関係者の皆様、ありがとうございました
最後に少し、俳優さんたちの印象を。
佐藤健さんは、とにかく器用だった。
生地を編んだり食パンを窯から出すコツ、エピ(麦の穂を模したパン)を切る動作など、一言二言伝えればすぐに演じることのできる人だった。
今回パン職人としての動作(演技)は、それほどでなかったけれど仮にパン生地を本当の職人さんのようにリアルに丸めたり、バゲットの成形などのシーンがあったとしても、佐藤さんならそれほど時間を要せずできただろうな、と思う。
以前、主演された 「天皇の料理番」を見られていない方がおられたら是非見て欲しいと思うけれど、あのドラマでの佐藤さんの包丁さばき、特にシャトー剥きと呼ばれる技術は、器用だからで出来るものでなく努力の賜物以外にはあり得ない。
ご覧になった料理人の方がおられたら、驚かれたのではないかと思う。
麦田のようなおバカキャラになり切れる演技もすごいけれど、秋山篤蔵( 「天皇の料理番」の主人公)のように特殊な技術を要す役になり切るためには、相当な努力が必要だったに違いない。
俳優さんの ”なり切る" 努力や能力には感銘を受ける。
いろんな役をされてきた俳優さんたちも、やはりパン生地に触れる機会はないようで、撮影前に丸めた生地を並べておくとみなさん興味深そうに指で押したりされていた。撮影が始まるまでの待機中、綾瀬さんはベーカリー麦田の厨房に併設された事務所に座り、持ち込んだ生地を両手で挟み転がして遊ばれていたし、白百合製パンの工場長役をされた小林隆さんに生地の切り方と秤の使い方を伝え、「難しくないですか、大丈夫ですか?」と声をかけると、「パン、楽しいですね」と笑顔で仰ってくださった。
また、ベーカリー麦田の職人役だった影山徹さんは、最後の撮影となった結婚式場でお会いした際、「もうパン(生地)を触れなくなるのが寂しいです」と言ってくださった。
黒田大樹を演じられた井之脇海さん。
職人役ではなかったので言葉を交わすことがほとんどなかったけれど、結婚式場での撮影にぼくが入ったとき、みなさん昼食時でお弁当を食べられているタイミングだった。
「お疲れ様です」と声をかけると井之脇さんは箸を止め、わざわざ立ち上がってご挨拶をしていただいた。少し前に共通の知人がいることが判明したので、その話を少し交わしただけだったけれど、とても礼儀正しい方という印象を受けた。
連ドラとすべてのスペシャルでベーカリー麦田の職人、米田を演じられた谷口翔太さん。
とても気さくな楽しい方で、連ドラのときからぼくを気にかけ声をかけてくれる優しい人だった。
最初に職人としての動きを伝えたとき、会話の端々から ”この人はパンを作るのが初めてではないのかな” と感じ、訊ねると「今回の役が決まったので、地元でパン屋さんをしている友人の店で練習をさせてもらいました」とのことだった。
さすがです、谷口さん。
助監督から「じゃあ西山さん、動きの方を職人役の彼らに」と言われたとき、「彼は(谷口さん)本物のパン職人なんで大丈夫ですよ」と冗談を言うと、「そうそう、これをこうして・・・って、なんでやねん!」とノリツッコミまでできる人だった。彼は埼玉の人らしいけれど、本当は関西人じゃないかとぼくは思っている。
結婚式場でのぼくの仕事が終わり、帰る前に声をかけると正装した彼は「あれ、式には出席しないの?早く着替えて一緒に式出ましょうよ」と最後までこんな調子だった。
そんな谷口翔太さんは、「シン・ゴジラ」と「ゴジラ -1.0」の両作品でゴジラと戦った唯一の人でもある。
それから、連ドラやスペシャルでそれぞれお世話になった3名の助監督さん。
毎回、最終日の最後に伝えた言葉と同じになりますが「いつか監督になられたとき、良い作品を撮られるのを楽しみにしています」。
最後に。
望んだとしても、誰もが経験できるわけでない貴重な機会をぼくにくださったプロデューサーの飯田さん、心より感謝を申し上げます。
飯田さんには大変お気遣いいただき、プライベートなお祝いまでしていただきました。
本当にありがとうございました。