一味違うプレゼンに仕上げる台本作りのコツ

一味違うプレゼンに仕上げる台本作りのコツ

「今度、話すプレゼンなんだけど面白みがないの。何かヒントちょうだい」

という相談を受けたので、答えた内容をそのままノウハウ化してお届けします。セミナーやスピーチ、人前でプレゼンする機会がある方で、中級者にジャンプアップしたい方向けのヒントです。

復習:プレゼン3つの要素

そのプレゼンがどれくらい聴衆に影響力を発揮できるかは、3つの要素の掛け算で決まります。

キャラクター
x
ストーリー
x
デリバリー

復習がてら、もう少し噛み砕いて説明しましょう。

キャラクター

話し手の属性、あるいは聞き手との関係性です。

属性は、性別・年齢・職業・肩書・経験・実績・体格・服装など。分かりやすいですね。外見要素だけでなく社会的地位も含む客観的な情報の集まりです。

聞き手との関係性は、大きく分けて3つありますね。

・専門家的ポジションで上から教える↔学ぶ関係性
・先輩同僚的ポジションで共有↔共感する関係性
・営業マン的ポジションでお願い↔検討する関係性

今日のポイントがココ、聞き手との関係性を中心に話をすすめます。

ストーリー

話す内容、順番です。よくあるストーリーのテンプレートはこんな感じでしょうか。

・アイスブレイク
・フレーミング
・テーマの主張
・主張の詳細x3
・反論への反論
・主張とベイビーステップ

↑は話す順番ですが、話す内容としては↓の4つのテーマから選びます。

1. 問題解決
2. 願望成就
3. 倫理
4. 叱咤激励

デリバリー

どのように伝えるか。
話すスピード、声の高さ、間の開け方。
身振り手振り、立ち位置、視線、などなど。

スライドもデリバリー領域の話ですし、会場の座席配置や配布資料についてもそうです。

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以上、プレゼンの影響力を左右する3要素を復習です。

たいていのことは書店に並ぶプレゼン本を読めば解説されていることですが、なぜかキャラクター(話し手と聞き手の関係性)について言及してることが少ないので今から解説しておきます。

面白みがないプレゼンは、関係性がない

さて、本題ですね。
相談してくれた彼女のプレゼンは確かに面白みがないものでした。

プレゼンの序盤、フレーミングの部分はこのような流れです。

バスやトラック、タクシーなどの職業ドライバーによる事故は大きな社会問題ですよね。(←客観的事実の提示)

事故原因のひとつが、ドライバーの睡眠障害。このような事件が起きています。(←問題の具体化)

睡眠時無呼吸症候群の疑いがある人は、15人に1人。(←解決の重要性)

しかし、90%の人が病院の診察・治療を受けていない。(←解決の困難性)

企業のリスク管理として、睡眠時無呼吸症候群にどう対応するか?(←プレゼンで主張したいテーマ)

