連載小説 ロックンロール先生(29)
「なあルーシー、可愛い子ぎょうさんおるで、ムフフ」
ステージの袖からグラハムが客席を覗いていた。僕達の前のバンドがそつなく演奏を終え、いよいよ僕達の出番だ。僕達は円陣を組んだ。
「このライブが終われば俺達モテモテや!ロック魂見せたる!さあ行くで!」
下心丸出しのグラハムの掛け声で僕達はステージに駆け出した。会場の女の子達の視線が一斉に僕達に向けられた気がした。
コージーのスティックが出だしのリズムを打つのに合わせ、僕はギターのボリュームを最大に上げた。
僕達の初ライブが始まった。すると、どこからともなく数人のガラの悪い男達が雪崩れ込んで来た。彼等は最前列を陣取っていた女の子達を掻き分けヘドバンを始めた。グラハムがあらかじめ仕込んでいた友達のサクラ達だった。
サクラに釣られて数人のロック好きな観客もステージに齧り付き拳を振っている。みんなが見ている、間違えてはいけない、僕は顔を上げる余裕など無かった。無我夢中でギターを弾いた。
持ち時間は瞬く間に過ぎ、最後の曲になった。オーディションでトップ通過したオリジナル曲だ。グラハムはもっと上げろ、とサクラ達を煽った。
つづく
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?