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ほほぅ

「物価上昇率 2%」について述べているけれど、そもそも物価上昇は必要なのか。
そして、なぜ 2%なのか。

ぼくは 2%はさておき、物価上昇は必要だと思っている。その理由もあるけれど、素人の見解を述べても文字数の無駄と思うので、これについて黒田・前総裁が講演で述べられた記録があるのでそれを紹介したい。
またぼくの解釈で申し訳ないけれど、噛み砕いて要約すると次の3つになる。

消費者物価指数の特性として、上昇率が高めに出る傾向がある要は計測誤差があるので「物価安定の目標」を示す場合、それを織り込みある程度プラスの値にする必要がある。

金利については景気悪化などの際、日本のようにゼロ金利だと金利操作という政策手段の余地がない(金利を下げて景気を刺激する、といった方法が採れない)ので、物価上昇率を上げることで金利を上げ、政策として金利を下げれる余地を作っておく必要がある。

もう一つが、先述した「(2%が)グローバル・スタンダードだから」

うん、なるほど。
とは思うけれど一つ目はともかく、あれだけ国債を引き受け財政出動をしておきながら「金融緩和の余地を」というのもチグハグというか、矛盾するような気がする。またこれらは物価上昇が必要な理由ではあるけれど、 ”2%” である根拠には思えないし「世界標準だから」と言われても、どうも腑に落ちないな。

この講演では、マクロ経済(国単位といった大きな経済)視点の話だけでなく、家計視点での ”賃金と物価” についても述べられている。
家計の実感として「物価が上がるのは好ましくない」と感じるのは極めて自然なことで、物価が上昇していると感じている人が「物価上昇は望ましくない」と答えているのも当然の結果と理解を示された上でこう話されている。

もし賃金が変わらないのであれば、物価は下がる方が望ましいに決まっています。しかし、賃金が上昇せずに、物価だけが上昇するということは、普通には起こらないことです。
(中略)
そうでなければ、物価の上昇に伴って、労働者の取り分である労働分配率が下がり続けることになってしまいます。こうしたことは、一時的にはともかく、長く続くとは考えられません。

また黒田・前総裁曰く、物価が上昇している局面において物価上昇率の方が賃金上昇率を上回ったのは、1971年以降、1980年の第二次オイルショックのときと2007〜2008年の国際商品市況高騰のときの2回だけ。いずれも供給ショック、すなわち国内需要以外の外生的な要因によって物価上昇率が一時的に大きく高まったとき。とのこと。
ちなみに、この講演は2014年に開催されたもの。

ほほぅ

2022年4月以降、消費者物価指数は2%を上回り、この年1年間の平均は2.3%だったにもかかわらず黒田・前総裁は量的緩和を続けられた。これは現在の植田総裁になっても引き継がれ、2023年9月に量的緩和の継続を決められた植田総裁は記者会見でめっちゃ厳しい質問攻めに遭う。

「こんなに物価が上がっているのに、なぜ政策を変えないのか」

あの円安が進行して物価高騰でみんなが怒っていた時ね。

黒田・前総裁は、2%を上回っても量的緩和を続けた理由を「物価上昇の大部分は資源価格の上昇によるものだから」とされている。それがウクライナ・ショックと円安による外的要因であることを当然認識されていた。
2014年の講演で「外生的な要因によって物価上昇率が一時的に」と話されたように、今回もそれが落ち着いた先行きの物価上昇率は、2%を下回ると判断されたのだと思う。
もう一つ、この時点で賃金の上昇を伴っていなかったこともある。
そして、こうも話されている。

日本銀行が目指している、2%の物価上昇率が安定的に持続する経済・社会においては、「賃金も物価も緩やかに上がる世界」が実現されると考えています。

つまり数字だけ達成しても、物価上昇率が安定的に持続し「賃金も物価も緩やかに上がる世界」でないと黒田・日銀の目指したものとは違う、ということ。
また「実質賃金がどの程度上昇するか」、中小企業が「物価上昇により仕入価格が上昇した分を販売価格に転嫁できないのでは」という懸念についても言及されている。
以下、その部分を抜粋。

【実質賃金について】
長い目でみれば、労働生産性、つまり一単位の労働を投入することで産出される製品やサービスの量が、どの程度高まるかによって決まります。
実質賃金の上昇を実現することは非常に重要な課題ですが、それはあくまで生産性の向上により達成されるものです。この点、企業の皆様が日夜努力されていることですが、各種の成長戦略や規制緩和などによりそのための環境が整備されることも重要だと考えます。

【中小企業の販売価格転嫁について】
むしろ、デフレから脱却して物価が上昇する状況では、企業が仕入価格の上昇を販売価格に転嫁することが、よりやり易くなると考えられます。
先程、デフレ下では価格の下落、売上・収益の減少、賃金の抑制、消費の低迷、価格の下落という悪循環が続くことになったと申し上げました。こうしたもとでは、仕入価格の上昇を販売価格に転嫁することは容易ではありませんでした。

(中略)

一方、2%の物価上昇率が安定的に持続する経済・社会においては、デフレ下での悪循環とはちょうど逆の循環が実現すると考えています。すなわち、価格の緩やかな上昇を起点として、売上・収益の増加、賃金の上昇、消費の活性化、価格の緩やかな上昇といったかたちでの経済の好循環が実現し、定着するということです。
経済の好循環が続き、需要の堅調さが維持されるもとでは、企業は仕入価格の上昇を販売価格に転嫁し易くなると考えています。

ぼくは、長過ぎた量的緩和は途中でも引き返すべきだったと思うし、マイナス金利、イールドカーブ・コントロールはアベノミクスの蛇足だったと思っている。
前述の通り矛盾を感じる部分はあるし、納得のいく ”2%” の根拠も示されていないけれど、講演の内容を拝読する限り、黒田・前総裁の目指されていたこと自体はおかしなことでもなかったように感じる。

ただし、

述べられた内容を素直に受け止めるなら、というお話だけどね。

つづく


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