連載小説 ロックンロール先生(26)
アンプのハウリング音が響き出すと同時に僕は弦を掻き鳴らした。真空管アンプ直結の歪んだストラトの爆音が、オーディション会場に轟き渡った。
コージーは大きな体で図太いスティックを破れるほど力強くスネアに叩き付ける。よれることなく、少し走り気味に、小気味良いエイトビートを刻んで行く。
渋いベースラインの低音が地響きの様に床を伝い、窓ガラスをカタカタと揺らした。シミーはピンクのモヒカンヘアーで、脳味噌を撹拌せんとばかりに激しくヘドバンしている。
グラハムは聴衆に向かい、舐めんなよとパンクの鋭い睨みをきかせる。ハスキーを超えたダミ声で、楽器の爆音に負けじと腹の底からパワフルに歌い上げる。
コピバンには負けない。僕達はオリジナルだ。全身全霊を込めて僕達は演奏した。
やり切った!全力出し切った!どうだ見たか!これが俺達のロックだ!
僕達はミスも無く最高の演奏を終えた。
つづく
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