、人類共通の物語の構造に気づいたのだと思う。J・R・R・トールキンやC・S・ルイスも神話を研究した末、自らの神話を創造した(奇しくもルーカスは『指輪物語』の映画化に失敗して『スター・ウォーズ』シリーズを生み出した)。『スター・ウォーズ 新たなる希望』でジョン・D・ブラノン(レッド4)を演じたシェイクスピア俳優であるジャック・クラフさん(大学でキャンベルの神話学を講じている)が来日した折、シェイクスピアと『スター・ウォーズ』の関係についてお訊ねしたところ、やはり人類共通の物語の構造についてや、シェイクスピアとルーカスが共にホメロスの『イリアス』などの作品から学んでいることをお話しくださった。紆余曲折を経て、ようやく実人生と今まで学んできたことが自らの内奥で有機的連環を描き出したわけだが、編集者の私にとってのヒーローズジャーニーは仲間(執筆者や編集者たち)を集めて試練を乗り越え、学んだ知識を出来る限り書籍化して、どんどん次に繋げていくことだろう。ありがたいことに私はかなり変わった人たちとのご縁に恵まれているし、こうしたご縁の生み出す化学反応の不思議さと面白さに日々驚愕するばかりだ。


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