どうですか?個人的には十分に合格点がだせるフレーミングだと思います。

社会的な課題からはじまり、具体的な数字で解決の難しさを表し、このあとは独自性のあるソリューションの紹介がつづきます。

しかし、それでも面白みがない。なぜかと言うと、

聞き手との関係性がつくれてないプレゼンだったからです。

話し手と聞き手の関係性は、「なぜ今このプレゼンに耳を傾けるべきか」の答えになります。

人は、なぜ?という理由がハッキリしない物事に集中できるほどヒマではありません。

なぜ聞くべきか?がハッキリしてるほど耳を傾ける時間は増え、集中して話を聞き取るからその他大勢のプレゼントは一味違う!と思わせることができるのです。

で、
どーやって聞き手との関係性を作るかというと

ありきたりな関係性を壊して、再構築する

という方法が手っ取り早いです。

具体的に説明しましょう。

彼女のプレゼンは、医療系の展示会において出展者として自社のサービスを説明するというものでした。

この時、特別に何も仕掛けをほどこさなければ話し手と聞き手の関係性は、

営業マン的ポジションでお願い↔検討する関係性

になります。
当たり前ですよね、展示会という場に来場した方々(聞き手)に対して自社のサービス説明を売っている本人(話し手)がプレゼンするんですから。

彼女のプレゼンは、見栄え良く端的にまとめられたものでした。

しかし工夫が足りない。
そこで聞き手との関係性を方向転換して、

専門家的ポジションで上から教える↔学ぶ関係性

にしました。実は彼女、看護師・保健師です。有資格者であり、医療従事者であり、医療系の展示会においてはバリューのある専門家です。

プレゼンの冒頭、自己紹介の場面では専門家であることを強調する形に変更。

「これから専門家が話すので、あなたが集中して聞く価値がありますよ。」

と、聞き手が聞くべき理由を明確にしてあげたんですね。

話し手と聞き手とプレゼンのテーマの関係性

話し手と聞き手の関係性を定義し直すことで、話し手とプレゼンテーマの関係性にも強い結びつきが生まれます。

(Before)
話し手:ヘルスケア関連の会社の人
聞き手:睡眠に興味がある医療関係者
テーマ:睡眠時無呼吸症候群に、企業としての取り組み方

聞き手とテーマの間には一定の関係性があるように見えますが、話し手と聞き手あるいは話し手とテーマの間の関係性はほぼありません。

(After)
話し手:企業の健康管理に携わる保健師
聞き手:睡眠に興味がある医療関係者
テーマ:睡眠時無呼吸症候群に、企業としての取り組み方

話し手の属性に保健師であることを付け加えると、3者の関係性がきれいに結ばれますよね。

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しかし、
どれだけ「私は保健師です、有資格者です、専門家ですよー!!」とアピールしたところで多くの人はフーンと思うだけです。

自慢話に耳を傾けるほど人はヒマではありません。そこで、

非日常の問題を、日常に落とし込む

ことで、話し手の専門家ポジションを確立していきます。

どうやったか?

フレーミングの流れを以下のように変更しました。

(Before)
バスやトラック、タクシーなどの職業ドライバーによる事故は大きな社会問題ですよね。(←客観的事実の提示)

事故原因のひとつが、ドライバーの睡眠障害。このような事件が起きています。(←問題の具体化)

睡眠時無呼吸症候群の疑いがある人は、15人に1人。(←解決の重要性)

しかし、90%の人が病院の診察・治療を受けていません。(←解決の困難性)

企業のリスク管理として、睡眠時無呼吸症候群にどう対応するか?(←プレゼンで主張したいテーマ)
(After)
インフルエンザが流行っていますね。例年より流行時期が早いですので、予防接種は今月中に行ってください。(←専門家であることをアピール)

質問です。39度の熱が出た時、病院に行きますか?(←ほぼ全員が手を挙げる)

では、家族からいびきがうるさいと言われた時、通勤中ウトウト寝てしまうことがある時、病院に行きますか?(←逆にほぼ全員が手を挙げない)

ドライバーの事故原因の一つである睡眠時無呼吸症候群。疑いのある人は15人に1人います。(←非日常の問題)

しかし、90%の人が病院の診察・治療を受けていません。(←自分もその1人であるかもしれない)

企業のリスク管理として、睡眠時無呼吸症候群にどう対応するか?(←プレゼンで主張したいテーマ)

解説不要だと思いますが、ポイントを解説しておきましょう。

Beforeは王道なストーリーの始まり方ではありますが、あくまでもプレゼンのテーマについて語っているだけであって話し手も聞き手も登場しません。

「確かにニュースでそんな事件を見るね。」という非日常の出来事として捉えられてしまいますし、

「睡眠時無呼吸症候群はホットな話題だね。」とどこか他人事のままプレゼンを聞き続けることになります。

また、一般の方であればまだしも医療関係者であれば睡眠時無呼吸症候群による事故の話題なんてものはすでに何度も耳にしたことがあるはず。ですので、どうしても耳を傾ける優先度はさがってしまいます。

そこで、Afterでは自分ごと化してもらう仕掛けをほどこしました。

「高熱が出たら病院に行くのに、なぜいびきのときは病院に行かないの?」という質問を投げかけることで、話し手と聞き手が参加できるようになります。

また、インフルエンザの話題にも触れることで、話し手が保健師であることのポジションを確立することができます。

何を言ったか、よりも、誰が言ったか

プレゼン(スピーチやセミナー含めて)というものは、人を動かしてナンボです。

合理的に考えれば、プレゼンに面白みがあろうがなかろうが、プレゼンの良し悪しとは関係ないはず。

なのですが、不合理に行動してしまいがちな人間を動かす上では「何を言ったか」よりも「誰が言ったか」のほうが重要であるし、であるならば聞き手と話し手の関係性はプレゼンの台本づくりにおいてもっとも重要なパーツなんですよね。

それでは、今週の僕からのnoteは以上です。また来週

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