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連載小説 ロックンロール先生(31)


サクラ達がアンコールの声を上げていた。だが弦とシールドが切れてしまってはもう演奏は出来ない。あのオリジナル曲をもう一度ぶちかまそうと思っていたのに。

疎らな拍手を浴びながら僕達の初ライブは終わった。僕達のロックは響かなかった。心にとてつもない敗北感が広がった。

ステージから去り際、僕はもう一度客席を見た。多くの女の子達は拍手もせず隣の子とお喋りに夢中だ。そんな中最後方の立見席に僕達に拍手をくれている女の子がいた。

ロックのわかる女の子が一人だけいた。僕はその子と目が合った。遠目でもわかる切れ長の大きな目。見覚えのある黒目勝ちな瞳。

「内木さん!」

マスクをしているが絶対間違い無い。内木さんだ!僕は急いで楽屋にギターを置いて立見席に走った。

人混みを掻き分けようやく辿り着いた時、そこにはもう内木さんの姿はなかった。出店で賑わう学校内を探し周り、最寄駅まで行ってみたが内木さんはいなかった。


つづく

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